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転生したら不正入国者だった。終わった。  作者: 旅人凛人
一章

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13/23

第十二話 銀髪の女騎士は超強かった。

「……お前は、この前の不正入国者か。」

「そうだよ。世話になったな。」


 こんなところで再会するとは思ってなかった。せっかくだし、あのナイフだけでも返して欲しい。


「どうやら、元気にやっているようだな。」

「はい。運良く助けてくれる人が居て。」

「ああ……それについてなんだが、少し気になってな?」

「……そこの、無口な白髪(はくはつ)。ちょっと顔を見せてくれないか?」

「………………」


 イエスタは、顔を上げようとしない。

 イエスタって、もしかして騎士団に顔バレしてるのか?だとしたら、俺もまずいことになるぞ。

 イエスタが犯罪者だったなんて知らなかった……とは、もう言えないからな。


「……イエスタ・エクニアルだな?」

「……なら、どうするつもりなの?」

「無論、犯罪者を拘束する。」


 銀髪の女騎士のオーラが変わった。

 俺は、思わず数歩引いた。イエスタは被っていたフードをとって、女騎士と睨みあっている。


「不正入国者。お前が助けられたのは、この女か?」

「えぇ……まぁ……そうですね。」

「そうか。運が悪かったな。お前はまた、一文無しで路上に寝ることになる。」


 女騎士はそう言いい、ポケットから少し土で汚れている、60モルを取り出した。


「……まさかそれ!?」

「あまりに無防備でなぁ……現実を教えてやるには、安いものだろう。私が近くで見ていたから良かったものの、犯罪者に殺されていても、何も不思議では無かったぞ。」

「……返してくれ。俺が汗水垂らして稼いだ金なんだ。あと、あのナイフも出来れば。」

「あのナイフは、汗水垂らして手に入れたものなのか?」

「多くの血を流して手に入れたものだ。」


 嘘はついていない。


「そうか……じゃあ、ほらよ。」


 女騎士がひょいと右腕を振り上げると、どこからかナイフが現れた。


「何それ!?」

「転送魔法だ。押収した物には、盗まれた時のために、転送魔法がかけられるんだよ。」


 女騎士は、そう言いながら俺にナイフと60モルを投げた。

 ギリギリでキャッチした俺は、ナイフを左腰に着ける。


「あの時の現金は無いが、我慢しろよ。」

「わかった。」

「……さて、そこの犯罪者をどうするかな。」

貴女(あなた)……まさか、私に勝てるとでも?」

「当たり前だ。対策くらい練ってきてる。」


 イエスタは、確か氷魔術がとんでもなく上手かったよな。

 氷って攻撃も防御もできるし、イエスタに勝算がありそうだけど……女騎士の戦闘力が未知数すぎるな。


「……佐久間。一応言っておくけど、乱入はしないで。足手まといだから。」

「分かってるよ。」


 今の俺は、風の刃を出すだけのクソザコだ。

 さすがにナメクジは卒業したが、現地の人間と比べたら、まだカス同然だ。


「私としては、穏便にやりたいんだけどな。大人しく着いてきてくれれば、互いに痛い思いをしなくて済む。」

「ふ……どうせ拷問するくせに、何を言っているのかしら。」

「いやぁ、貴女を拷問することは出来ませんよ。私の首が跳ぶ。」


 女騎士は、チラリとこちらを見た。

 イエスタを拷問出来ない理由がイマイチ分からないけど……何かありそうだな。

 女騎士が拷問しない、優しい騎士って訳でも無いだろうし。


「いやー、マジで大人しく来て貰えませんかね。定時で帰りたいんですよ。」

「残念だけど、残業確定ね。」

「じゃあ、さっさと終わらせますか。」


 そう女騎士が言った瞬間に、視界から銀髪が消えた。

 驚く暇もなく、俺の視線はイエスタの目の前に現れた、女騎士に移る。

 速すぎる。それほど大きな魔術の気配もしないし、使っているのは軽い身体強化程度か?

 なのに、消えたと錯覚するほどに速い。


 しかし俺とは違い、イエスタには見えていたようで、薄い氷の壁を四方に張り、女騎士を一瞬にして拘束した。

 氷の壁からは、一切魔力を感じない。どういう仕組みなんだ!?


「おぉ……見えたのか。凄いな。この氷も、薄いのに硬い。素晴らしい技術だ。」

「あら、まだ他人を褒める余裕があるの?」


 イエスタはそう言うと、女騎士の頭上に、大きな氷柱(つらら)のような氷を生み出して、落とした。

 

 しかし、女騎士は一瞬で消え、いつの間にか最初に居た位置へと戻っている。


「……やるわね。一体どんなトリックで抜け出したの?」

「さあ?」


 女騎士はとぼけたが、俺には分かる。

 一瞬だが、シスターさんが使っていた転移魔法と似たような気配がした。

 恐らく、転移魔法で抜け出したんだろう。


 つまり、女騎士は転移魔法が使えるレベル……ということだ。

 イエスタは、転移魔法を使えるのは全人類の数パーセントだと言っていたし、女騎士は相当のエリートってことになる。


 分析を続ける暇は無く、女騎士は一瞬でイエスタの死角に連続移動して、短剣のようなもので攻撃を加える。

 身体強化と転移魔法を組み合わせて、緩急をつけているようだ。

 しかしイエスタも対応し、薄い氷をバリアのようにして守り、攻撃を全て防いでいる。


 目で追うのがギリギリだ。動体視力には自信があるが、テレポートされると、さすがに厳しい。


 転移魔法を連打しまくれる女騎士も、それに対応して高度な氷魔術を展開しまくれるイエスタも、はっきり言って異次元だ。


「……このままだとキツいわね。」

「こっちのセリフだ。なんでこれに対応出来るのか、知りたいね。」


 女騎士の声色からは、少し焦りが伝わってくる。連続で転移魔法を使うのは魔力の消費が激しいだろうし、長期戦はあまり得意じゃないのかもしれない。


 そう思った瞬間、ずっと防御ばかりしていたイエスタが、反撃に転じた。

 薄い氷を横向きに細くして、周囲を薙ぎ払うように1周させた。まるで氷の剣を振っているような、薄い水色の軌跡が残る。


「――!?」


 女騎士も反応が遅れ、腹に一文字を刻まれた。

 距離をとるためか、女騎士は転移魔法で数メートル後退する。

 イエスタは、そこに追撃(ついげき)の氷の弾(氷魔術でよく見るひし形の弾)を十数発打ち込む。

 女騎士は転移魔法の連打で氷を回避するが、イエスタが一瞬溜めて打った高速の氷を避けきれなかった。


「ぐふっ!?」

 

 左の脇腹に、かなり深い傷を負ったようだ。

 魔力の気配も少し弱くなってきている。転移魔法の使い過ぎで、魔力が減っているからかもしれない。


「はぁ……はぁ……流石、絶望組の生き残り……やるね。」

「ええ、まあ。」


 イエスタは、女騎士へ向かって歩みを進め始めた。

 

「……殺すのか?」

「当たり前でしょう?私達の情報を、王国側に漏らされる訳にはいかないもの。」

「…………ふっ」

「あっ!ちょっとまt」


 イエスタの意識が俺に向いた瞬間を見逃さなかった女騎士は、転移魔法でどこかに消えてしまった。

 まだ長距離を転移できる程の魔力が残っていたのか……魔力の気配も、もう追えなくなった。


「……俺のせいで、逃げられたな。」

「……もういいわ。彼女とは、元々何度か交戦してるし。」

「そうなの?」

「ええ。彼女はヘルシア・スクリプト。転移魔法のスペシャリストで、王国騎士団の副団長よ。」

「副団長!?そんなに偉い人だったのか……」


 鎧が結構豪華だったし、偉い人なのかなとは思ってたけど……副団長とは。

 確かにめっちゃ強かったし、実力でその地位まで上り詰めた……ってことか。


「彼女が、王国騎士団の中では1番脅威よ。出来ればここで仕留めておきたかったけど……仕方ないわね。」

「本当にごめん。」

「謝ったら、完全に犯罪者(わたしたち)の味方よ?王国騎士団の副団長を殺すのを……」

「俺は何も言ってないぞ。」

「……そういうところ、(いさぎよ)いわね。」

「俺は、あくまで一般人だからな。」


 イエスタは、はぁ……とため息を吐き、森の方へ歩みを進め始めた。


「早く戻りましょう。増援を呼ばれたら、流石にちょっときついわ。」

「……そうだな。」


 そうして、俺たちは早足というよりも駆け足で、森の隠れ家に帰った。




「……ただいま。」

「おかえりー!……何かあった?」

「ええ、ちょっとヘルシアとばったり会ってしまったから。」

「殺せた?」

「逃げられたわ。」

「えー?勿体ない……」


 トワはソファーでくつろぎながら、イエスタとゴリゴリ犯罪者な会話をしている。

 エスマリアは……リビングには居ない。イグニスも、まだ帰ってきてないらしい。


「……って、さくたんの存在が、王国騎士団にバレちゃうじゃん!?」

「……って確かに!?終わった!!!!!」

「まだ終わるのは早いわよ。ヘルシアが報告しない可能性もあるから。」

「流石にそれは無くね?」

「いや……ヘルシアって、あんまり余計なことをやろうとしない人なんだよねぇ。面倒事を避けたがるんだよ。こっちとしては、ありがたい限りだけど!」


 残業は嫌だみたいなこと言ってたし、そういう性格……で、片付くのか?

 エスマリアに、ヘルシアの盗聴とかして貰えないかな。そうすれば、言うか言わないか分かる……


 ……これ完全に犯罪者(ぜつぼうぐみ)の思考じゃん。俺、何回これやるんだよ。


「私たちにできることは、現状何も無いわ。」

「エスマリアたんに、盗聴を頼むくらいかな?」

「ええ、通話魔法で伝えておいて。私はご飯の準備をするから。」 

「了解!」


 その後、イエスタの絶品料理を食べた俺は、少しトワの気配が残ったソファーで眠りについた。

 トワの魔力には、不快感がない。シスターさんとはどういう違いがあるのか、まだ分からないな……。


 今日は結構歩いたから、明日筋肉痛にならないかだけ心配だ。すでに足の裏が死にかけている。

 俺レベルの引きこもりだと、歩いただけで筋肉痛になるんだよ。

 この世界で生きるなら、筋トレもしないとだな。明日は、イグニスと筋トレでもするか。

 そのまま、俺は目を閉じた。









 





「ふぅ……」


 私は、自室のベットに座り込んだ。

 まさか、佐久間の前でガッツリ戦闘になるとは、思っていなかった。氷の違和感には、気がついたのかしら……?

 

 佐久間には、魔力の()()を感じる、例の能力がある。教会に入った時、確信した。

 あそこで違和感を覚えると言うことは、そういう事なのだろう。

 本人は、ただ魔力を感じるだけの能力だと思っているけど。


「…………」


 ベットをさわさわと撫でて、真下に居るであろう佐久間の寝顔を想像する。

 マヌケに口を開いた顔が浮かんできた私は、不意に込み上げてきた笑いを抑えながら、横になった。

 明日は……佐久間の魔術練習に付き合って……また、教会に行けたらいいな。



誤字、脱字等ありましたらコメントで教えてください!

だいぶ物語のエンジンがかかってきたかな…?

ブックマーク、感想よろしくお願いいたします。

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