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7.まさかの魔法『洗濯』

「よし!やるぞ『洗濯』!」


そう宣言した瞬間に重いクロスがひとりでに宙を舞った


「えっ!?」

「なんだい!?」


舞ったクロスはその場でくるくると渦を巻くように回転し

次の瞬間には私の目の前に畳まれた状態で浮かんでいた


「えっ??」

「なんだいこりゃ、、、」


そっとクロスに触れると浮いていたのがウソのように落ちそうになったので

あわてて抱き留めた


ふわっ


「えっ、、柔らかい」

まるで現代の洗濯乾燥でもしたような柔らかさと柔軟剤のような良い香り

びっくりして腰が引けていたローゼさんも近寄ってきてクロスに触れる。

「なんて柔らかな、、、うちのクロスとは思えないよ」

ふわふわの感触を何度も確かめるようにローゼさんはクロスを触る


「マリー、あんたまさか魔法が使えたんだね」

「え?これ魔法なんですか?」

「いや、洗濯ができる魔法なんて聞いたことがないよ、そもそも魔法使いなんてめったにお目にかかれないからね。どんな些細な魔法でも持っていれば王宮への就職の足掛かり、、」

「私、王宮行きたくないです。」

「そうさね、今王宮勤めなんて子供でも嫌がるさ。魔法使いもみんな隠すか隣国へ行くかだよ」


ローゼさんは喋りながらもクロスを揉む手が止まらない


「マリー、他のクロスも同じようにできるのかい?」

「いや、わからないですけど、、やってみます!」


そうして早朝から私の『洗濯』についての研究が始まったのである。


と言っても結果は簡単。

私が洗濯するぞ。という意思を持って布を認識し『洗濯』と唱えるだけ。

そうすれば布も服もひとりでに綺麗になり、ふかふかピカピカのつるっつるである。


異世界への転生とか、転移とかってもっと派手でカッコいい感じの能力を得るんじゃないのか、、

『洗濯』って、、便利だけど地味オブ地味

いや、便利なんだけど。


世界も救えそうにないし、異性を虜にもできないし、世に覇を唱えることもできない。


でもこの魔法があれば、、ローゼさんとリックさんに恩返しはできる。


いつもと違う肌触りに洗いあがった洋服を手にして嬉しそうなローゼさん

しつこい油汚れが消え、真っ白に洗いあがったエプロンを手に目を白黒させるリックさん


「ねぇ、ローゼさん、リックさん。私ここで洗濯屋を開くわ!」


ふかふかになったタオルを握りしめ、私は新たな一歩を踏み出すこととした




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ローゼさん、急に洗濯屋なんか始めるって聞いて最初はびっくりしたのよ」

「なんなの、この洗いあがり!どんな秘密があるっていうの?」

「もう別の服って言われても納得しちゃうわよ、、、」


食堂の方でローゼさんが洗濯を預けにきたおば様方のマシンガントークを浴びているのが聞こえる


「ふふふふ、内緒だよ。ただね、この間から住み込みで働いてくれているマリーが良い子なのさ」


そんなローゼさんの話声も聞こえてちょっと恥ずかしい。


私は、どーんと預かったおば様方の洋服やクロス、タオルなどが入ったカゴを持ち庭に向かう。

正直こんなの一瞬で洗濯完了なのだか、さすがにそれじゃあ怪しすぎるので

町の洗濯屋のように2日程度で作業終了した、という体でお返しするようにしている


「『洗濯』」


庭にぶわっと舞い上がる洗濯ものたち

レベルだのなんだのはわからないけど、洗濯屋を初めて枚数をこなすようになってから

一度に処理できる枚数は確実に増えていた。


洗濯屋として仕事を始めたものの、おば様方の口コミで仕事はどんどん舞い込んでくる。

料金も通常の洗濯屋よりちょっと高めに設定しているが、それこそ納得の仕上がりでみんな満足してくれていると思う。


そしてなんといっても魔法なので頂いたお金が全部利益!

洗剤だのなんだのいらないんだもの!

私の貯金は増え続けていた。


家賃や食費以外はローゼさんは受け取ってくれない。

そもそも住み込みで衣食住は保証している。と言い張るからそれも本当に少しなのだ。


「マリーが来てから毎日楽しいからね」といってほほ笑むローズさんとリックさん


私はそんな二人の為に、隣国への安全な移動手段をプレゼントすると心に決めて

仕事があるかぎり『洗濯』に励んだ


それがまさか二人との思わぬ別れになるとも知らずに。


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