3.降り注ぐ異世界雑巾洗いの水
「うちの裏でそんな事やめとくれ!!」
耳をつんざく怒鳴り声と共に私の上に雑巾を洗ったなんとも灰色の水が降ってきた。
なんで雑巾とわかったかというと、雑巾も降ってきたから。
私はあっというまに灰色&頭部に雑巾トッピングのびっしょびしょ女になった。
さっきまでノリノリで「こんなところに女がいるぜ?」「どうしてやろうか?」と言っていた裏路地チンピラも
汚い水浸しの女を襲う趣味はなかったらしく
「きったねぇ、、、」
「なんかもういいわ、、、」
と去って行き、私は盛大にため息をつくおばちゃんに宿屋の庭に招かれた。
「なんだってあんなとこに居たんだい?この辺りは治安が悪いなんて産まれたての赤ん坊でも知ってるよ」
綺麗な水が入った桶と、洗われたタオルを持ったおばちゃんは、説教しながらも私の着替えを手伝ってくれた。
固いタオルでガシガシと拭かれる。
どう考えてもここは洗濯槽の中ではない
裏路地も現代の裏路地ではない、、、
チンピラの恰好もおばちゃんの服も、、私の感覚では昔の外国の洋服みたいな
私はどこに来てしまったのか
「すみません、、、私初めてで」
呆然とそう言った私に、おばちゃんは心底あきれた声で
「こんなとこに何しに来たんだい?王家は頼りにならないし、騎士団だってヨレヨレ、新しく来るのは詐欺師かまだ捕まってない悪人ぐらいだよ」
「そうなんですね、、、」
「そうなんですね、、じゃないよまったく。人の家の裏を事件現場にしてもらいたくはない、、ってあんたどうしたの?泣いてるじゃない」
「えっ、、」
指摘されて顔に触れると、たしかに涙が。
私泣いてる、そう認識してしまったからか
涙は余計に止まらなくなり
「おっ、、おばざん、、、わだじ、わたしどうすればいいんですか、、」
もうそれ以外は言葉にならなかった
慌てるおばちゃんはせっかく拭いたのにまたびしょびしょになりかけている私を
家に招いてくれたのであった