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『ヒト』それぞれにPSYはある  作者: ガラマサ
プロローグ『HUMAN』
1/39

序《白濁・Sucker》

 ――血がお腹から漏れるにつれ、意識が霞んでいくのがわかった。


 青白い、童女だった。チャイルドシートに座す腹筋は挫滅(ざめつ)し、鉄屑に穿たれたそこは腑と、赤くどくどくしたものを吹き溢している。


 眼前、笑い合っていた両親を、前座席ごと押し潰す鉄塊がある。その横入りが恐らく現状の元凶だった。破滅の余波が、酷く明るげの斜陽が、車内後部の彼女を迎え入れんと伸びたのだ。


 その、理解に至った彼女は既に、流れ出過ぎた痛みと熱を――みんなのとまざって、足元に敷かれた赤絨毯を、(もや)がかる思考と眼で見下ろして。


 勿体無いな、なんて。漫然と思ったのも覚えている。




 この力はきっと、その時に産まれて来たのだろう。


「ごちそうさまでした……タバコ臭いけど、大事に使うね」


 流れ込む熱量に頬が上気して、受けた傷は急速に塞がる。

 傷付けた喧嘩相手は討伐完了。

 干からびて死んで、引き替えに成人男性一人分の血をゲットだ。


 その栄養を人体以上に引き出し、身体を回復・強化し維持させる、長期存命の『畏能』――これで、向こう暫くの安泰は勝ち取った。


 なので、頭に昇った血と思考を、声も覚えていない父親にでも巡らせていた手前。


「……生きてれば、次がある。次があれば明日がある。明日があれば…………なんだっけ」


 うん、口癖も既に覚えてなかったらしい。

 てか、よく考えると名前も覚えてない。


 頭回って絶好調の今でこれとは地味にショック……。

 ですらないのは、もはや混血し過ぎて血縁もクソもなく、是非も無い。


「――、ま。いっかぁ、そのうちで……」


 ……あれから、十年。

 夜に逆らって賑わう街明かりの裏側。

 薄暗い路地で人知れず、鎖を軋ませて少女は血の馴染みを試す。

 保育園だがで習った体操の動作だ。


 昔よりか延びた四肢は痩せぎすで、両腕を上げればボロ服越しに肋がありありと浮き出る。

 ミルク色の血気付いた肌には不釣合な鉄枷がはめられ、流れる白髪は低身長の背を覆い、堀の浅い童顔には、紅く塗れた大粒の相貌があって。


 その眼は自然、体温を奪った相手へ確認を向かう。


 ――少女への仕事相手は、『怪人』という。

 少女のような畏能持ちが狂気に呑まれた暴走個体。

 もう二度と戻らない、正真正銘の人外だ。

 人に手を出そうものなら殺処分される害獣だ――同情など一切、されはしない。


 そんな、凡そ同じ血の通う者とは思えぬ、化物と自分とを見比べて最後に、満月を見て。


「お父さん、お母さん……わたしは、元気だよ」


 大概ありそうな、そんなことを言ってみる。

 白い身体がとくとくと脈打っている、ただそれだけを確かめ、安堵しながら。


 ――奴隷少女は、動物の様に生きていた。

ご覧になって下さり、誠にありがとうございます(≧∀≦人)


本作1-5話までがプロローグで、一話ずつ毎日12時に投稿予定。

初日だけは、次回の二話も同時に投稿しました。

だいたい「こういうコトを描きたい作品なんだぜ!」とわかる内容となってます。


第一章以降では、そのコンセプトをより遠大に描けていければな~。なんて思っていたり。

所々薄暗いモヤモヤ展開があるかも知れませんが、最終的には後味スッキリな感じに持っていく予定です。後悔はさせません!


ので、お見逃しにならないようブックマークのほど、何卒よろしくお願いします!


自分にとって、初の長編でありネット投稿作品である、

本作が面白いな、と思った時には評価して頂けると嬉しいです!

ご感想も是非、お気軽にくださいませ~(。・ω・)ノ

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