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オタな俺とオタク少女  作者: 蟻の巣
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晴れのち曇りところにより雷雨

 土曜の晩、ようやく完全なプランが出来上がった。

 武器である手作り弁当も会心のデキとなった。負ける要素が一つも見当たらない、ただし最初から負けている。

 会心の弁当を写真に撮って雷火ちゃんのチャットに添付して送ってみた。するとすぐに返信が届いた。

[マジですか、めっちゃ美味しそうじゃないですか(*´д`*)捨てましょう(-"-)]

[なんでやねん]

[私食べれないしーヽ(`Д´)ノ]

[今度作るって]

[マジですか?やった━(゜∀゜)━!とりあえずそれは捨てましょう(゜Д゜)ノ]

[なんでやねん]

[あっ、お姉ちゃん帰ってきたんでちょっと消えます(´▽`)ノ]

 雷火ちゃんは、そう残してしばらく返信は途絶えた。

[三石さん、真剣な話があるんですけど]

 そう彼女が切り出してきたのは、先ほど返信が途絶えてから一時間以上経った後だった。

[どうしたの?]

[お姉ちゃん、今日デートだったみたいなんですけど、びっくりするくらい上手くいかなかったらしくて凄く落ち込んでるんですよ]

[上手くいかなかった?具体的には?]

[恋愛映画を見に行ったらしいんですけど、相手の方が間違いで全然違う映画の予約入れたみたいで、それを無理して元の恋愛映画見たらしいんですけど、内容がかなり過激なものが多かったみたいで。その後に食事にしようとしたみたいなんですけど、お姉ちゃん普通の私服でいったら会員制の凄くオシャレな良いお店だったみたいで浮きまくったそうです、挙句の果てに男の人が料金を全部持つと言ってくれたそうなんですけど、お姉ちゃんそれは絶対にダメって言って無理やり半分持つって聞かなかったんですけど]

[お金足りなかったとか?]

[よくわかりましたね、半分でもかなり高額だったらしくて、結局全部だしてもらうことになったみたいです。さっき家にお金取りに帰ってきて今また返しに行きました]

[それは余計ややこしくなるんじゃないか?]

[私もそう言ったんですけど]

[結構頑固なお姉さんだね]

[良いお姉ちゃんなんですけど、奢られるとか嫌いなんですよ、デート自体もこっちの都合で無理に取り付けたらしいんで]

[そういうのが許せないお姉さんなんだね、俺も心当たりあるけど。性格を考えて行動しないと酷い事になる]

[もうなってますー、姉さん泣きそうな顔してたし、プレゼントも用意してたらしいですけど結局渡せなかったみたいで、もうボロボロですよ]

[まぁそんなことになったら渡し辛いだろうね]

[助けて下さいー。あっお姉ちゃん帰ってきたんで、今日はこれで落ちます]

 そう残して、雷火ちゃんの返信はなくなった。

「心配だな…、雷火ちゃんのところ」




 翌日デート当日となった。予め先輩には植物公園に行くので、一○時に電気街の駅前でお願いしますとメールを送っておいた。

 電気街の駅前は休日ということもあり、肌寒い中も人が多く活気を見せていた。俺は頭の中で何度もコースを反芻させる。手元には少し大きめのランチバッグ、既にバレバレな武器だが、なんとか形になってよかった。

 時刻は一○時一○分前になった。先輩の性格を考えればもう来てもおかしくはない、これが世に言う、ごめん待った?ううん、今来たところだよ、ってそんなワンシーンが浮かび顔がニヤけた。

 生きてるうちにデートのお約束が出来て良かった、嬉しい、きっとこんなことがなければ魔法使いへの道を辿っていただろう。


 時刻は一○時過ぎ、うむ先輩遅刻。ただ息を切らせながら「すまい遅刻してしまったよ」テヘっとなるそういうシチュエーションもありなんじゃないか?いやありだ。


 一○時四○分、流石に遅すぎない?先輩の携帯にメールを何通か送っていたが返信はなく。一一時にようやく一通のメールが届いた。

[すまない、遅れる]

「キタ、寝坊展開キタ」

 これは間違いなく寝坊して、先輩の家ではきっと、なんで起こしてくれなかったんだー的なやりとりが起こってる間違いない。

 しかし先輩今起きたとなると一時間はかかるな、いや女の子だから準備には男の三倍はかかるだろう、早くて一時間半か?二時間も十分ありえるな。となると心配なのは弁当だ。それでも来るのが一時ならまぁ来て移動してからすぐに食べれば全然ありだろう。冬場な為そんな簡単に傷むこともないだろう。

 いきなり武器を使用すると後でしわ寄せがくる気がするが…。まぁ待ちますとも。


 時刻は短針が二を、長針は六を指そうとしていた。

「遅すぎるよね」

 何度かまたメールと電話をかけているが繋がらない。

「なんか事故に巻き込まれたとかそういう可能性が出てきたな…」

 俺は先輩の実家の方に電話をかけると、田島さんが出て先輩はずいぶん前に家を出たと言われた。

 ただ、先輩は居土先輩に会ってくると言って家を出たらしい。

「俺じゃなくて居土先輩ですか?そうです…か、あのもし戻られましたら三石が連絡欲しいと言っていたと伝えてもらっていいですか?お願いします」

 そう言って田島さんと電話を終えた。時計の短針は既に三を指そうとしていた。

「曇ってきたし」

 雨は降っていないが日が差さなくなって途端に気温が下がっていった。

「遅れると言われれば、待ちますとも」

 俺は頭をカリカリとかきながら未だに開封されることのないランチバッグを見つめる。

「流れたかなぁ、この話」

 せっかくいろいろ考えたので、一つでも活かせられればと思い、俺は駅前の支柱に寄りかかりながら携帯を眺め続けた。


 時刻は六時を周り、辺は暗くなっていたが、電気街の光りが昼間のように明るく照らしていた、駅からは絶えず人が流れ続け、先輩への連絡ももう諦めと化していた。

 支柱に寄りかかっていたが段々ズルズルと腰が下がってしまい、やがてしゃがみこんでいた。夏場の暑いのも辛いけど冬場の寒いのも辛いよね。

 なんだか手が痛くて手袋を外すと、寒さで傷がひび割れて血が少し出ていた。咄嗟に何かで拭こうと思った時ランチバッグのナプキンが目について、一瞬手にとったが結局手でゴシゴシと拭って手袋をつけた。


 八時、先輩に一言遅いっすよー、えっまだ待ってたのかい?馬鹿じゃないのか?とそんなやりとりをしてやろうと考えていたが、冷え切った体は単純に動くことを拒否していた。

 あのメイドの格好のお姉さん大変そうだなぁとか、看板からは全く想像のつかないお店に大きなお兄さん達が行列作り始めたりして、視覚的に退屈はしなかった、毎度不思議なトコだなと思ったが自分もその景色の一部になってると気づいて笑みがこぼれた。

 ただひたすらに寒くて、先輩にすっぽかされたっていう現実を見るのが嫌で残り続けていた。



 時計の短針が二回目の一○を指そうとした時、ようやく俺は帰ろうという思考に至った。

ただ一度ついた腰は上げるのが億劫で、体が今維持している以上のエネルギーを使う事を許してくれなかった。

 なんか寒いなぁって思って星でも見えるかなとこの日、いや最近初めて夜空を見上げてみたけど、見えるのは看板と電線と黒い空だけだった。

 あぁやばいちょっと泣きそう。


 顔を上げた額に暖かい何かが置かれた。それはコーヒー缶でいつぞや百貨店の屋上で貰ったものと同じラベルだった、ただ違いはひたすらに暖かかった。

「ちぃっす」

 コーヒー缶を額に置いた少女は少し恥ずかしげにこちらを見ていた。

 腰より長い暗めの茶髪で黒のタイツに赤のチェックのミニスカート、白のシャツに黒の細いネクタイ、その上にモフモフした暖かそうな毛が首元を覆うコートを着た少女はこちらを見て、何してんスかと呟いた。

 その声はさも俺がここにいるのが当然のように、何で帰らないんですか?と呆れを多分に含んでいた。

「雷火ちゃん、何でここに?」

「たまたまっす。…嘘です」

 そう言って雷火ちゃんは白い息を吐いた。

「お姉ちゃんなら来ませんよ」

「ん?」

「三石さんニブいっすね、火恋姉さんは来ませんって事ですよ」

「えっ?」

「三石さんですよね、これ私の実家に忘れていったの」

 そう言って差し出されたのは、トラブルブラッドネスの画集だった。

「もうちょっと早くに気がつくべきでした、まーさかお姉ちゃんの許嫁候補が三石さんだったとは」

「あの、もしかして伊達雷火って、あの伊達さんとこの?」

「そうです、姉に火恋と玲愛、父は剣心の伊達さんとこの伊達雷火さんですよ」

 先輩ちょっと場所かえましょうかと言って雷火ちゃんは駅前から近くの公園に場所を移した。


 電気街の近くに作られた公園は一体誰が来るんだと言いたくなるくらい狭いが、ブランコやすべり台など遊具は一式揃っていた。

「本当は暖かいところに入って三石さんの体温を上げてあげたいんですけど、私からの嫉妬のせいで外です」

 雷火ちゃんはよくわからないことを言う。

「先輩が幼稚園の頃、仲良かったみたいなんですけど、私生まれた時体弱くてずっと病院にいたので接点がなかったみたいですね」

 雷火ちゃんは公園にあったブランコを座りながら、緩やかにキコキコとこぎ始めた。

「驚きました?私があの伊達さんとこの伊達さんで」

「うん、驚いた。ただいろいろ会話を遡ると確かにそれに近いことは言ってたなって思った」

「ですよね、私もそれ思いました」

「世の中狭いなぁ」

「後今先輩が一番気にしているであろう、お姉ちゃんの行方なんですけど、居土さんのところに行ってます。昨日チャットで話した通りなんですが、お姉ちゃんがボロボロだったのを気にした居土さんが謝りたいからという名目で連れて行ってます。本人も居土さんも今日三石さんとのデートがあると知った上での行動です」

「そっか…、連絡ぐらいは欲しかったかな」

「姉さんが呼び出された名目は、三石さんと会うまでに少し時間がほしいと言って呼び出されたそうです」

「あぁ、それで予定外に長引いちゃってるんだ」

 成程ねとつぶやく俺を睨みつける雷火ちゃん

「あのわかってますか、これもっとも最低なすっぽかしですよ」

「まぁ話が盛り上がっちゃって抜けられなくなることってあるよね」

 そう言うと雷火ちゃんはさっきより強い勢いで睨みつけてくる。

「居土さんはご実家に姉さんを連れていったようです。居土さんのご実家知ってますか?」

「確か製薬メーカーの」

「はい、ご自身で病院も持っておられます。まぁ私の予想ですけど多分病院に行ってるんですよ」

「病院?」

「自分のホームに引き込んで夢とか情熱とか語って昨日お姉ちゃんに恥をかかせた事を気にして、挽回したいんですよ。それに病院って携帯使えないでしょ?お姉ちゃんその辺真面目だから、使っちゃいけないところじゃ絶対使いません」

「なーるほどね、じゃあしょうがない」

「何もしょうがなくありません、私からしたら何わけわかんないこと言ってるんだお前?ってなりますよ。いくらでも連絡手段はあるにも関わらずしなかったっていうのは単に三石さんを舐めてるだけです。どうせ今回の話断るから向こうも来なかったら帰るだろう的な甘えです」

 言っていて腹がたってきたのか怒りを噴出させる雷火ちゃん。

「んーそうかなぁ」

「何か反論あります?」

「反論って言うとおかしくなるけど、火恋先輩は本当に来るつもりだったんじゃないかなって、一通だけメールが入ったんだ、遅れるって」

「三石さん、優しすぎです馬鹿じゃないですか?」

「厳しいなぁ」

「お姉ちゃんの為に頑張ったんですよね」

 ランチバッグを見て言う雷火ちゃん。

「三石さん、手袋とってくださいよ」

「寒いから嫌かな」

 俺はそう言ったがかじかんだ俺の手を取り、すぽっと手袋を外してしまう雷火ちゃん。

「私ボイチャしてたんで知ってます。火傷いっぱいして、切り傷いっぱい作ってるって」

 ひび割れた傷口から血が出ている俺の醜い手を見て眉をハの字に曲げ、悲しそうな顔をする雷火ちゃん。

「恥ずかしいなぁ、やっぱりパソコンのようにはうまくいかないかな」

 そう言って俺は後頭部をかきながら雷火ちゃんから顔を背けた。

「あぁ、やばいっす私三石さんの困り笑顔マジでツボなんですよ」

 俺の表情を見て少し顔を赤くする雷火ちゃん。

 彼女を何を思ったのか、ひび割れた指先にちゅっと少し恥ずかしい音を立てて吸い付いた。

「ら、雷火ちゃん!?」

 冷たくなっていた心に火を点けられたようで、大きく取り乱した。カプカプと指を咥える様子がオタクの外道的な考えかどうしても扇情的に見えてしまった、優しい気持ちでやってくれてるというのに、俺は死んだ方がいい、自己嫌悪と目の前の沸騰しそうな光景に目眩を起こしてしまう。

「汚いからね、そんな変なもの口に入れたらお腹壊すから」

 必死に指を引き抜こうとするが真実の口に手を突っ込んだ、嘘つきなのか雷火ちゃんが大して力を入れていないのはわかっているのだが引き抜けなかった。

 年下の子に指を舐められる、やましい気持ちは一切ないのだが、なんだか背徳的な行為は五分以上続いた。

 やがて指から少し卑猥な唾液の線が糸を引いて、俺の指は幸福から解放された。

「………」

「………」

 お互いに気恥かしさから無言。たださっきより体温が急上昇したことは確かだった。

「この前言ってたアレ、やっちゃいましたね」

「俺は吸う方が好みなんだけど」

「贅沢言わないでください」

 雷火ちゃんは悪戯っぽく笑う、勘弁して欲しい、そんな笑みを向けられたらモテないオタクなんてコロっと君の事を好きになってしまう。

「あのこれ食っていいですか?」

 まだ頬を赤くする雷火ちゃんはランチバッグを指す。

「ん?いいよ出来上がりの写真は見せたと思うけど、この三石スペシャルと名づけたスペシャルな弁当でね」

 ランチバッグを開くと少し寄ってしまっているが、俵おにぎりに色とりどりのおかずが並んでいた。

「すげームカつくっす」

「どうしたの?」

 唐突に低い声を出す雷火ちゃん。

「これ全部お姉ちゃんの為に作ったんですよね?」

「ま、まぁね」

「すげー綺麗です、料理できない三石さんの努力の成果っす、でもそれを食べないお姉ちゃんにも、そんなお姉ちゃんを待つ三石さんにも、だからこれは全部私のものです」

 パクパクと一人では量のあるお弁当を平らげていく雷火ちゃん、いい子だなぁ。

 お弁当を食べる雷火ちゃんに俺は小さく話をする。

「俺さ、すげー弱いからさ、すぐ強いものに憧れるのよ。火恋先輩もそうなんだ、すげーカッコ良くて女の人なのに堂々としてて、俺にはないものいっぱいもってて。ヒーローものに憧れ続けてるのもその延長かな、すげー弱くてカッコ悪いからすぐ強くてカッコいいものに憧れちゃうんだよ。そんな強い人ってキラキラしてて、そんな人に近づくと俺も少しは強くなれるかなってそんな風に思ったりして、自己投影が酷くてね。その上チキンだから何でも準備しとかないと心配で、だから準備時間があればちょっと頑張っちゃうんだよ」

 話の文脈なんて考えず、ただ自分の吐き出したいツマラナイ話を何も言わずに聞いてくれる雷火ちゃん。

「三石さん、なんか勘違いしてないっすか?」

「えっ?」

「普通の人はバイトのショーであんな頑張って演技しません、叶わない恋で料理をここまで頑張って作りません。貴方は間違いなく頑張る人なんですよ」

 そうかなぁと首を横に傾け曖昧に笑みを返す。

「だから三石さん、その表情は反則ですから、マジちゅーしていいですか?」

 冗談とも本気ともとれる雷火ちゃんの言葉に俺は困ってしまう。その時俺の携帯に着信音が鳴ったディスプレイに踊るのは伊達火恋の名前。俺は恐る恐る通話のボタンを押す。

「もしもし三石です」

「悠介君、すまない、今…どこにいるんだい?今日の件で謝罪が、したい…。今君の自宅の方に向かってるんだが、自宅…あってる…かな?」

 先輩は相当慌てているようで、雑音も大きく、息遣いも荒い。

「いやぁ、もう遅いんで明日でいいですよ」

 時間はもう一一時を指そうとしている。

「そういうわけにはいかない、君には謝罪してもしきれない事をした」

「そこまで気にしなくてもいいですよ」

「本当にお願いだ、謝らせてほしい」

 先輩も俺がのらりくらりとしているとどんどん必死になってきた。

「んー、そうでしたら、電気街の駅近くに公園あるじゃないですか、そこにいます。妹さんも一緒ですよ」

「雷火が!?何故?いやいい、それよりも君が駅近くにいる方が気になる、ひょっとして帰っていな…」

 そこまで火恋先輩が言った後、雷火ちゃんは俺の手から携帯を奪い取ってしまった。

「姉さん、三石さん一二時間も待たせといて、今更何しに来るの?」

 雷火ちゃんは冷たい声で責める言葉を放ち続けていく。

「謝罪?今まで居土さんと一緒にいてごめんなさいって言う気?そんなの姉さんの自己満足じゃない、姉さんが謝ってすっきりしたいだけでしょ?遅い時間なんだから明日でもいいわけじゃない」

 あぁなんかやばい感じになってきた、これは姉妹喧嘩になりそうだぞ。そんな嫌な予感をひしひしと感じながら姉妹二人のというか雷火ちゃんの一方的な攻めがヒートアップしている。

「だから、そんなこと言ってなんになるのよ!結局は三石さんを捨てる気なのに、何でそこでわけわかんない助け舟だそうとしてるの!」

 内容はよくわからないが、とりあえず喧嘩が悪化していっている事だけはわかる。

「来なくたっていいから!」

 段々火恋さんもヒートアップしてきたのか、携帯越しから、それを決めるのはお前じゃないと声が聞こえてきた。

「なんか嫌な感じに…」

 俺があーっとなってるうちに雷火ちゃんは一方的に携帯を切ってしまう。

「三石さん、ここから移動しましょう。どこか暖かいところに入って体温を上げましょう。そうだ三石さんの家に行きましょう、遅いですしね、そうしましょう」

 雷火ちゃんは弁当を無理やりかきこんで食べきると俺の手を引いて公園を出ようとした。



「どこに…行く、雷火」

 そう声をかけるのはぜぇぜぇと息を切らせている美しいポニーテールを乱し、汗で髪が顔に張り付いた女性。

「姉さん足早すぎでしょ…」

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