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オタな俺とオタク少女  作者: 蟻の巣
68/107

肉食系

俺たち三人は必死に追いかけたが、既に黒い三連星はカラオケボックスのカウンターでマイクを受け取っているところだった。


「ちょ、ちょ、ちょっと~」


 相野の情けない声が響くが、彼女達は特に気にした様子もなく。ずんずん先へと進んでいく。

 店内にある小さなエレベーターは彼女ら三人が入ると、すぐにぱんぱんになりスペース的にかなり苦しく、一緒に乗りたくはなかった。


「相野くぅん401だからねぇ~」


 一人が部屋番号の書かれたプレートをひらひらさせながら、エレベーターの扉を閉じた。

 そして残されたのはさえない男三人組だ。


「相野、どうすっぺよ。カラオケに流れこまれちまったじゃねーか」

「ドムの機動力がこんなに高いとは思わなかった」

「そりゃホバーだからな」


 がっくりとうなだれる男三人。まぁ容姿が決していいとは言えない俺たちが、当たりだ外れだなんて言うのはおこがましいにも程があるんですが。(容姿がよくてもそんなこと言ってはいけない)

 それでも男の子としては可愛い女の子と楽しくお喋りがしたいとも思うのです。


「やっぱ俺もう帰っていいかな?」

「やめて、マジで帰らないで」


 がしっと腕を捕まえてくる相野。


「お前に可愛い許嫁がいるのは知ってるし、こんなクリーチャーの晩餐会に出たくないのはわかる。俺もできることならパーティーグッズを用意するより、アサルトライフルの一つでも用意しなきゃいけないとは思ってるんだ」


 俺そこまで言ってねーよ。


「でも、マジでお願いします!」


 よっぽど一人で取り残されるのが嫌なんだろうな。ここまで頼み込む姿は初めてみた。

 そしてなんだかんだ言ってるうちにエレベーターが到着し、俺たちは敵地にしぶしぶ足を踏み入れるのだった。



 比較的広めの部屋なのだが、なぜだろうとっても狭く見える。遠近方かな?

 女の子は間隔を広めにとっていて、三人でソファーの三分の二…、いや四分の三くらい占有しており。俺たち男連中はその余った狭いスペースに押し込まれるのだった。


「相野くぅん、仕切ってぇ~」


 そう言われて相野は苦笑いを浮かべながら司会を始める。


「そ、それじゃあ自己紹介からいこうか。俺たち赤城高で同じクラスの三人。俺が相野伝示。好きなゲームは仮面4マヨナカアリーナ・ウルトラスープレックスホールド」

「お、おでは入江広。好きなゲームはフォト彼だべ」

「あー俺は三石悠介。好きなゲームはグラウンドイーター以外かな」


 男どもの自己紹介が終わると、対面に座るリックドム達はひそひそと、小声で会議を始める。


「やっぱ相野くぅんかしら?」

「あちし坊主趣味なんだけど、カメラ男子狙う人いる?」

「モグモグモグ(なんか食ってる)」


 どうやらファーストインプレッションで誰が良いか決めているようだ。


「一番端っこの~地味な男子はぁ?」

「あれはないでし、どう見てもモブよ、モブ」


 女子三人ででひゃひゃひゃと笑いが起こる。

 一番端で地味と言われれば恐らく俺のことだろう。確かに君らほどのインパクトはないけど。モブは酷いんじゃないか?

 まぁ俺たちもさっき似たようなことで絶望したところだから、それを女子側でやられても文句は言えない。


「お、おいキレるなよ」


 相野が心配そうに俺を腕でつつく。安心しろ俺はいつだってCOOLだ。


「マーコは誰にする?」


 ずっと何かを口に入れている女の子は無言で相野を指さす。

 そして絶望的な表情になる相野に、同じく相野指名だった女の子が顔をしかめる。


「マーコはモブにしときなよぉ~。相野くぅんはカルビが先に目をつけたんだから」


 ふるふると頭を振る少女。


「良かったな、モテモテじゃないか」

「うれしかねーよ!」


 アイコンタクトだけで会話するが、相野の表情はなかなかに悲壮感が漂っていた。


「じゃあこっちの自己紹介いくわよぉ。カルビ達は芸園高校で同じ芸能科なのぉ。カルビは牛渡椿(うしわたりつばき)って言うんだけど、皆からはカルビって呼ばれてるからカルビでいいわよぉ」


 それはいじめられているのではないだろうか?


「はーいはーい、あちしはぁ五十嵐桜(いがらしさくら)。ホームページでチェリーブロッサムってネットアイドルやってるから良かったら信者になってね。呼び方はチェリーでもブロッサムでも女神でもいいわよ」


 キュピーンっと水平スリーピースを決めると、なぜだか脳内にバルス!と響き渡った。

 男三人が両手で目を覆いながら頭を振っていると。三人目のいつも何か食ってる女の子が「亀井万理(かめいまり)、よろしく」と簡潔な自己紹介を終えた。

 全員が自己紹介を終えた直後に店員が入ってきて、大皿のパーティーメニューをところせましと並べていく。

 その量は半端なく、えっ?マジで人間の胃ってこんなに入るの?と聞きたくなる。


「なにこれ…」

「七面鳥よぉ~。とっても美味しいのよぉ~」


 フライドチキンにポテトの山。ローストビーフに、ハンバーグ。ラーメンやチャーハンまである。見渡す限り肉、肉、肉、炭水化物、炭水化物、炭水化物。

 そしてもう一人店員が入ってくると、巨大なピザの皿を置いて、笑顔を残し去って行った。

 むせかえるような油の匂いに、徹夜明けの俺は吐き気をもよおしてきた。


「うぇ気持ち悪…」

「相野くぅん、食べちゃってもいいかしらぁ?」

「ど、どうぞ…」


 OKが出ると、三人の少女はガツガツガツガツガツと一気に肉を貪り食い始めた。


「うわぁすげぇ」


 圧巻の光景である。


「お、おでなんだかわからんが豚のスタンドが頭にうかんだっぺよ」

「俺はオーバーソウルかな…」

「俺はエアギアに出てきたカッコイイ豚」


 ガツガツムシャムシャと作った人もこれだけ気持ちよく食ってもらえればうれしいだろうと思える食いっぷりで、あっという間にパーティーメニューをたいらげていく。


「あ~美味しかったわぁ~」


 結局俺たちは一口も食べることなく、女子三人ですべてたいらげてしまった。その間わずか一○分ほどである。


「あちしぃ、歌うたう~」


 フリーダムである。

 チェリーさんはマイク片手にご機嫌な蝶になりながら熱唱する。流石声優の卵というべきか歌は凄くうまかった。腹から響くような歌声で、ゲームやアニメの主題歌を歌っていたらファンになってしまいそうなくらいにだ。


「カルビもぉ~」


 女子が続き、俺たちも一曲ずつ歌を披露していく。


「なんだよモブ歌うまいじゃん、やるね」


 すっごい上から目線で褒められて、俺はありがとうとだけこぼした。

 カラオケも二順して、予定時間であった一時間が過ぎようとしていた。


「相野、そろそろ」


 小声で伝えると、相野は首をコクコクと振った。

 丁度、歌も途切れてタイミングも良い。チャンスだ。ここらで早いがお開きに…


「あ、あのさ。せっかくあって食事もできたけど、俺たちそろそろ…」


 帰るよ、と伝えかけた瞬間カルビさんにさえぎられる。


「そうよねぇ~せっかくあったんだから、もっと楽しいことしないとダメよねぇ~」

「いや、そうじゃなくて…」

「あちしいいもの持ってるわよ!」


 チェリーさんがごそごそとバッグの中から何かを取り出す。

 それはパーティー系ではあまりにも定番なものだった。

 人数分の割り箸に数字が書かれており一本だけ赤の印が入っている。

 男たち三人に衝撃が走る。

 まさか彼女たちはあれをするというのだろうか?あってまだ一時間程度しか経たない俺たちに…。


「王様ゲームよぉ~」


 男三人は目をつむって衝撃に備えていたが、入江が耐え切れずに泡を吹きだした。


「大丈夫か入江!」

「おでが死んだらハードディスクは破壊してくれ…。棺桶にはカメラを…」

「「入江ーーーー!!」」

「皆ルールは知ってるでしね?」


 割り箸を配って印がついている人が王様で、王様は無茶ぶりを提案して、数字を指定する。その数字が書かれた割り箸を持っている人が、その無茶ぶりを実行するというものだ。命令する順番と数字の指定はどっちが後でも先でも構わない。しかし王様の命令は絶対という恐ろしいルールで必ず無茶ぶりを実行しなければいけない。

 そこで多少ピンクな要素が混じるのが合コンでのお約束に近かった。


(おい相野、こんなことやってたらいつ帰れるかわかんねーぞ!)


 小声で訴えるが死活問題である。


(隙をみてもう一回帰るって言うから、すまんが耐えてくれ)


 マジかよ、入江なんてもう死体に近いぞ。いつもパシャパシャシャッターを切る騒がしいやつだが、今日一回もシャッター切ってないぞ。


「はい、ひいてねぇ~」


 俺たちはしぶしぶ割り箸を引く、全員にいきわたったところで恒例のセリフを、男たちはテンション低く、女子たちはテンション高くコールする。


「「「「じゃあ王様だ~れだ!」」」」


 俺がそっと自分の箸を確認すると3と数字が書かれていた。


「やったー、あちしが王様よぉ!」


 チェリーさんが嬉しそうに声を震わせ肉を揺らす。

 女子が王様になったことにより、男達三人に嫌な汗がつたう。


「最初なんだから優しいのにしてよねぇ~」

「モグモグモグ(まだなんか食ってる)」

「そうねぇ~じゃあ2番と5番がメアド交換する!」


 俺と入江はほっとする、メアド交換くらいならまぁ全然優しいものだろう。

 それにドム同士で誤爆してくれる可能性もある。

 だが顔がかたまっている相野をつつく。握られている割り箸には5番と書かれている。

 南無三。

 入江の割り箸には4番と書かれており、つまりは…。


「モグモグモグ(無言で携帯を差し出す)」


 亀井さんが携帯を差し出しているということはつまりそういうことだろう。しかも彼女は相野が良いと言っていたわけで…。


「相野ぉ、おめぇのことは忘れねーっぺよ…」

「無茶…しやがって…」


 相野は苦笑いしているが、内心では泣いてるんだろうな…。携帯のメアド交換をすませる。

 気のせいか亀井さんの食べるスピードが上がった気がする。これは喜んでいるのだろうか?


「じゃあ次々行くわよぉ」


 と言っていると今度はカルビさんが王様になり、命令の内容は1番と2番がメアド交換をするという、さっきと同じものだった。

 そして今度は顔面蒼白になっている入江に、喜んでいるチェリーさん。

 確かこの子は入江狙いだった気が…。

 これで彼女たちは目当ての男子のメアドを入手したわけだ。

 だが、ふと疑問がおきた。そんなに都合よく狙っている人間にピンポイントでいくだろうか?


「まだまだ行くわよぉ~」


 そして今度の王様は亀井さん。


「5番、6番ポッキーゲーム」


 なんて恐ろしい命令ができるんですか!!


「ちょ、マーコポッキーゲームは早いわよぉ~」

「そ、そうよぉ~。あちしもまだ心の準備が~」


 と言いつつもニヤニヤしているドム。


「やめる?(ムグムグ)」

「いや、王様の命令は絶対だしぃ~。てか5番6番だ~れ~?」


 なんだこの茶番と思いつつ、俺の番号は4番だったので死は逃れたと安堵する。


(お前か?)


 相野にアイコンタクトするが、首を振る。

 男達は女同士で誤爆しろ!と願っていたが隣の入江が白目をむいて倒れた。


「入江ぇーーーーー!!」


 入江の握っている割り箸には6番と書かれている。


「えぇ~じゃあ5番だ~れぇ~?」


 わざとらしくカルビさんが周りを見渡すが、俺と相野が外れで亀井さんが王様なら後一人しかいないだろう。


「あ…あちしだわ」


 おずおずと手をあげるチェリーさん。


「よかったね(ゴクゴク)」

「ツイてるわねぇ~」


 俺と相野で必死に入江の蘇生を行っているが、入江が返ってこない!

 必死の心臓マッサージもネタだと思われて、笑われているが。こっちは微塵もギャグを入れていない、友達の命がかかってるんだ。真剣に決まってる。


「うっ……」


 必死の蘇生活動で入江が息を吹き返した。


「大丈夫か!」

「なんか見たこともねぇ~扉を見たっぺ。黒い触手みたいな手がいっぱい伸びてきてすげぇごわがったっぺ」

「それアカンやつや」

「持ってかれるところだったな」

「助かった」


 と入江は安堵していたが、目の前で両肘をついてポッキーを咥えるドムを見て、また倒れた。


「入江ーーーーーー!!」


 そのあとは惨劇としか言いようがなかった。嫌がる入江をカルビさんと亀井さんが押さえつけてポッキーを咥えさせ、対面から凄い勢いで近づいてくるチェリーさん。

 入江にかわす術はなく、完全にポッキーがなくなる頃むちゅっと音がして、チェリーさんは入江から離れた。

 チェリーさんが去り際に「グッボーイ」とハリウッド女優みたいなことを言って、最高にイラっとした。


「大丈夫か入江!」


 生きたままひからびている入江を揺らす。だが全く反応は返ってこない。


「入江!入江!」

「し…死んでる…」


 金田一少年で殺人事件が起きた時の登場キャラのように、俺と相野はうろたえた。


「このままじゃ死人が増えるだけだ!俺は帰らしてもらう!」

「よせ!」

「じゃあ次行くわよぉ~」


 俺と相野の小芝居も完全に無視されて次の死人を探すクジが回る。


「次の王様誰かしら?」

「はいはーい、あちしあちしぃー」


 ま、また女子か…。これで4回連続女子側が王様…。


「ゲームはまたポッキーゲームね。番号は2番と5番」


 そして今度は相野が泡を吹いて倒れた。


「相野、相野ーーー!!」

「あらあらぁ~カルビ5番よぉ~」


 これはほぼ間違いないだろう、彼女たち裏で結託してる。恐らくインチキして、番号を操作し、王様になった人は目当ての人間同士が当たるように調整してる。

 そうじゃないとこれだけ連続で当たるわけがない。

 それがわかったとしても相野に逃げる術はない。

 俺は両手で顔を覆い、惨劇から目を背ける。


「あぁぁぁぁやめ…あああああああああああああああああ!!!」


 カラオケボックスに響き渡る相野の叫び。悲しいのがここで悲鳴を上げても、盛り上がってると勘違いされて、誰も助けてはくれないということだろう。


「うぁぁぁがあああああああああああーーーーーー!」


 もうやめたげてよ!泣いてる子だっているんですよ!

 俺が指を少しだけ広げて隙間から様子を見ると、むちゅーっとがっちり顔をホールドされてキスされている相野の姿があった。


「ひっ!?」


 俺は悲鳴をあげ、すぐさま顔を押さえつけるようにして両手で目を覆った。

 その後相野の断末魔が途絶えてから確認すると、なぜだか衣服がはだけて視線がさだまらない相野の姿があった。


「なんて(むご)いことができるんだ…」


 これが人の業か…


「じゃあ次いくわよぉ~」


 じゅるりと口元を拭うカルビさんは軽快に次に行こうとする。

 まずい、俺の予想では…

 ちらりと亀井さんを見ると、彼女いつも何か食ってるのに口元をナプキンで吹いて、ブレスケアの錠剤をバリバリ食ってる。

 このままじゃ相野が死ぬ!

 俺は咄嗟に相野の割り箸と自分の割り箸を交換した。


「じゃぁ王様誰かしらぁ~」

「あちしあちしぃ!」

「あらあらツイてるわねぇ、ムフフフフフ」

「1番と6番がポッキーゲームよ!」


 チェリーさんは全く迷いなく、番号を言う。俺が番号を確認すると、やはり相野が引いたのは6番。細工してやがる!

 割り箸をよくよく確認すると一つ大きな穴があいている。他のも確認すると、全てにばれない程度に穴があいている。

 クソが、ハメられた!


「はーい6番誰かしらぁ~」


 三人とも指定された1番は探さず、6番を探している。つまりは1番は誰かもうわかってるってことだろう。

 しかし、今回は俺が割り箸を入れ替えたので、6番を握っているのは俺だ。

 次回から別のものを使うとして、今回はどうすれば。

 相野が俺の意図に気づいて声をあげる。


「お前、さっきすりかえたのは…」

「お前一人、死なせられるかよ…」


 俺がそう言うと、相野はボロボロと涙をこぼした。


「すまねぇ、すまねぇ。俺が不甲斐ねーばかりに…」

「ほらほら、早く~6番だ~れぇ~」


 そう言いながら三人とも相野のことガン見だもんな。


「俺…です」


 俺が6番の割り箸を見せる。すると三機のドムは驚愕に彩られた。

 小声で会議をはじめる。


「あれ、なんでモブがもってるでしか?」

「わかんないわよぉ~。もしかしてすり替えたんじゃなぃ~」

「話が違う(ゴクゴク)」

「気づかれたんじゃないかしらぁ~」

「だからあちし連続でやるのはまずいっていったし」

「勘付かれた(ゲップ)」

「マーコしょうがないでし、今回はモブで我慢するでし」

「ふむ…」


 亀井さんは俺を上から下まで確認すると、一つため息をついて「しょうがない」ともらした。

 くそー、人前でげっぷする女子に妥協された。

 そして相野達と同じように俺はカルビさんとチェリーさんに頭を固定されて、無理やりポッキーを咥えさせられる。


「や、やめろぉぉぉぉ!!」


 俺が叫んだところで無駄で、全く首を動かすことはできなかった。

 相野と入江は隅っこで耳を塞ぎながら小さくなってガタガタ震えていた。


「うぉああああああああああーーーーー!!!」


 響き渡る俺の断末魔。

 亀井さんが対面のポッキーを咥え、まるでロードローラーの如く全てを粉砕しながら近づいてくる。


「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁあああああががががあああーーーーー!!!!」


 怖い、めちゃめちゃ怖い、そしてすげー早い!全く止まる気がない!正面衝突する気満々だ。妥協したんだから、今回は寸止めで終わるかと思ったが全然そんなことない!

 父さん、母さんごめんよ、俺もうそっちに行っちまうみたいだ…。


 俺が死を覚悟した瞬間唐突に扉がバンッと音をたてて開いた。

 それはうるさいことを注意しにきた店員ではなく、長い髪をして細いネクタイをしめた圧倒的な美少女。姉妹特有の切れ長の瞳を驚きにかえて目を見開いていた。


「えっ、何してるんですか!!!!」


 今まで雷火ちゃんから聞いたことのないくらいの声量だった。

 俺と亀井さん接触までわずか4センチのところで無理やり引きはがす。


「ちょ、なによこの子ぉ~」


 ドム三機がスクランブル態勢に入る。


「雷火ちゃん…」

「何してるんですか悠介さん。今日は用事があるって言ってたじゃないですか!」


 やばい嘘ついて、合コンに行ったことが最悪の結果を招いている。


「こ、これは」

「これ合コンですよね!私達にウソついてこんなに楽しそうなことして!」


 それは違う!少なくとも楽しそうのところは全力で否定したい。


「見損ないました!女の人なら誰でもいいんですね!」

「ち、違うよ!」


 まずい、かつてないほどに怒り心頭してる。そりゃそうだろ、君のためと用事があると言って、ドム三機と合コンして、キスしかかってたらそりゃ怒り狂うだろう。俺だってそうなる自信がある。


「は、話を聞いて」

「知りません!」


 ブチ切れて出ていこうとする雷火ちゃんの腕を掴むが、彼女は反射的に反対側の手ですさまじい怒りのビンタを振りぬいた。

 あまりの衝撃に俺は机の上にぶっ倒れた。


「サイッテーです!!信じられない!」

「ら、雷火ちゃん!」

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