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オタな俺とオタク少女  作者: 蟻の巣
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ワンモア

 最後のショーが終わり、企画担当から次があればまた是非来て欲しいと言ってもらえて嬉しかった。


家に帰りながらメールをチェックするとメール着信が三件入っていて、どれも同じ人物からだった。

1件目[試験メールです、届いてますか?]

二件目[まだお仕事中ですか?(*´д`*)]

三件目[ひょっとして全然違う人に届いてるとかないですよね(~ω~;)]

 段々不安になってきたようだ。そう思っているとまた一通メールが入った。

[先ほどお話させていただいた、伊達雷火と言います、三石さんの携帯で間違いないでしょうか?]

 もう顔文字入れる余裕もなくなったようだ。

[大丈夫ちゃんと届いてるよ]と送信してやると五秒もたたないうちに返事が返ってきた。

[良かった、もしかして別の人に送っちゃったかもしれないと思って沢山送っちゃいましたごめんなさい]

 この子打つのはやっ、昔のガラケーなら出来たかもしれないけど、操作がしにくいスマホでここまで打つの早い人初めてだ。

[今度またお話したいんで、チャットとか出来ないですか?(*´∀`*)]

[出来るよ、パソコンのボイスチャットソフトにチャット機能が付いてるのがあるよ]

[空イプですね、私も使ってます。携帯で通話すると通話料金高くなるんで、そっちでお話しましょう]

その後何通かメールを交わして、彼女の簡単なプロフィールを聞くことが出来た、歳は俺の一つ年下で高校一年、小学校から中学校に上がるとき機会が会って、中学時代はずっとアメリカに、他にもお父さんが厳しいや、上に姉が二人いるなど教えてもらった。

[あっ、お姉ちゃんまたキレてる(゜д゜)]

[誰かと喧嘩中?]

[滅多にないんですけどね。なんかパパが一つ上のお姉ちゃんの結婚相手を決めて、一番上のお姉ちゃんが怒り狂ってる]

[なんか複雑だね(汗)]

[帰ってきて喧嘩とかやめてほしいんですけど(゜A゜)今回は一番上のお姉ちゃんが何で怒ってるかよくわかんないんですよ(´・ω・`)]

[それは下のお姉さんの結婚相手を、勝手にお父さんが決めたからじゃないの?]

[下のお姉ちゃんはそれで了解してるんですよ、本人納得してるのに、違うお姉ちゃんが怒り狂ってるんで皆困ってます。゜(゜´Д`゜)゜タスケテー]

 なかなか悲壮感漂うメールだなと思うが、なんかこのお姉さんの内容は他人事のように思えないので不思議だ。

[すみません、いきなり家の事とか話ちゃって、話ができる第三者っていないんですよ(´;ω;`)]

[それは、友達ってことかな?]

[はい、そうなんですけど。いきなり友達とか厚かましくてすいませんm(._.)m]

[構わないよ、俺も女の子の友達はいないから嬉しい]

[本当ですか?友達いないもの同士、遊びに行きましょう、そうしましょう(*≧∀≦*)]

[男の友達は多い方なんだけどね(汗)]

「裏切り者ー(/ω\)」

 人懐っこい感じの子だ、これは相野に自慢するしかない、きっとハンカチを噛んで羨ましがる事だろう。

 そう思っていると携帯に着信音が鳴った、ディスプレイには[社畜]と書かれている。

「オヤジか」

 ディスプレイの応答ボタンをタッチする。

「もしもし、今日も残業頑張ってる親父」

「サラリーマンに定時という言葉はない。仕事が一段落して、もう一度一段落した後に誰も声がかからなかったらそこが定時だ覚えておけ、馬鹿息子」

「社畜乙」

「そんなくだらない雑談をする為に電話したんじゃない。今朝伊達さんの話をしただろ?」

「したね、やっぱり気が変わって俺になった?」

 冗談めかして言ったつもりだったが、親父には全く通じなかった。

「先方が最後にもう一度だけ、二人で話をしたいと言ってきた。その二人は当然、お前と火恋ちゃんだ」

「何それ、最後にワンチャンやるってことなの?」

「それに近いが少し違う、二人で話すのは居土のせがれも同じだ。彼は土曜、お前に予定がなければ日曜に行いたいと言ってきている」

「何だそれ?両方とデートして決めようってことなの?」

「そういうことだ、構わないか?」

「ちょっと待ってくれ、もう決着したと思ってたし、そのデートで俺は判定がひっくり返ると思えないんだよ。だからこれ以上俺を噛ませ犬にするのは勘弁してほしいんだけど」

 どう見ても結果は見えている事をもう一度やったって無駄と一番わかっているのは伊達家のはずなのに。何故なのか理由がわからないし、それに出来ることなら、もう振り回して欲しくないのが率直な意見だ。

「父さんもその通りだと思う、だから無理だと思うと伝えたんだが、伊達さんの方でもゴタゴタしているらしくてな。どうやら玲愛さんが相当ゴネてるらしい。それで玲愛さんが今回デートしてダメだったら諦めると言ってるんだと、もう本当に食事を一緒にして帰るくらいの気持ちでとらえてほしいと言ってらっしゃる。デートの費用は全て伊達さんがもつので火恋ちゃんと遊んであげてほしいと。つまりあれだ玲愛ちゃんを納得させる為のプロセスらしい。だから一食だけ付き合ってほしいって言ってきてるんだよ、剣心さんから直接かかってきて私も無下には出来ない。どうしても嫌なら断りを入れるがどうする?」

「どうするって言われてもなぁ」

 要は剣心さんと火恋先輩が決定したけど、玲愛さんが不服を申し立てて、玲愛さんを納得させる為に最後のデートをするって、これは一体誰のお見合いなんだ?

 それに今日、居土先輩に悪いって言われたし、火恋先輩にも謝罪と感謝を受けたわけだし。多分食事するって言っても火恋先輩の方が針のむしろだと思うんだが…。

「それ断ったらどうなるの?」

「剣心さんが酷い事になって、父さんが気まずい思いをする」

「じゃあ断って」

「オィイイイー!!父さんの気持ちも少し汲んでくれると嬉しいんだが」

「オヤジカッコ悪い」

「縦社会は上が絶対なんだよ!」

「いいよ、受ける」

「本当か?」

 自分で煽っておきながら、俺があっさり了承すると焦り出す親父。

「いいよ、それで玲愛さんが諦めれば丸く収まるんだろ。まぁ俺としては玲愛さんは家族で止めてくれよって感じなんだがね」

「それはそうだが。…わかった伊達さんには私から言っておく。お前も美人とデートするとどうなるかデートの予習のつもりで行ってくれ」

「了解、あぁ後デート費用は別にもたなくていいって言っといて、お金かかるところに行くつもりないから」

「本当にいいのか?それぐらい甘えてもバチは当たらないと思うぞ、それにイイカッコしたいのなら父さんが出してやってもいい」

「いいよ、初デートの費用くらいもつさ」

「お前…、惚れてまうやろーーー!」

「うるさいよ!声が野太いよ!」

 電話元で叫びやがって、しかもなんで関西弁なんだよ。

「うむ、書類はそこにおいておきたまえ。疲れてる?何を言っているんだ君は早く仕事に戻りたまえ」

 ガサガサと何か作業をしている音がする。

「営業課め、いきなり入ってきおって」

「会社でアホな叫びする方が悪い」

「とりあえずその旨は伝えておく、いくら噛ませ犬にされてるからと言って、狼になるんじゃないぞ。犬なのに狼とはこれいかにな、フハハハハハハ」

 外人みたいな親父の笑い声が聞こえてイラついたので黙って通話終了のボタンを押した。

 通話が終了すると、雷火ちゃんからメールが入っており

[なんか、お姉ちゃんとお父さん喧嘩しそうなんで止めてきます]

と返信が入っていた。

 顔文字が入ってないから切羽詰まってるんだろうな。雷火ちゃんとこも大変だな。そんなことを思いながらデートコースの検索を行う俺だった。




 翌日、学校にて居土先輩が俺の教室に来た。女子たちの黄色い悲鳴と共に現れ、三石君は何処かな?と見たらわかる位置にいるはずなのだが、クラスで一番可愛い女子に確認をとると「あそこにいるキモイのです」って言われて泣きそうになった。

「悠介くん、話もう聞いてるかな?」

 さわやかにやってきたイケメンも困惑しているようで、せっかく合格と言われた受験が実はもう一つありましたってぐらい困っている。

「聞きました、なんか二人でデート合戦しろって言ってましたね」

「ま、まぁそうだね」

「居土先輩ならむしろ得意分野じゃないんですか?」

「経験がないわけじゃないけどね」

 流石イケメン、俺は内心困り果てているのにこの余裕である。

「玲愛さんが今回のデート合戦で決定にするから、次はないみたいですよ」

「そうなのかい?それはありがたいけどね」

「親父から話聞いたんですけど、玲愛さんをなだめる為のテストだそうなんで。居土先輩はもう消化試合の気持ちでやったらいいですよ」

「そうなのかな?そうだとしても玲愛さんは僕を気に入ってないってことだから、後が恐いな」

 後というのは許嫁になってからの話だろう。うん、火恋先輩と居土先輩の恋人同士の姿を考えると欝になってきた、考えるのをやめよう。

 きっと結婚式とか呼ばれるんだろなーとか気の滅入る事を考えていると、居土先輩は爽やかに

「僕は僕の出来る事をして火恋さんを楽しませる事を考えるよ」

 流石イケメン、前向き。居土先輩は勝手に納得してお互い頑張ろうねとだけ言い残して走り去った。

「俺も悪あがきくらいするか」

 そう思い、本日は絶賛サボり中の悪友に電話をかけようとする。

「こんな相談出来るのが、こいつしかいないと言うのも辛い話だな。そう思ったがメールの最新の履歴に女の子とは思えない女の子の名前が記載されていた。

「キタ」

 俺は帰ったらチャットで聞こうと心に決め、授業に取り組んだ。




 日曜まで日がないので、一旦雷火ちゃんに、相談したいことがあるんだけどチャットしてもいい?と聞くと来週まで暇なんで全然OKですとメールが返ってきた。心強い。

 家に帰って雷火ちゃんにかいつまんで、一つ年上の先輩と遊ぶことになって、楽しませてあげたい、どうしたらいいかと尋ねると、まず男か女か聞かれて女性と答えると、露骨に機嫌が悪くなった。姉みたいな人だからというと幾分か持ち直した。

 話し合いの結果、デートコース的には地味な散歩でもいいから二人で喋る時間を多く取ることと、プレゼントとかサプライズがあると基本どんなものでも相手は喜ぶと、ただ雷火ちゃん的にはお金がかかってる物より、手間がかかってる物の方が嬉しいと、自分の事を考えながら用意してくれたんだなって思うと嬉しさ倍増とのこと。

[雷火ちゃん難しいよ、あんまり日がないから]

[じゃあ諦めてすっぽかしましょう(  ̄っ ̄)]

[雷火ちゃん、さっきから諦める方向に促しすぎだよ(汗)]

[女の子に他の女の子の喜ばせ方聞くとかホントサイテーですからねヽ(`Д´)ノ]

[すいませんでした]

[今回は本当に困ってるようなのでアドバイスしますけど(--〆)]

[雷火ちゃん愛してる!]

 何故かこの後五分程あいてから返信がきた。

[そういうこと簡単に言わないで下さい!]

[すいません気をつけます]

[いいですかさっきも言いましたけど、女の子は小さなプレゼントでも喜びます。それが例え一輪の花でも、嬉しいものですヾ(*´∀`*)ノ]

[はい]

[それが時間や手間のかかっているものなら尚更です( ゜ー゜)]

[はい]

[三石さん、料理とか出来ますか?( ゜v^ )]

[できません]

[じゃあ、それで行きましょう(・∀・)]

[できないって言ってるのに?(;゜Д゜)!]

[頑張って出来るようになって下さい( ̄∀ ̄)]

[ハードル高いよ雷火ちゃん゜(゜´Д`゜)゜]

[頑張って下さい、ちなみに私も料理出来ません( ´▽`)]

[助けはないのですか?]

[頑張って下さい、その頑張りが相手を喜ばせると思って下さい( ゜ー゜)ノ)]

「雷火ちゃん厳しいー」

 俺はパソコンの前でがっくりうなだれる。

[ありがとう、ちょっと頑張ってみるよ]

[三石さんなら、大丈夫です。きっとエックスのショーと同じくらい、いいものになります(断定]

 応援の仕方が偏っている気がするけど、ありがとうと打ち込んでおく。

「勉強からか…、間に合うかな」

 俺はチャットを終わらせると、すぐに書店に買い物に出た。

フリガナを入れていなかったのですが

主人公は三石(みついし) 悠介(ゆうすけ)です

伊達家長女は伊達(だて) 玲愛(れいあ)です

伊達家次女は伊達(だて) 火恋(かれん)です

伊達家三女は伊達(だて) 雷火(らいか)です

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