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オタな俺とオタク少女  作者: 蟻の巣
25/107

出禁

 いつまでも熱暴走で機能停止して同じ方向ばかり眺めていると、何故か廊下側からではなく、外窓からカーテンがたれてきて、そのカーテンをロープがわりにシュルシュルと雷火ちゃんが下りてきた。

 足で器用に窓を開けるとそのまま身を滑らせてきた。


「猿かお前は、どこから入ってきてるんだ」

「姉さんがドア壊すから悪いんでしょ!」


 プリプリと怒っている雷火ちゃんだが、客間の中央でショートしている俺を発見するとパッと笑顔になった。


「悠介さんがいる!」


 喜んで近づいてくる雷火ちゃんだったが、様子がおかしいことに気づいた。


「どうして悠介さん、煙吹いて意識飛びかかってるの?」


 玲愛さんはジトっとした目を火恋先輩に向ける。しかし火恋先輩は何食わぬ顔ですましているが、自身の唇をペロリとなめた。これ以上ヒートさせるはやめてほしい。


「一匹の盛った犬に襲われただけだ」


 玲愛さんは腰に手を当ててため息をついた。


「さっきまで元気だったが、使い物にならんくなったので私が説明してやる」


 玲愛さんと火恋先輩は簡潔に、写真の経緯が誤解を生んだだけだと説明してくれた。


「や、やっぱり、勘違いだったんだよね。よ、よかった~」


 ホッと胸をなでおろす雷火ちゃん。どうやら誤解がとけたようで良かった。


「二人で早とちりして、悠を避けていたのだろう?その事に関してはコイツに謝れ」

「うっ、ごめんなさい」

「すまない…」


 二人は正座して、畳に手をつき、浅く腰を曲げて謝罪した。

 ようやく熱暴走がおさまって、普通に脳が動くようになってきたので、俺も二人に誠心誠意畳に頭をつけて謝罪した。


「いや、こちらこそ誤解するような事をしてすみませんでした」

「それはこっちが事実確認をしなかったのが悪いんです、本当にごめんなさい」


 火恋先輩と雷火ちゃんはもう一度二人で頭を下げた。


「とりあえずは解決か?」


 玲愛さんが俺たちの謝罪のしあいを腕組みしながら見て、頷いた。

 しかしそこに異を唱えるように、火恋先輩が挙手する。


「何だ?」


 玲愛さんはまた何かよからぬことでも思いついたんじゃないだろうな、と言いたげな表情で火恋先輩を見る。


「やはりこれでは足りないと思う」

「足りないとは?」

「悠介君は被害者なだけで、私たちの過失の方が大きいと思うのだけど」

「そうか?コイツが余計なことしなければ…」

「それも聞けばすぐにわかったことだし、意図的に彼を避けた分私たちの方が罪は重いと思う」


 ん?この流れは…


「そうだとして、じゃあどうするんだ?」


 玲愛さんの質問はもっともだが、火恋先輩は潤んだ瞳でまたこちらを見た。


「その…やっぱり彼に罰を与えてもらうしか…」


 やっぱりか!このマゾ先輩は本当に、されるの好きすぎだろ!

 玲愛さんが半眼で抗議するような目で俺を見てくる。その目はお前のせいで妹がおかしくなっただろうと言いたげだ。

 そこで意外にも手を挙げたのは雷火ちゃんだった。


「じゃあ、今度から悠介さんが女の子と会話したらペナルティでキス一回とかどうですか?」


 どうですかって雷火ちゃん、世界には男性と同じくらい女性がいるんだよ。女性と会話せずに過ごせるわけが…、いやちょっと待てよ小学生以降あんまり女子と関わり合いがない…。思えば相野とか、男連中とばっかり会話していて、女の子と会話していない。


「あれ、悠介さん何でダメージ受けてるんですか?」

「いや、その雷火ちゃん、さすがに会話しただけでキスしてたら、一日一体何回キスすることになるか」

「そんなに女の人と話すこと多いんですか?」

「ごめんなさい、ちょっと見栄をはりました。多分一日に二、三回あるかないか程度だと思います」

「じゃあオッケーじゃ?」


 喜ぶ雷火ちゃんだったが、玲愛さんが呆れたように雷火ちゃんの頭を軽くはたいた。


「いったぁ~」

「何がオッケーだ、学生の身分でそんな爛れた関係にさせるわけないだろうが」


 今保護者の前で、女の子と会話したらキスな、なんて事を言ってるわけなんだから当然止められる。


「じゃあ休みの日はコスプレデーにするとか?」


 それはお互い得していいことだと思うが、火恋先輩は納得していないようで首を傾げた。


「それだと遊んでいるのと変わらないから、あまり面白くないのでは?」


 この人は罰に一体何を求めているんだ。


「じゃあ逆に脱いだらいいんじゃないの?」


 玲愛さんのやる気ゼロな軽はずみな発言だった。しかしその言葉を火恋先輩は逃さなかった。


「それはいい!脱ごう、下だけ」


 唐突に何かを閃いたように目を輝かせる火恋先輩。


「あの、ちょっと何言ってるかわかんないんですけど」

「あぁすまない、下着だけ脱がないか?」


 そんな軽くスポーツやらないか?みたいなノリでパンツ脱がないか?と言わないでほしい。


「とても恥ずかしくて、とてもいいと思う。その時はスカート限定にしよう」


 最近思ったんだが、火恋先輩どんどんブッ壊れてきてね?



「い、嫌よ。そんなのはしたないし、もし見られたらどうするつもりなの?」


 当然シスターから反論が上がる。


「ドキドキしないか?」

「しないわよ!」

「きっと濡」


 とうとう玲愛さんのアイアンクローが火恋先輩に炸裂した。


「いいか、火恋、冷静になれ。お前は段々自分のキャラを忘れてきている」

「いだい。だ、だってキスはさっきしたから…」

「はっ?」


 今度はメリメリと締め上げられている、火恋先輩から漏れた爆弾に雷火ちゃんが食いついた。


「ど、どういうこと?悠介さんとキスしたの?それ置物とかじゃないよね!?」


 君はお姉さんをバカにしすぎだ。パンツ脱ごうとか言い出すけど、あの人成績は学年トップなんだぞ。


「さっき盛って押し倒したんだよ」


 玲愛さんが何度目かわからないため息をつきながら、答えた。


「嘘、ズルい!私が夜になったら何回枕にキスして…あっ…」


 この姉妹は自爆属性でももっているんじゃないだろうか、それともつい言葉にでてしまうのだろうか。

 自爆したことによってか、雷火ちゃんは少し涙目になっていた。


「ええい、めんどくさい。悠、雷火にもしてやれ。減るもんじゃないだろ」


 男らしすぎますが、きっと純情や、純潔ゲージ的なものがぐんぐん下がっていくと思います。


「じゃあ次はまた私に」

「お前は黙ってろ!」


 メリメリとこめかみに食い込むアイアンクローで火恋先輩は動かなくなった。死んだんじゃないかアレ?



 そして俺と雷火ちゃんは、お互い気まずそうに視線を合わしたり逸らしたりを繰り返す。


「あの…、えっと…」

「いや…、その…」


 考えてほしい、親しい女の子とじゃあキスしよっかと言ってキスできるだろうか?

 俺には無理だ、そんな青春(りあじゅう)ポイントは溜まってないし。むしろ先ほど吸い尽くされたと言ってもいい。

 無言のまま、なかなか進まない。ちょっとだけちゅっとすれば終わりだとわかってはいるのだが、やはりそんな簡単なものではない。

 何もしていないのに顔が熱くなってきて、心臓はドッドッドと壊れたエンジンの如く、血液を顔に集めてくる。


「あ、あの、あんまり無理しなくても、いいんじゃないかな?」


 困り果てて、泣きそうになっている雷火ちゃんを見て、停戦を提案してみる。


「ダメです!悠介さんは私とはしたくないんですか?」


 可愛い女の子にキスしたくないの?と言われればしたいと言うに決まっている。しかしそれを口に出せるかどうかはまた別問題。羞恥心だとか倫理観だとか、そんな面倒なものが脳の中で欲望、本能と大戦争をおこしている。


「したいけど…」


 さすが俺の欲望と本能、あっさりと羞恥心と倫理と理性を黙らせたようだ。



「じゃあ、しましょう…」


 座っている俺に雷火ちゃんはそっと四つん這いになって、ゆっくりと近づいてくる。さながら犬や猫のような動作で、その動き一つ一つがこちらの脳を興奮させていく。

 火恋先輩の不意打ちとは違い、これからキスするぞ!と考えると、俺のライブラリにキスという引き出しが一つもなかった。いや、正確にはあったが、【名詞】キス、くちづけ、接吻=柔らかい、長い、天国、とそんな役にたたないことしか書いていなかった。

 四つん這いのまま彼女は俺の顔に自身の顔を近づけてくる。上気した頬はお互い触れ合えば火傷しそうなくらい、熱く赤い。


「し、しますよ」

「う、うん、どうぞ」


 自分から、いかないところが情けないところだ。いくら了承を得ていても、俺の体は前に進まなかった。アイアムチキンガイ。



 雷火ちゃんは目をつむり、そーっと顔を近づけてくる。しかしいくら経っても、ほんのわずかな間隔を残して、それ以上近づいてくることはなかった。

 周りからも固唾を飲んで見守られているのがわかる、玲愛さんも火恋先輩も食い入るようにこちらを見ている。だから余計に緊張してしまう。

 いつまで経ってもくっつくことのない雷火ちゃんの唇は、やがて震えだしてきて。さっきまで真っ赤だった顔も地の色が戻ってきて白くなっていた。

 俺はその泣き顔に近い顔を見て、頬を緩め、そっと間近に迫っている雷火ちゃんの体を抱きしめた。


「ふあっ!?」


 いきなり抱きしめられて驚いた雷火ちゃん。これ以上あの態勢をとらせるのは可哀想だろう。


「ごめんね、俺にもっと根性があれば雷火ちゃんにそんな顔をさせることにならなかったのにね」


 全ては根性無しの俺が悪い。まごついて、タイミングを逃し、女の子の方からしてもらうのを待つ。自分で見てヘタレだな俺と思った。

 雷火ちゃんはそのまま、まるでコアラのように、あぐらをかいている俺の膝の上に座り、自分の足を俺の腰に回してきた。


「ごめんなさい、私恥ずかしくなりすぎて、全然体が動かなくて、それで、それで…」


 俺は少し体を揺らしながら雷火ちゃんの背中をポンポンとあやすように撫でる。

 落ち着いてきたのか頬ずりして甘えるように密着してくる雷火ちゃん。


「でも、これはこれでありですね」


 ぴったりと俺の耳に口づけるように囁いた。



「姉さん、私もあれやりたい、出来ればキスしながら…」

「黙ってろ」


 盛りのついた犬は再び飼い主に黙らされた。


 どれくらいそうしていたかわからないが、すっかりご機嫌モードになった雷火ちゃんを膝の上に乗せながら、火恋先輩に向かい合った。


「まぁ、丸くおさまったと思うので今回はこれで終わりということにしませんか?」

「そうだね、残念だ…」


 言葉通り見事な落胆ぶりを見せてくれる火恋先輩。

 だがそこにご機嫌になった雷火ちゃんは続ける。


「姉さん、私いいよ」

「えっ?」

「だから、悠介さんの前なら下着脱いでも」


 この膝の上に座る可憐なオタク少女は一体何を言っているのでしょうか?


「いいのか?」

「うん…、でも家限定。もしくは悠介さんの命令限定なら外でも良い、でもそのかわり絶対悠介さんが近くにいることが条件」

「いや、もうこの話はこれで終わりにしておいた方が…」

「悠介さんに私のパンツあげます」

「ぶっ」


 雷火ちゃんと真逆の方向を向いて、俺は吹き出した。


「そのかわり脱がしてくださいね」


 と妹さんも語尾にハートマークをつけて、恐ろしいことを言い出した。俺は救いを求めるように玲愛さんと火恋先輩を見たが、火恋先輩はうっとりとした表情をしていて、玲愛さんは判断に困っているようだった。


「た、助けてください玲愛さん…」


 俺の助けを求める声を聞いて、やはりメシアは救いの手を差し出してくれた。


「お前ら、そんな危ない遊びを一体どこで。ダメだダメだ。そんなはしたないことをするな、お前ら一応お嬢様なんだからな。そんな遊び誰かに知られたら伊達が崩壊する」

「だから悠介さんがいるとこだけって言ってるじゃない、危なくなったらすぐにはくわよ」

「ああ、そうだ。姉さん偏見はいけない」


 妹二人にノーパンになりたいと主張される姉の図。なんだこれは。



「ええい、うるさい。ダメなものはダメだ」


 なかば振り切るように、語調を荒げる玲愛さん。しかし二人の妹はゴニョゴニョと小声で話し合う。


「何であんなに反対するかな?」

「あれよ、結局姉さんも仲間に入りたいのよ。のけものにされてるから…」

「あぁそういえばコスプレデートの時も結構…」


 君たち、密談というのはもう少し小声でした方が…。

 玲愛さんはというと、こめかみに怒りマークをつけて、今にも爆発しそうだった。


「お前ら!」

「じゃあ姉さんも一緒にしたらいいじゃない」

「そうだね」

「はっ?」

「はっ?」


 雷、火、玲、俺の順。意表をつかれたが何を馬鹿なと、笑い飛ばす玲愛さん。それはそうだろう。しかし妹は引き下がらない。


「実は私、姉さんが勝負パンツ何枚も持ってるの知ってるんだけど」

「あの意外と可愛いのと、紐と、穴があいているのだろう?」

「それそれ」


 おーこの妹達おそろすぃカミングアウトを始めたぞ。


「見せたいのよ、あれは絶対」

「確かに機能性はゼロだしね」


 そのへんにしておいた方がいいのではないだろうか。俺はもう玲愛さんの表情を見るのが恐くて見れない。


「お~前らぁ~!」


 これはいかん、いかんやつですよ!(迫真)


 大爆発する寸前に雷火ちゃんは玲愛さんのタイトスカートをピラっとめくった。

 当然雷火ちゃんは俺の膝の上に座っているので、玲愛さんのデルタゾーンが目の前に現れるわけで。


「黒レース、サイドはリボンの紐でとめられています。しかし黒タイツの為細部の形状がはっきりせず、タイツを脱衣後再度視認を要請します」


 俺が機械音声の如く無感情無表情で玲愛さんのはいているものについての形状と感想を漏らすと。バチコンと目から星が飛び出すようなビンタが俺の頬を襲った。


「アホか!勝手にしろ!バカ悠!」


 えっ、俺が悪いのこれ?

 激しいビンタで雷火ちゃんを膝の上から落としながら畳に崩れ落ちる俺。

 玲愛さんは肩を怒らせながら、ピシャッと障子をしめて、廊下をズンズンと歩いて行ってしまった。


「だ、大丈夫かい?」

「大丈夫です」

「ごめんなさい、姉さんならパンツぐらい見られても、それがどうしたって言うかと」


 君はお姉さんをただの危険な動物と勘違いしている。あの人は意外と乙女だ。


「お姉さんでも恥ずかしいと思う感情はあるよ。雷火ちゃんだって唐突にスカートをめくられたら恥ずかしいよね」

「はい、ごめんなさい」

「それはお姉さんに言おう」


 まぁ淡々とパンツの形状を言ってしまった俺も悪いかもしれない。

 ならどう言えばよかったのか?褒める?

 とても美しいおパンティーですね、よくお似合いのおシャンティー(おシャレなパンティー)ですよ。

 うん、殺されるな。爪を一枚一枚剥がされてから殺されるな。

 批評する?

 そのおパンティーはセクシーさの中で可愛らしさをだす乙女のようなおパンティーです。ですが、それを黒のタイツで台無しにしています。

 しかしながら玲愛さんの美しい脚線はタイツのような黒で強調されるのも事実、よってニーハイ程度のストッキングを着用されるとよろしいのではないでしょうか?

 うん、死ぬな。ストッキングを何重にも顔にかぶせられて、窒息死で殺されるな。

 ツンデレ風に?

 べ、別にそのおパンティーが可愛いから見てるわけじゃないんだからね!玲愛さんが綺麗だから…、って何にも言ってない!

 体中の穴という穴にダイナマイトを突っ込まれて無表情のまま爆破されるかもしれんね。


 何でこの姉妹は俺みたいな、ちょっとだけ頭のネジが飛んでる奴を好きになったんだろうね?今更ながら疑問になってきたよ。


「あの、大丈夫ですか?」

「いや、うん、大丈夫だよ」


 アハハと力なく笑っていると、おもむろに火恋先輩が立ち上がり、自身のロングスカートに手をかけた。


「どうしたんですか?」

「始めようかと思って?」

「なにをですか?」


 また発情したかのように、火恋先輩は頬を紅潮させて、スカートの裾をめくり上げた。


「ぶっ」


 最近吹いてばっかりだな俺。


「あの、すいません。その…見えてますのでスカートを下ろしていただけると、その精神衛生上助かると言いますか…」


 玲愛さんに負けず劣らずな、真っ白でレースをふんだんに使い、アクセントに真ん中にピンクのリボンがついた、火恋先輩のパンツが目に入ってしまう。


「その、姉さんもいなくなったことだし…ね?」


 そんなに可愛らしく、ね?と言われても困る。どうしたらいいのでしょうか。


「せっかくだから君に下着をおろしてもらおうかと…」


 ハードプレイすぎる!


「いや、それでは見えて…」


 俺がまごまごしていると、今度は雷火ちゃんまで立ち上がり、同じようにチェックのミニスカートをたくし上げた。

 た、助けて、玲愛さん!そう叫びたかったが、メシアはさっき怒らせてどこかに行ってしまったのだった。

 さすが雷火ちゃん、オタクと言えば水色の縞々だよね。うん、違うんです、そうじゃないんです。

 恥ずかしそうに二人の美少女からたくし上げをされた時、どうすればいいと言うのでしょうか?

 必死に目をそらすが、二人がたくし上げをやめる気配はない。なんなら二人共恥ずかしそうにして、それぞれ違う方向に視線を泳がせている。そんなに恥ずかしいならやめてもらって全然結構なんですが!


「これが、はいてないってやつですよね」


 そんな麻雀マンガみたいなことしなくていいんですよ。

 メシアが消えた今、これではいつまで経っても終わらない。しかし俺も男だ、やる時はやる。


「その、じゃあ、火恋先輩からでいいですか?」

「ああ、構わない、きたまえ」


 相変わらず期待に満ち溢れた返答をする火恋先輩。もし仮に火恋先輩と結婚したら、終始変態プレイに没頭しているのではないかと、今から期待に、違う、気が気でない。

 俺は火恋先輩に向き合った。正確には火恋先輩のパンツに向き合った。


「なぜ君は私のパンツを拝むんだい?」

「いえ、ただなんとなくです」


 汗ばむ手をズボンでゴシゴシと拭いながら俺はゆっくりと、火恋先輩のパンツに手をかける。

 心臓の音はもはやバンバンと爆発を繰り返すような強さで鼓動し、絶対体に酷い負担をかけていると思う。

 その様子を見る雷火ちゃんの目も真剣そのものだ。あの雷火ちゃんは後なんでスカート下ろしてもらっていいんだよ。

 そっと手をパンツにかけると俺の視界が何かに塞がれ真っ暗になった。とうとう心臓が爆発して死んだか俺と思っていたが、そうでもないらしく、なんというかこの目に当たる布の感触、コットンというかナイロンというか、まるでスカートの裏地に顔をつけているような…。


「何をしてるんだ雷火?」


 本当に不思議そうな火恋先輩の声が上がる。


「いや、さすがに見えちゃうのはまずいんじゃないかと思って」


 その配慮には痛み入る。でもね、雷火ちゃん明らかに俺の肩に乗っかってるよね。

 わかりづらいが、俺の肩に雷火ちゃんの足の感触がある、今肩車している状態だ。その状態で…


「だからって自分のスカートで彼の顔を覆わなくてもいいんじゃないか?」


 薄々そうなんじゃないかなって思ってたけど、やっぱりそうだったか。うん、多分今傍から見たら、雷火ちゃんのスカートに顔を突っ込みながら、火恋先輩のパンツを脱がしにかかってる。まさしく驚きの紳士スタイル、パリジェンヌも夢じゃないかもしれんね。

 三石冬の紳士スタイルとでも名付けようかと思ったが、この光景を誰かに見られるわけにはいかない、それこそ剣心さんに見つかればエターナルフォースブリザードの如く俺は死ぬ。


 二人の口数が唐突に少なくなった。きっと恥ずかしさで言葉もないのだろう。


「ゆ、悠介君、ちょ、ちょっと!ま…」


 後ろから見ればお尻丸出しの火恋先輩もそのままにしておくのは可哀想だ、早々に、終わらせる!

 俺はがしっと火恋先輩のパンツを握り締めた。

 ん?火恋先輩こんなにガッチリしてたかな?というかパンツの感触がおかしい、パンツの布が雑巾というかタオルというか、なんだかゴワゴワしたものにかわっている。

 ええい、雷火ちゃんも控えているんだ。一気にいく!

 俺は火恋先輩のパンツを一気にずり下げた。

 俺は一仕事終えた後のサラリーマンが居酒屋の、のれんをくぐるように雷火ちゃんのスカートを弾いた。


「これはパンツでしょうか?」

「そうだ、それは儂のフンドシだ」

「これはノーパンでしょうか」

「そうだ、それは儂のおいなりさんだ」


「ほげぇぇぇぇえぇぇぇえええええええええええええええ!!!!!!おえええええええええ!」


 俺の目の前に現れたのは剣心さんのノーパン姿だった。


 目が目が!穢れたダークマターが!汚いバベルの塔が、俺の目に!

 滅びの魔法バルスを受けた、ム○カの如く、俺は畳の上を転がり回った。


「まだだ、まだ吐く、オエエェェェェェェェェェェェェェ!!」




 しばらくのたうち回った後、火恋先輩と雷火ちゃんの三人で並んで正座して、殺されるんじゃないかと思うくらい怒られた。

 そりゃ家に帰ったら、許嫁とは言え男が自分の娘のスカートに顔を突っ込みながら、もう一人の娘のパンツを下ろそうとしてたら、そりゃキレるよね。いや、殺されても文句は言えない。

 めっちゃくちゃに怒られた後、俺はしばらくの間伊達家への出入り禁止と、学校以外での火恋先輩と雷火ちゃんの接触を禁じられた。

 玲愛さんがいればこんなことには…。その玲愛さんは怒っている剣心さんの後ろでべーっと舌をだして怒っていた。

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