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(129) 前衛戦力の模索


 食後はのどかな時間となった。山中の洞窟であるからには、歩哨は最小限でよいだろう。


 フウカとコカゲは、シャルロット配下のジライヤになにやら教えを請うているらしい。それ以外でも、勢力をまたぐ交流が進んでいるようだ。


 その流れの中で、なんとなく魔王四人が集う形となった。


「なんだか、ファイム殿がいないと寂しく感じるでござるな。反面、穏やかでござるが」


 猫耳忍者の言葉は、冗談めかした口調ではあるが、真実味が含まれている。


「東方鎮撫隊も、だいぶ揺らいでいるからな。また、飯を食いながらバカ話ができるといいんだが」


「そうでござるなあ。立地的に、苦しいでござろうからなあ」


「立地というと、中央域の魔王勢力か」


「そうなのでござるよ。まあ、境を接したからと言って、すぐになだれ込んでは来ないと思うでござるが」


「実力差は大きいんじゃないのか?」


「だからでござるよ。中央域の覇権を争っている状態で、辺境である潜龍河方面に手を出すとは考えづらいのでござる」


 アユムが首を捻って問いを発する。


「だけど、ひとまず平定されていて、作付けをしている土地はわりと有用なんじゃない? ましてや、海まで制圧すれば、ひとまず敵はいないわけだし」


「この辺りでは魔王が相争って、荒廃が進んでいることになってるのでござるよ」


 ニヤリと笑って言うからには、この猫娘が情報操作の首謀者なのだろうか。


「それでも、龍尾台はきついか」


「腕は良いにしても、魔法なしの騎士たちでござるからなあ。本格攻勢でなくとも、単独での魔王との相手はきついでござろうよ」


「うーむ」


 唸っていると、シャルロットは更に言葉を重ねてきた。


「構成のいびつさで考えれば、タクトのところも大概でござるよ」


「そうか? 甲鎧人族が前衛に回ってくれて、だいぶ安定してきたかと思ってたんだが。魔法系が薄いのは、確かなんだが」


「ダークエルフもそうでござるが、忍者が正面からの戦いの主力を担っているのは健全ではないでござるよ。暗殺者向きの者もいるでござろうに」


「コカゲ、サスケ、サイゾウといった主力は、正面向きかと思うんだが。コカゲとサスケは、サムライ方面へと進んでいるし」


「こなせているのは間違いないでござるが、厳密にはそれでも、ややケレン味のある感じでござろう。そして、三人以外となると、傾向はより強まっていくでござる」


 猫耳忍者の言葉に、アユムも頷く。


「正面戦力として万全なのは、シャルロットのところのジライヤくらいかな。他の忍者達は、確かに前衛って感じではないよね」


「確かになあ。ただ、他で前衛となるとなあ」


 鍛冶を束ねているクラフトの種族であるサイクロプスや、リザードマン、オーガなど、前衛に向きそうな生成対象は存在している。けれど、人類勢力との連携を考えると、いかにもなモンスターを主力にするのはためらわれる。


「正面戦力をどうするかもそうでござるが、主力となりきれていない忍者にも、生きる道があるのでは、との話でござる」


「具体的には?」


「暗殺者的な役割でござるな」


「暗殺は……、サスケやサイゾウでも、対応できると思うが」


「それは強襲的な暗殺でござろう。スキルのあるこの世界では、暗殺者が主戦的な役割を担う可能性もあるでござる」


 暗殺が主戦……? と考えつつ、アユムとツカサに視線を向けると、どちらもやや戸惑っているようである。


「論より証拠でござる。ちょっと、試してみてもいいでござるか?」


「ああ」


 応じた瞬間、背後から気配が殺到してきた。俺は、背中に手を回して魔剣を現出させる。いきなり、そこに手応えがあった。立ち上がって構えると、人影が闇に薄れていく。


「凌ぐのはさすがでござるな。有用性はわかってもらえたでござろうか」


「ああ。魔剣なしでは、一撃を喰らっていただろうな」


 闇の中から歩み寄ってきたのは、妙齢のくノ一だった。


「あれを防ぐとは、さすが魔王殿。ユウカゲと申します。お見知り置きいただければ」


「なに、事前の通告があっての話だからな。……乱戦の中でも、有効という話か」


 我が意を得たりとばかりに、猫耳少女が微笑む。


「なにも、平時だけが暗殺術の使いどころではござらん。正面の相手に気を取られている敵に仕掛ける手もあるでござるよ」


「なるほどな。……その観点で考えると」


 俺の脳裏に、諜報系を中心にした何人かの忍者の顔が浮かんだ。


「こうして話を持ち出してくれているからには、手ほどきしてもらえると思っていいのか」


「もちろんでござる。ここだけの話、忍者を有効に利用している勢力は少ないのでござるよ」


「それが、俺らに肩入れする理由か。……でも、アユムも勢力レベル2で忍者が生成可能になったんだよな」


「ステータスによるのか、当人の好みによるのか。まあ、シャルロットのとこに出たのは、なんかわかるんだけど。ツカサのとこは、忍者は?」


「いや、僕のところは、ほぼアンデッド系だったので」


「特殊種族は除外として、敏捷性、知性と、もしかすると日本知識もって感じか。日本知識が条件に入っていたとしたら、確かに限られそうだな」


 いずれにしても、この発想の転換は戦力強化につながってくれそうだ。コカゲやサスケも、そちらも含めた強化をしていくのもありかもしれない。そのあたりは、相談していくとしよう。


 俺達が話している間にも、周囲での交流は続いていたようで、明るい笑声が耳に届いた。



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