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(102) 派遣軍の陣容


 派遣軍は、今回は勢力ごとに分かれての構成となる。ラーシャ侯爵領での魔王討伐を求める民衆蜂起こそ挫いたものの、彼らを支援していたと思われる柱石家の二家、それに有力商人はそのままである。統一行動をして彼らを刺激する必要はないというのが、首脳会談での結論だった。


 効率だけを考えれば、前衛に適したラーシャ勢にブリッツ一味と、そこそこに機動力が発揮できる天帝騎士団に、支援、撹乱系が得意な魔王勢は、役割を分担しつつ一体として動いた方がいいだろう。それを求める声は、むしろラーシャ侯爵家のルシミナやダーリオから出ていた。


 一方で、領都を見捨てたとの世間の評価を覆したい柱石家の残り二家は、戦列を組んで臨む気満々のようだ。


 かつての、百年以上前の魔王との戦いの際には、勇者一行が先頭に立ち、ラーシャ勢らが戦列を組んで防備を固める形だったらしい。また、帝王国の侯爵となってからは、かつての味方だった神皇国勢相手に威力を発揮したそうだ。


 ただ、ゴブリン魔王タケルとベルーズ伯爵家の連合勢力との戦闘もそうだが、会戦形式以外で効果的な戦法なのかどうかは、やや疑問である。そして、「魔王オンライン」出身の召喚魔王達は、会戦を挑んでくる可能性は低いようにも思われた。


 戦列至上主義を奉じているように見えたダーリオは、状況に応じて他の戦法も使えばいいと割り切っている。実戦経験が彼の考えを変容させたのだろう。けれど、他の者達はそうではないのだった。


 侯爵の弟二人に味方していた者達は、ベルーズ伯爵領への派遣組を除けば、実際のところ負けてはいないのである。そんな彼らに意識変革を求めるのは、無理があるのかもしれない。


 エスフィール卿は、そのあたりは割り切っているのだろう。彼らだけで好きにさせて、戦力になれば良し、負けるならそれもよしとの考え方のようだ。さすがに、味方の足元に穴を掘る気はないようだが。


 諸侯の長ともなると、戦力の最大化を図ればいいなんて単純な思考では済まされないのだろう。基本的に命令には従ってくれる生成配下主体の俺の勢力とは、苦労が段違いのようだ。新作の魔王バーガーでも差し入れてやろうか。


 ラーシャ家の戦列以外の戦力は、柱石家出身のルシミナ、ダーリオと、従卒出身ながら少女侯爵の信頼が厚いアクシオムらが率いる形となる。ダーリオは自家の配下を率いて、戦列要素を残しつつも遊撃的に動く覚悟のようだ。戦力が整っている二つの柱石家に合流すると、雑に扱われかねないとの懸念もあるのだろう。


 天帝騎士団が本隊とジオニル率いる別働隊とに分かれるのも、なかなか深い事情があるようだ。教会内の貴族階級的存在に属するジオニルやシュクリーファらと、一般教徒出身のファイムらとでは、立場的な確執めいたものが存在し、さらに亜人や魔物を忌避する純血派と呼ばれる思想への濃淡が合わさって、ややこしくなっているとか。


 平時ならば隠されていた諸々が噴出しており、一方で出身を越えて旗印を選ぶ者も出て、複雑化しているようだ。先日のジオニルが率いた霧元原出兵に参加した中からは、指揮ぶりや救護にあたった亜人への対応などから、ファイムの下に鞍替えを希望する者も少なくなかったようだ。いい傾向に思えるが、ジオニルらが先鋭化する危惧もある。


 いずれにしても、今回は主にファイムが率いる主力組が共闘相手となるだろう。


 その点、ブリッツ一味は平穏で、年若い勇者の卵をマザック、ツェルムらが支える形になっている。


 ルシミナらと同様に、合流こそしないまでも連携はできそうだ。なにしろ相手となるのは、独力で勢力を維持している魔王勢である。自衛のためにも、そうせざるを得ないのだった。


 ブンターワルトの魔王勢力……、いや、「勇者フウカとその仲間たち」としては、本拠の周囲に敵勢力は見当たらないことから、山越え強襲対応は考えるにしても、主力の投入が可能となる。


 近接戦力はコカゲに主将を任せ、アユムに補佐してもらう形とした。支援系はセルリアがまとめ、補佐役と魔法系のまとめをルージュに担当させる。遊撃・偵察は全体としてサスケが率いて、特に偵察方面はモノミがまとめる形とした。


 本陣にはフウカ、ソフィリア、トモカを置いて、俺の補佐をしつつ遊撃的に活動してもらう。また、ペリュトンはフウカと離れがたいようだし、光と闇の妖精であるヒナタとホシカゲも同行を表明したので、本陣組となった。


 本拠である森林ダンジョンの守将は、サイゾウに任せる形とした。本来なら諜報、遊撃方面への参加が望ましい人材なのだが、軍事面のみならず全体への目配りに加えて、サトミと連携しての内政面での仕切りも期待できるので、今回はやむを得ない。


 補佐役には、ダークエルフのシェイド、サイクロプスのクラフトと、内政方面で実績を積み上げてきている魅了魔法の使い手セイヤを付ける。


 本拠の防衛や内政面については、各亜人の長も連携してくれる。元々は旧ベルーズ伯爵領からの避難組の彼らだが、かつての集落に戻ったのはわずかで、ほとんどはブンターワルト周辺を当面の居住地と決めたようだ。他に安住の地も見当たらないので、防衛も発展も一蓮托生状態なのだった。


 エルフ系では、シューティア、キュアラが率いる面々が支援系に参加している。ドワーフからは手練れが近接隊に組み込まれ、また、工作隊として参加する者も多かった。


 こうして並べてみると、新たな名が出てきていないが、有望な面々は中級指揮官として活動してもらっている。また、統率向きでない者もいるため、そちらには前線での活躍を期待している。


 候領都ヴォイムに残るエスフィール卿の近くには、家宰に任命されてぼやき魔と化しているらしい「なまくら刃」のシャルフィスと、ルシミナの婚約者として柱石家を代表する立場を得たエクシュラ、それに諜報系の束ね役としてのジードが付き従う形となった。ジードは、俺との脳内通話での連絡役としての意味合いもあるものの、すっかりエスフィール卿のところの子になりつつある。


 まあ、戦列主義になじめない柱石家の当主ルシミナは、出戦時にはほぼ俺に取られているのだから、おあいこだと言われてしまいそうだが。


 軍備は整い、進軍が始められることになった。ひとまずの目的は、東方司教ボルネイア猊下の帰還の護衛と、神聖教会領の防衛になる。さて、敵となるのは勇者なのか、魔王たちなのか。


 そうそう、シャルロットの忍群も参加してくれる流れとなった。今回も天帝騎士団との連携実績を作って、帝王国系諸侯へのアピール材料にするんだと張り切っていたので、一定の期待はしてもいいだろう。



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