表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロノシス  作者: 見渡せば空
1/1

〜平凡な日常にさよならを〜

初投稿となります。見渡せば空、といいます。

クオリティに妥協したくないので、更新は週1回または2回でやっていこうと思います。

読んでくださった方がいたら、感想を頂けると嬉しいです。

小説家になるのが夢でした。その第一歩を踏み出したく、投稿させていただきました。

どうぞ、宜しくお願いします。

 


『次元断裂の発生を確認···セントラルとの繫がりが絶たれました。セクターへの対処が間に合いません。存在の維持を優先させ、コードLAGUNAを実行します』




――――――――――――――――――――――――――――――――――





 ピピピッ、ピピピピッ、ピッー


 部屋にアラームの音が響く。

 半ば強引に意識を覚醒させられた俺は、重いまぶたを擦りながら、耳元のデバイスに声をかけた。

「起きたよ、ミラ」

 その言葉に反応してアラームが止んだ。次いで女性の声で返事が返ってくる。

「おはようございます湊くん。今日はいよいよ入学式ですね」

「そだな」

 俺は月野湊。15歳。 特にこれといった取り柄はないけど、ゲームのことなら少しは詳しい。いわゆるヲタクだ。

 返事の声の主は、左耳につけているピアス型のデバイス"ミラ"である。今から約20年前に開発され、それまで普及していたスマートフォンに取って代わった。

 デバイスを装着すると、自動的に脳との間で信号がやり取りされる。その後、ミラが視覚野にアクセスすることで、それまで平面で見えていた電子情報が立体的に見えるようになる。

 ミラのアクセスは視覚だけでなく、所有者の五感すべてに及ぶ。

 当初、ミラによる脳への干渉を危険視する声が多数あがった。しかし、開発者である進藤博士は、世論には一切耳を貸さず、彼の会社〈formula〉は、ミラを一般向けに発売した。

 フォーミュラは、ミラを介した様々なサービスを続けざまに開発した。脳への干渉が可能にしたのは、電子情報の立体化をはじめ、アルコール依存症の改善などの医療革新、視覚や聴覚の補助による日常生活の円滑化並びに目や耳の障害のクリア、立体映像を利用した新しい芸術の誕生など、利用者の生活を豊かにする娯楽の発展。今や生活のすべてにミラが欠かせないレベルになっている。

 だが、それらはすべて、あるアプリを開発する途上の()()()()()()()()

 フォーミュラが開発したそのアプリの名は"クロノシス"。

 進藤博士は、インタビューで

「私は、クロノシスのためにミラを造ったんだ。このアプリには私の全知識がつまっている。既知を砕き、世界の常識を塗り替える程の叡智がね。昔から、こんなゲームがやりたかったんだ」

と語っている。

 副産物扱いはともかく、生活する上でミラが便利であることに変わりはない。ゲームやラノベでよくある、電脳の世界に入りこんだかのような臨場感が味わえるし、障害がある人たちの補助や身分証、連絡手段など、活躍の幅が広いからな。

 俺を起こしてくれたみたいに、ミラに搭載された超高性能AIが、家族あるいは恋人のように様々な場面で支えてくれる。彼女いたことないからわかんないけど。てか、俺の人生ガチャには彼女というアイテムは実装されてないんじゃなかろうか。

 ベッドから降り 洗面所に向かいながら 俺はミラに尋ねた。

「 入学式って何時からだっけ?」

『 9時からです。 新入生の登校時刻はその少し前の8時30分までです。』

 この通り、ミラのAIはこちらの意図を推察して返事をくれる。持ち主に合わせて成長するらしく、AIの対応の仕方をみれば、その人の本性が分かるといわれている。

 顔を洗い、正面の鏡に映った自分の顔を眺め、ため息をついた。

 客観的に見て、目鼻立ちは整っている方だと思うけど、同級生いわく、中性的で、長い髪と低い身長が相まって、女子にしか見えないそうだ。髪を切れば変わるかもしれないが、母さんが綺麗と言ってくれた白銀色の髪を切りたくないので、現状に甘んじている。

 歯を磨いてリビングに入り、棚からカップヌードルのシーフード味を取り出した。大好物でほぼ毎日食べている。その味もさることながら、3分で食べられる効率の良さは忙しい日々を送る現代人向きと言える。

 「一人暮らしの役得だなぁ」

 そう一人暮らし!なんとも甘美な響きである。俺は今、地元を離れ、高校進学を機に一人暮らしをしている。引っ越してきたのは一昨日だから、まだ慣れないけど。実家は岩手県盛岡市だが、俺が今住んでいるのは、青森県八戸市にあるマンションだ。地元で進学という道もあったが、家を出て自由を謳歌したい一心で両親を説得し、家賃及び生活費をこっちでの生活が落ち着くまで負担してもらう約束も取り付けた。

 そういう訳で、この2日間、俺は自堕落を貪った。朝起きてゲームして、ご飯食べてゲームして、昼寝をしてゲームして……。

 で、気が付いたら入学式当日になっていた。

 何で何事も初日ってナーバスになるんだろう。もう部屋にいてゲームしてるだけで良いんじゃないかな?ダメ?ですよね…

 「ミラ、何か面白いニュースある?」

 『"クロノシス、新カード追加!PV公開中!"だそうです。PVを再生しますか?』

 「後で見るよ。他には?」

 『では、"皆既日食まであと9日。20年ぶりに観測なるか?"などはどうですか?』

 「お〜面白そう。流してくれ」

 目の前で映像が流れる。正確に言うと、ミラから脳に直接情報が送られ、目の前で映像が流れている()()()()()()

 リポーターの話では、9日後の正午過ぎに皆既日食が見られるらしい。20年前に観測されたときは全国的に雨が降っていて、地上では綺麗に観測できなかったそうだ。今回の皆既日食はNASAの予想よりも3年以上早いのだそうだ。

 「9日後の正午か。見れるかな?」

 普段なら、なんとか流星群とかのニュースを見ても何とも思わないのに、なぜかこのニュースには惹かれた。

 おっとそうだ。我が朝ごはんがそろそろ食べどきではないか。

 「いただきます!」

 いつもは少食なのにカップ麺だと3個4個と食べたくなるのはなぜだろう。太りたくないから我慢するのが大変で困る……

 夢中で完食し、片付けて寝室に戻り、制服に着替えた。

 「バスの時間って何時?」

 『午前7時40分です。現在7時22分ですので、そろそろ出発された方が宜しいかと』

 そう言って最寄りのバス停までのルートを表示してくれるミラ。本当に気の利くヤツである。

 俺が住んでいるこのマンションの名前はユグドラシル、通称ユグドラと呼ばれている。八戸市の中でも、ここ数年で開発が進んだ"水晶地区(クォーツエリア)"にあり、大型ショッピングモールが併設されたマンション兼商業施設である。レストランや総合病院、映画館にゲームセンターまで揃っている。そして、ユグドラの30階より上はVIPフロアと呼ばれており、専用のカードキーを持っていないと、足を踏み入れることさえ出来ない。俺には縁はなさそうだ。

 俺の部屋は18階。それでも一般的なマンションよりは家賃が高めなのだが、ちょうど良いタイミングで臨時収入が入ったため、両親が折れてくれた。引っ越すにあたり厳しいお言葉はたくさん頂戴したが。

 エレベーターで一階まで降り、マンション前のバス停に着いたが、まだ10分近く時間があるな。

 「ミラ、さっき言ってたPV、見せてくれ」

 『了解しました』

 ーーー夕暮れの空を飛ぶ紅の竜、その視線が捉えるのは、前方から襲い来る悪魔のような姿をした敵。その更に後方には、3対6枚の翼を広げた天使?がいた。その翼はアメジストのような輝きを放っている。その美しい天使は、竜と悪魔の戦いを眺めていたが、ふと、物憂げな瞳で上を見上げた。天使の視線を追うように視界が切り替わり、映し出されたのは大きな満月ーーー

 そこでPVは終わった。この映像から考えると、ドラゴン系、悪魔系、天使系のカードが強化されるのかな?最後の満月はどんな意味があるんだろう。

 クロノシス。今や毎年世界大会が開催され、多額の賞金と様々な特典が用意されている「プロリーグ」も設立され、強ければクロノシス1本で生きていける。対戦型カードゲームとしてだけでなく、夢を掴むための生き方として、全世界の人々に親しまれている。

 そして、最大の特徴が、痛覚野へのアクセスだ。数あるアプリの中で、"痛み"を感じるのはクロノシスだけだ。他のアプリでは、法律によって禁じられている。クロノシスにのみ許可が降りたのは、ゲーム内での痛みを、現実の身体と切り離すことに成功したからだ。つまり、対戦中に感じる痛みはゲームをしているときだけのもの、ということだ。この特許技術により、安心して遊ぶことが可能となったのだ。これがないと、ゲーム内のダメージが、現実の身体に還元される事態になってしまうからだ。

 ただ、精神面を考慮し、クロノシスには年齢制限が設けられていて、プレイ可能になるのは高校入学または満16歳であること、このどちらかの条件を満たしている人しか、クロノシスのデータをインストールできないように、プロテクトがかかっている。

 今日は入学式。つまり俺は、やっと今日からクロノシスを始めることができるんだ。とはいえ、インストールが可能になるのは、入学式後のホームルームで権限を付与されてかららしい。もう少しの辛抱だ。

 現在、クロノシスのプレイ人口は日本だけでも3000万人を超え、世界でみれば、30億人とも40億人とも言われている。

 最近では高校の必修科目になったくらいだ。開発元の進藤博士が、内閣にかけあったらしい。すさまじい熱意だな。

 俺もたまに試合を観たりするが、ルールはうろ覚えだったりする。ルールがわからない、いわゆるライトなユーザーでも楽しめるのが、クロノシスのうりだ。巨大なドラゴンや騎士が戦っているのを観るだけでも子供たちは大はしゃぎだ。

 そんなわけで、今日のホームルームめちゃくちゃ楽しみだ!

 ん?足に何か当たった。下を見ると、1匹のネコがいた。クロネコだ。俺の右足のつま先にちょこんと前足をのせてこちらを見上げている。

 「可愛いなぁ。おいで」

 そう言って俺が抱っこすると、ネコも嬉しそうに身を寄せてきた。毛並みも綺麗で健康的な様子からすると、最近まで誰かに飼われてたのかな?首輪がないから野良だろうし。膝の上に乗せて優しく撫でると、気持ち良さそうににゃあ、と鳴いた。なんだよこれ、可愛すぎるだろ!

 「そのネコ、キミの?すっごく可愛いね」

 すぐ後ろから声が聞こえて振り返ると、俺と同じ学校の制服を着た女の子が立っていた。

 「いや、ここに座ってたら寄ってきて懐かれたんだ」

 身長は俺と同じかちょっと低いくらい。髪は全体的にエメラルドグリーンで、毛先に向けて色が濃くなっている。瞳は真紅で整った顔立ちをより際立たせている。凛々しい感じもするが、その柔和な表情が全体の印象を和らげている。

 ぶっちゃけ、アニメの中から飛び出してきたような美少女だった。

 「俺月野湊っていいます。北高の新入生であってる?」

 「合ってる合ってる。水鏡明希です。えと、月野くんもユグドラ?」

 「うん。一人暮らしだけどね。」

 「えぇ!?高校生で一人暮らしってすごいね!私料理とかできないから絶対無理だよ。も、もしかして…VIP?」

 「いやいや。部屋は18階。家が遠いから引っ越してきただけだよ。」

 「そっか〜。でもすごいよ。一人だと何かと大変だろうし、困ったことがあったら相談してね。私の家20階だから近いし。そだ、連絡先交換しようよ!」

 「ありがとう、助かるよ。困ったら頼む」

 抱っこしていたネコを足元に降ろして連絡先を交換していたらバスが来た。

 ネコが寂しそうに俺を見上げているので、しゃがんでネコに顔を近づけ、鼻と鼻をちょん、と当てた。

 「またな。道路に飛び出しちゃダメだぞ」

 そう言って頭を撫でた。目を細めて気持ち良さそうにしているのが超可愛い。

 名残り惜しさを感じつつも立ち上がって、水鏡と一緒にバスに乗り込んだ。

 

 

私の作品を読んでくださってありがとうございます。

今後更新する作品も読んでくださると嬉しいです。

更新は土日がメインになると思いますので、どうか宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ