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心のヒストリー【現在推敲中】  作者: 西影
第1章 心峰高校
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009 別に忘れてたわけじゃ……

 集中していたせいか時間が早く流れる。最後の見直しを終えると、急に始まった復習テストの終わりを告げるチャイムが鳴った。


 ふぅ、と緊張が解けて息が零れる。試験内容は心峰高校の入試問題に似ていた。というよりも数学に至っては数値だけが変えられた問題だったので手応えはある。


 私は最後尾なので前の人たちの解答用紙を集め始めた。ほとんどの人は解答欄の答えが一致している。空欄や違う答えもあったが、その量は少ない。


 解答用紙を集めていると、周りからいろいろな声が聞こえてきた。みんなも私と同じように手応えがあるようだ。


 中にはヤバイと言ってる人もいたが、絶望してる顔ではない。何かど忘れをしたぐらいだろう。


 試験官役の先生が教室を出るとすぐに高橋先生が入ってくる。すると……


「どうして今日が復習テストって教えてくれなかったんですか!?」

「知っていたら昨日も勉強してたのに」


 数人の生徒が先生の近くに群がった。


「うん、とりあえず終礼するから一旦席に戻ってね」


 それに高橋先生は動じず、数人からの苦情を受けながらクラス全体に聞こえるほどの声で言う。


 そうして先生のもとにいた数人の生徒は席に戻っていった。


「取り敢えず復習テストご苦労様。そして今回、復習テストのことを言わなかったのには理由があるんだ」


 周囲がざわつく。当然だ。テストを予告しない教師なんて聞いたことがない。


「もちろん言い忘れていたとかじゃないよ。私は君たちの本当の実力を知りたかったんだ。付け焼き刃の知識じゃなくてね。だから一、二組の生徒にはこの事を伝えてない。これは……」


――ガラガラ!!


 先生の話の途中でいきなりドアが開いた。そこから一人の男性が入ってくる。歴史の教師で二組の担任でもある藤原(ふじわら)先生だ。藤原先生は高橋先生に近付いて言った。


「どうして二組の生徒たちに復習テストのことを知らせてあげなかったのですか?」

「そ、それは……」


 高橋先生は戸惑うように言葉が詰まる。まるでミスが指摘されたかのように。


「復習テストは成績には含まれませんし、二組は優秀ですので壊滅的な点数になったような生徒の報告はありません。ですが次回から……いや、今後こういうことが起きないように注意してくださいね」

「はい、すみません」


 高橋先生が頭を下げると藤原先生は教室を出ていく。高橋先生は胸に手を当てて息を吐いた。そして私たちの方向に向き直る。


「と、取り敢えず復習テストの話はこれで終わりです。来週月曜日のオリエンテーションに関係するプリントを二枚配っておきます。一枚は提出期限が今週の土曜日なので気を付けてください。それでは終礼を終わります!」


 早口で話しながらプリントを前列に配り終わった瞬間、高橋先生は教室を飛び出した。


「あっ! 逃げた」


 誰かが発したその一言で、すぐに何人かの生徒が教室を飛び出す。


「逃がすかぁ!!」


 廊下で叫んでいる声が教室内までハッキリと聞こえてきた。クラスで笑い声が生まれる。


 私も少し笑い、渡された二枚のプリントに視線を落とした。


 そのプリントはしおりと、班を決めるプリントだった。班は他クラスの人でもよくて自分含めて男女ともに二人の四人構成。


 クラスは違っていてもいいんだ。じゃあやっぱり……。


「翔を誘おうかな……」

「翔ってだぁれ?」

「翔はね……って佐々木さん!?」


 独り言を聞かれた恥ずかしさで頬が火照る。


「翔はただの幼馴染ってだけだからね!!」

「なんでそんな必死に? まぁそれは別によくて、翔って人を誘ってもいいから同じ班になろうよ」

「……うん。いいよ。――あ、でも……」


 班の女子が二人ってことは宮野さんが余ってしまう。


「あの、宮野さ……」

「わたしのことはお気になさらず。他のクラスの人を誘いますので」


 宮野さんは教室を出ていく。それを見た佐々木さんは頬をかいた。


「ちょっと悪いことしちゃったかな。……それにしても望月さんはどうして頬が赤いの?」

「そ、それは……別に何でもない」

「ふ~ん……」

「な、何?」

「恋ってやつかな〜」

「何でもないって言ってるじゃん!!」


 私は逃げるように教室を飛び出す。廊下にはいつも通り翔が待ってくれていた。私に気付いた翔は歩み寄って来る。


「それじゃあ帰ろ……って結月大丈夫か? ちょっと頬が赤いぞ」

「何でもない」

「本当に大丈夫か?」


 翔の手が私に近づいてくる。そして、私の額に翔の手が置かれた。


 鼓動が速くなるのを感じる。体が熱い……。


「さっきよりも赤くなった気がするんだが……熱はない……かな?」

「だ、だだだ……大丈夫って言ってるじゃん! 早く帰ろうよ」

「そうそう、早く帰りましょ」

「佐々木さんの言うとおりだよ」


 なぜか横に佐々木さんがいたが気にせず歩きだす。


「えっと……翔、オリエンテーションで一緒の班にならない?」

「いいぜ、俺もそのつもりだったしな。ってことは隣の女子はオリエンテーションの班メンバーか?」

「うん! 初めまして、私は佐々木 華と言います。いつも望月さんにはお世話になってます」

「俺は如月 翔だ。よろしくな」


 その日は三人で会話しながら帰った。多分、これからは佐々木さんとも一緒に帰ることになるだろう。


 久々に翔以外の人とも帰ったので少し嬉しい反面、少し怖く思ってしまうのだった……。

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