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心のヒストリー【現在推敲中】  作者: 西影
第6章 スペル
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088 友達の家

 一度家に帰り、泊まる準備をしてきた私は華の家の前にいる……のだが……。


「こ、ここが華のマンション?」


 チャットアプリで知らされた住所を思わず二度見してしまう。


 私の目の前にはタワーマンションがそびえ立っていた。宮野さんと荒川くんのマンションとは高さがまるで違う。


 こんなところに私が入っていいのだろうか?


 思わず入口付近で上ばかり見上げてしまう。あれ? 何だかマンションが空を貫通してるように見えてきた……。


 そこでスマホが鳴り、意識が戻される。私はすぐにスワイプして通話を始めた。


「もしもし……」

「もしもし、もうそろそろ着いたんじゃない?」

「あ、えぇと……着いたというか、着いてないというか……」

「ん? どっちなの?」


 私は目の前にあるタワーマンションの見た目や、周りの建物を言っていく。それを華はうん、うんと頷くように声を出し……やがて告げた。


「やっぱりあたしのマンションの前だよ。今迎えに行くから待ってて」


 そこで通話は途切れた。私は忙しそうにスマホを見たり、髪を触ったりして華が来るのを待つ。


 ……早く来ないかなぁ。


 そう思っているうちにエレベーターから華が降りてきた。自動ドアが開いて、華が私の腕を掴む。


「いらっしゃい! ほら、入って入って!」

「お、お邪魔します」


 ロビーが広く、キョロキョロと辺りを見渡す。イスなども置かれており、まるでホテルのように感じた。


 華はボタンを押してエレベーターのドアを開けると慣れた手つきで自分の部屋のある階を押す。


 するとゆっくりと上昇し始めた。それに安堵を覚え、華にいつもの調子で話す。


「どうせ部屋まで向かうんだから、わざわざ迎えに来なくて良かったのに」

「まぁまぁ、来客はそういうの気にしなくていいんだよ」


 何だかいつもより華のテンションが高い気がする。それに声だっていつもより陽気だし……もしかして?


「華? もしかして楽しみにしてた?」

「ん〜……まぁね。まぁまぁ楽しみだったよ」

「まぁまぁ?」


 言いながら左目に着けてある眼帯に手をかける。それを見た華は小さくため息を吐いた。


「ゆづ、それせこい」

「ねぇ、華はお泊り会楽しみにしてた?」

「……うん、結構」

「結構?」

「もぉいいじゃん! 楽しみにして何が悪いのよ!」

「あはは、ごめんごめん。つい、いつもの仕返しにね?」


 手を顔の前で合わせて謝る。そこで華が笑いだした。私もつられて笑ってしまう。


「あ〜おかし……いつもはあたしがからかってるのに」

「たまには交代してもいいんじゃない?」

「まぁ、たまには……ね。っと着いた」


 ちょうどエレベーターが止まり、私たちは降りる。私は華に付いていき、部屋に入った。


「ようこそ! 我がマイホームへ!」

「お邪魔しまーす」


 玄関を通り、リビングに辿り着く。そこには本当にテレビがない。……がそれ以外は普通だ。少し本棚が多く感じるぐらい。


「本当にテレビないんだ」

「まぁ、今時はパソコンで色々見れるしねぇ」


 華は話しながらコップを二つ机に置き、冷蔵庫からお茶を取り出す。私はイスに座ると改めてリビングを見渡した。


「にしても本当に広いね。ひとり暮らしっていうより一つの家族が住めるぐらい」

「そーなんだよね。あたしの親が結構心配性っていうか、あたしに何かあった時に一緒に住めるように……って。ほんと、お金の無駄遣いというか何というか……」

「無駄っていうわけじゃないと思うけどな。いい親じゃん。そんなに心配してくれるなんて」

「お母さんはまぁ分かるけど、お父さんが言ってると何だかキモいと言うか……分かんない?」


 イスに座った華が私に問いかける。それを私は自然に答えた。


「んー……あたしお父さんいないし分かんないな」

「いないって……他界ってこと?」


 申し訳なさそうに言ってくる華。あれ? まだ話してなかったっけ?


「うん。物心付く前にね。だから別に大丈夫だよ」

「そっか……なら良かった」


 少し沈黙が辺りを支配する。私はこの空気が嫌いなので、早速話題を変えた。


「そういえば気になってたんだけど、アレ何?」


 私が指差した方向には何やらマットと小さな車輪? みたいなものが置いてある。


 それを見た華は「アレね」の言って立ち上がった。


「これは腹筋ローラーだよ。こうやって使うんだ」


 華はマットにの上に立つと前屈をするようにしてローラーのグリップ部分を持って前に倒していく。そしてある程度伸ばすと元に戻った。


「とまぁ、こんな感じ。これを週三、一〇回三セットしてるんだ」

「ふうん。一〇回だけでいいんだ」


 見た感じあまり辛そうに見えなかった。それで腹筋を鍛えれるなら、楽なのではないだろうか。


「一〇回だけ……ね? 分かった、それじゃああたしがやったみたいにしてみて」

「うん、分かった」


 意気揚々と立ち上がると華が持っているローラーを受け取る。そして先程華がやってみせたように前へ押して、元に戻そうとする……のだが……。


「う、ぅぅぅ……」

「あれれぇ? ゆづ? 全然戻って来れてないよぉ〜?」


 その場で静止するので精一杯だった。戻そうと腕に力を加えても全然戻れない。というか、段々と前に進んでるような……。


「う、うぅぅ……もう……無理……」


 腕がプルプルと震え、お腹も少しずつ痛くなってきた。これだけで腹筋が鍛えられてる気がしなくもない。


 そしてもう耐えられず、ローラーが前に進みバタンと倒れてしまった。


「はぁ、はぁ、シンドイ……」

「全然楽じゃないでしょ?」

「うん、でも本当に楽そうに見えたんだもん」

「そりゃああたしは筋トレを続けてるからね。腹筋以外もちゃんとしてるよ。毎朝ランニングしてるし」

「私の家に来る前に?」

「そりゃあね。まぁ旅行中は休んだけど」


 華の運動神経はここから来てたのか。てっきり生まれつきだと思ってた。ちゃんとした努力家だったんだ。


「どうしたの? あたしの顔なんか見て」

「いや、何でもないよ。それより暇だけどどうしようか?」

「そうだねぇ。奏は後四〇分以上は来ないし……今のうちに夕食の買い出しに行こうか」

「分かった。ちなみに何作るの?」

「普唐揚げでも作ろうと思うよ。簡単で美味しいし」

「唐揚げかぁ。久々に食べるなぁ」

「それじゃあ行こっか。ついでにお菓子も買って帰ろ」


 華はサイフとエコバッグを持つと電気を消し始める。私はサイフとスマホを持って先に玄関に向かうのだった。

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