086 難儀な性格
結局、あれから部屋に戻った私はベッドの上で横たわっていた。
誰もいない部屋なのに眼帯を着ける。不安になれば左目に着いている眼帯を触って存在感を確かめ、また少し時間が経てば眼帯に触る。
そんな動作をずっと繰り返していた。今は眼帯があることで不思議と安心感を湧いてくる。だけど……。
「今日は学校行きたくないなぁ」
いや、正確に言うならば翔に会いたくない。いつもは会いたいと思う。でも……今日は眼を見られたばかりで、少し怖かった。
今日はお母さんが朝早くに出て行ったから、私は学校を休むことができる。もういっそのこと休もうか?
家に帰ってからは食欲もないし、少し体調が悪い気がする。だったら体調不良でもいいんじゃないかな。
そんなことを考えているとピンポーンとインターホンの音が鳴り響いた。窓から気付かれないように外を確認する。
インターホンを鳴らしたのは華だった。いつものように私を迎えに来てくれたのだろう。
……どうしよ、出ようか、出ないか……。
窓から見える華を見ながら考えている。すると目があってしまった。……あ。
刹那、鳴り響く私のスマホ。恐る恐る画面を確認すると、やはり華だった。私は恐る恐る通話に応じる。
「も、もしもし?」
「もしもし。ゆづ、今何してるの?」
「あ、ええと……今準備してるところだったんだ」
「準備? 珍しいね。いつもは終わらせてるのに」
「あはは、昨日疲れたからかな」
言いながらカバンを肩にかける私。やっぱり私は休めそうになかった。
昔から変に正義感が強い私はズル休みをしたことがない。だけどこれまで何度かしようと思ったことはある。
でも、出来なかった。休もうと思っても気が落ち着かなくて、最終的には学校に行っているのだ。
本当に……難儀な性格だよ。これもお父さんの子供……だからなのかな。
ゆっくりとした足取りで階段を降りるとそのまま玄関に向かう。そして、扉を押し開けた。
「おはよう、華」
「ゆづ! よかったぁぁ。今日は学校休むのかと思ったよ」
「そんな訳ないじゃん。ほら、行こ?」
私たちはいつも通り如月家の前で足を止める。私はインターホンに指を置くとそのまま押そうとした。
でも指が動かない。これを押したら翔が出てきてしまう。そう思うとつい、押すのを躊躇ってしまった。
「ゆづ?」
後ろで華が私を心配して声を上げる。
ヤバイ。そろそろ押さないと……。
意を決してインターホンを押そうとしたその瞬間、玄関のドアが開いた。中から当然というように翔が出てくる。
「お、もう来てたのか。インターホン鳴らないから寝坊してるのかと思ったよ」
私の様子も知らずに、いつものように隣に立つ翔。私はその場で動くことができなかった。心臓がバクバクと激しく動く。
「結月、そんなとこで突っ立ってどうした?」
私の肩に手を乗せられる。それを反射的に弾いてしまった。
「結月……?」
「あ、ご、ごめん」
すぐに謝って華の隣に足を進める。いつもは私を挟んで翔と華の二人がいるのに、今日は華を私と翔が挟む感じになった。
それからは会話もなくただひたすら歩く。途中、神崎くんが合流して翔と話すけど、私はずっと無言だった。
私に気を使ってか、私に話が振られない。神崎くんも途中合流だったのに、流れに合わせて私以外と話していた。
だけど、そうなると居心地が悪くなってしまう。私一人が話していなくて、いつもより雰囲気も悪いように感じた。




