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心のヒストリー【現在推敲中】  作者: 西影
第6章 スペル
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78 参加種目

「テストが終わって早速ですが、体育祭に出る種目を選んでいきたいと思います!」


 HRで先生が声を上げる。その声を聞いた瞬間、私は思わずため息を零した。ついにそれが来てしまったのか……。


 私は運動音痴だ。それ故に体育祭には嫌な思い出しかない。競争ではいつも最下位だし、私のチームが勝ったことは1度もない。


 中学の頃、雨で体育祭が中止になった時はどれほど神を讃えたか。近くの神社に500円玉を入れたのは今となっては良い思い出だ。


「それじゃあ進行を……」


 先生の声に反応して井上さんと田中くんが席を立ち上がる。


「お、反応するのが早いねぇ。それじゃあ2人に進行を任せるよ」

「「はい」」


 先生は手に持っていた紙を教卓に置くと教室の隅に向かう。それに入れ替わるように2人は教壇の上に立った。前回の委員、係決めのように2人は行動する。


 井上さんは教壇から私たちを見るとハキハキと話しかけた。


「これより、体育祭の参加種目を決めていこうと思います。皆さんには最低1種目、多くて2種目参加してもらいますので、一応2種目ほど候補を決めておいてください」


 定番の100メートル走や騎馬戦など、今まで何度も聞いたことのある競技名が言われていく。


 ちなみに1年生の全員参加種目は綱引きだった。綱引きは私の力が小さくても、目に見えないのでラッキーだ。全力を出さないわけじゃないけど弱いしね……。


「それでは今言った中から1人1種目選んでください。定員は田中くんが黒板に書いてくれています」


 井上さんの言葉で自然と華と宮野さんが集まってきた。もうこの3人が集まるのは普通というように。もうこの関係が馴染んできたのかな。


「それで、みんなはどれにする?」

「あたしは特に決めてないかな。別にどれでもいいし」

「わたしは短距離走がいいです。……あ、借り物競争はなしですが……」

「借り物競走かぁ」


 よく恋愛小説などで見かける競技名。前の中学ではなかったので、今回初めて見ることになる。


 置いてある紙に『好きな異性』とか書かれてて、主人公とヒロインが一緒に走ってたり……。少し憧れはあるが、実際にやるとなると羞恥心が凄そう。


 でも翔と走ってみたいなぁ。一瞬でそのシーンを想像してしまう。思わず笑みが浮かびそうになるのを必死に堪えた。


「ゆづはどれに出るの? やっぱり借り物競争?」

「どうしてそれなのよ」

「だってゆづってば運動音痴じゃん。単純な競争だと勝ち目ないんじゃない?」

「うぅ……そこまで言わなくても」


 ぐうの音も出ないとはこのことか。私も来世は運動神経抜群で体育祭を楽しみたい。


 それから時間が経ち、参加競技を決めることになった。どうやら男女共に騎馬戦が人気らしい。借り物競争は不人気すぎて私1人、華はクラス対抗リレー、宮野さんは100メートル走になった。


 全員が1種目決めると余った競技は運動神経が良い人が参加して、無事に競技決めが終わる。そのことに安心した。




 そして放課後。いつものように旅行部に行ったのが間違いだったのかもしれない。なんとホワイトボードに目立つようにこう書かれていたのだ。


 『部活対抗リレー』


「あ、1年諸君久しぶり〜。中間テストの手応えはどうだったかな?」

「あたしは特に問題なかったかな」

「僕も」

「俺もなんとか」

「……望月さん? 顔色悪いけど、もしかしてヤバい?」


 私の顔を見て少し心配そうに尋ねる橘先輩。違う、別に試験内容は良かった。私の顔色が悪い理由は……。


「あ、多分コレが原因ですよ」


 華はそう言ってホワイトボードを指差す。それを見て橘先輩も納得したようだ。


「あ~……確かに前の香川旅行でも体力なかったね」

「はい……なのでできれば……」

「でも大丈夫! だってこれから練習するからね!」


 あ、ヤバイ。嫌な予感がする。多分先輩には『やらない』という選択肢がないのだろう。


「それじゃあ早速練習しに行くよー!」


 私のことは気にせずに橘先輩は部室を出ていった。もう……どうしてこんな目に。


「結月、本当に大丈夫なのか? 走るの苦手だろ?」

「そうだけど……まぁ、仕方ないよ。部長が言ったんだし」

「そうか。ならいい。無理だけはするんじゃねぇぞ」


 翔は軽く私の背中を叩くと神崎くんと共に部室から出ていく。最後まで残ってくれていた華はドンマイと言うように肩に手を置いてきた。


「うるさいなぁ」

「何も言ってないよ? もしかして能力?」

「違う違う。その手が少し鬱陶しかっただけ。ドンマイって思ってたでしょ」

「ありゃ、バレたか」


 あははと笑う華と一緒に部室を出る。部室の前にはまだ全員待っていた。私たちが出たのを確認した橘先輩は部室に鍵をかける。


「よし。それじゃあクラブ対抗リレー、1位目指して頑張るよ!」

「文化部で、ですよね?」

「何言ってるの望月さん? もちろん、運動部にも勝つからね!」


 当然と言うように橘先輩は言ってくる。あれ? おかしいな。確か運動部には陸上部があったはずだけど……。


「まぁ狙うのは1位だけですよね!」

「目標は高い方が良いしな」

「僕も頑張るかぁ」


 私以外は先輩の意見に賛成のようだ。戸惑ってる私の手を翔が握ってくる。


「ふぇ?」

「ほら、気合い入れるぞ」


 気付けばみんなは円陣を組んでいた。真ん中に手を合わせ、私たちがそれに入るのを待っている。


「……まだ上杉先輩がいないけどいいんですか?」

「悠真くんは円陣とか好きじゃないから。でも、リレーには参加してくれるよ」


 あぁ言えばこう返ってくる。やはり私の言葉は無駄のようだ。私はその円陣に入ると手を合わせる。


「クラブ対抗リレー! 絶対1位になるぞ!」

「「「「おおーーー‼」」」」

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