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心のヒストリー【現在推敲中】  作者: 西影
第6章 スペル
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77 無実証明

「失礼します。1年2組の望月 結月です。藤原先生はいらっしゃいますか?」

「少し待ってくださいね」


 私の言葉に名前も知らない先生が反応してくれる。先生が職員室にあるドアをノックすると中から藤原先生が出てきた。


「藤原先生、生徒に呼ばれてますよ」

「ん? わざわざ俺のところに?」


 そう言いながら藤原先生は私たちの方を見る。


「望月と佐々木か。どうした? できれば後にしてほしいんだが……」

「今回起きた翔の件が知りたくて来ました」

「……なおさら駄目だ。どうせ結果は如月から聞けるんだし、それまで待つのはどうだ?」

「あたしたちは翔の無実を証明するために来たんです」

「……そうか。なら少し待ってろ」


 そこでドアの向こうに消える藤原先生。しかしすぐに出てくると私たちの方に来た。


「お前らの話が聞きたい。だからこの部屋で話すぞ」


 そう言って指差したのは、さっき藤原先生が出てきたところの横にあるドア。そこには相談室と書いてあった。


 中学の頃、同じような部屋に入ったのを思い出す。相談室にはあまり良い思い出がないんだよね……。


「そんなところで突っ立ってどうした? この部屋だぞ」


 私たちは先生に言われるがまま部屋に入る。中には1つの机と4つの椅子が2対2で向かい合うように置かれていた。


 ひとまずドアから離れている椅子に華と座る。藤原先生は紙が入ってるファイルとペンを持って椅子に座った。


「それで、早速話を聞かせてくれないか?」

「その前に翔のことを聞かせてくれませんか?」

「……分かった」


 そう言って藤原先生はファイルの中から1枚のプリントを出す。


「これが如月の机にあったプリントだ。中間テスト最後の科目である歴史、その範囲の重要点が書かれてある」

「これを翔が見ていた……そう言いたいんですか?」

「そう言いたいんだがな。正直に言って迷っている」


 次に取り出したのはテストの問題。だけど中間テストではない。それは名前に如月 翔と書かれた復習テストのコピーだった。


「これが如月の復習テスト。要するに中学の全範囲が入ってるような問題だ。それを合計290点取っている。学年最高点数だ」

「翔が⁉」

「如月くんが⁉」


 その言葉に私と華は反応してしまう。受験当時の翔と私の学力はほぼ同じだった。その後、翔は積んでいたゲームの消化で忙しそうで、私もそれを見て楽しんでいた。


 なのにこの点数。しかも学年最高点数。本当に私の知っている翔なのかと疑ってしまう。


「とまぁ、こんな点数を採ったやつがカンニングするのか? って話だ。それに復習テストはカンニングするにも幅が広すぎるしな」

「だから如月くんがしていない……と思ったのですか?」

「あぁ、それに如月のカバンには他のカンニングペーパーがなかった。……そこでだ。望月、お前の話を聞かせてもらえないか?」


 藤原先生が私に話を振ってくる。私はそれを待っていた。しかも藤原先生は翔のカンニング行為に対しての疑惑も持っている。


 私たちから見て絶好のシチュエーションだ。


「今回、翔のカンニングペーパーを机に入れた人を発見しました」

「本当か! それは誰なんだ⁉」

「2組の遠藤くんです」

「あいつがか? そんな悪いことをするやつじゃないと思うんだが……」

「それが、脅されたんです。遠藤くんはオリエンテーションで女子風呂を覗こうとしたらしいですね」


 私の言葉で藤原先生が一瞬止まる。どうやら本当のようだ。


「……まぁ、そうだな」

「それを東くんが聞いたそうで、『バラされたくなければ如月 翔の机にこれを入れろ』と命令されたらしいです」

「分かった。にしてもどこからそんな話を聞いたんだ? 覗きについては他言無用で終わったはずだが」

「遠藤くんからです。なので本人に直接聞くのが早いと思います」

「分かった。取り敢えず、情報提供を感謝する。もうそろそろ下校時刻だから帰るんだぞ」

「分かりました。でも、翔はどうするんですか?」

「如月もそろそろ帰す」


 そう言って藤原先生は外に出た。そこでホッと息をつく。どうやら上手くいったようだ。


「まったく……あたしが隣にいた意味あった? 全部ゆづが喋っちゃったじゃん」

「ごめんごめん」

「まぁいいけど。あたしが喋るよりゆづの方が熱意が伝わるだろうし」

「そう?」

「うん。だって好きな人の為だもんね」

「そ、そんなこと……」

「別にいいじゃん。わざわざ否定することないでしょ」

「……知らない!」


 華の言葉から逃げるようにイスから立ち上がると部屋から出る。職員室を出ると翔が壁にもたれていた。


「あ、翔……」

「2人共、ありがとな。俺のせいで……」

「如月くんのせいじゃないよ。悪いのは仕込んだ人なんだから」

「それで、今回のはどうなったの?」

「保留だってよ。実はさっきまで歴史のテストしてたんだ。結果が良かったからそうなった」

「翔の実力が知れたんだから無実でもいいのに!」

「まぁ、高校側も何かしらあるんだろ。仕方ないよ」


 そうして私たちは帰路につく。変な濡れ衣を翔に着せたのは許せないけど、ちゃんと疑いが晴れて良かった。

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