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心のヒストリー【現在推敲中】  作者: 西影
第6章 スペル
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76 事の顛末

 ドンドンとバスケットボールの音が反響する。私と華は体育館に着くとバスケ部の練習を入り口から眺めていた。


「ねぇ……華って遠藤くん分かる?」

「分かるわけないじゃん。そこまで有名な人じゃないし、他クラスだし」

「だよね」


 バスケ部のメンバーというのは分かったが、それ以外の情報を私たちは持っていない。ついさっき1年生だけが集合していたが10人はいた。


 そこから1組の生徒を除いて遠藤くんを当てれる確率は7人分の1。左目を使用しても人が多いので1人の声を聞き分けるのも私にはできない。


 それにまず、その7人の声すら聞いたことないので判別すら不可能である。心の声はその人の声とほぼ同じなのだから。


「どうしよ! 遠藤くんがどの男子か分からないよ」


 私は縋るように華の方を見る。するとため息をつかれた。え? 何でため息?


「あのさぁ、どれか分からないなら聞けばいいじゃん。これ常識でしょ?」


 そう言ってスタスタと歩く華。そして休憩している先輩らしき人に声をかけた。少し話すると先輩はコートに入り、1人の部員に声をかける。


 結局、華は1人の部員を連れて戻ってきた。そして彼を紹介するように手を向ける。


「彼が遠藤くんだって」

「どうも、自分に何か用ですか?」


 彼はどこかそわそわとしていて、今すぐにでもこの場を去りたい様子だった。それに私の視線に合わせようともしてくれない。


 ……怪しい。やっぱり彼が犯人で間違いなさそうだ。私たちは遠藤くんを連れて体育館から出る。


 近くに人がいないことを確認すると、私は左目の眼帯を外して単刀直入に聞いた。


「私が聞きたいのは1つだけ。なんで如月 翔の机にカンニングペーパーを入れたの?」

"な、何でコイツが知ってるんだよ⁉ まさかクラスの誰かが?"

「……何のことか分からないな」


 あくまで白を切るらしい。だけどもう少しだけ聞いてみる。


「本当に?」

"くそ、しつこいな"

「如月って色々と嫌な噂を持ってるやつだろ? カンニングくらいすると思うが」


 その言葉に反応してしまう。それは全て東くんの嘘だ。あんな音の葉もない噂の話をされて、私は少し苛つきを覚えた。


「2組の人に聞いたよ! 翔が神崎くんとトイレに行ってる時にカンニングペーパーを翔の机に入れたらしいね!」

"くそ、誰だよ。それチクったやつ……。それもこれも全部東の命令のせいだ"

「……何のことか分かんねぇな」


 どうやらまだ教えてくれないらしい。しかし良いことが聞こえた。どうやら今回も東くんが関係しているようだ。


「はぁ……いくら東くんの命令だからってカンニングペーパー入れなくていいでしょ」


 ため息混じりに、独り言を言うように言葉を紡ぐ。言い終わるとチラリと遠藤くんを見た。


"な……どうしてコイツが東の命令を⁉"

「ど、どうしてそれを……」

「どうしてだと思う?」


 挑発気味に遠藤くんに問いかける。やっと認めてくれた。後は心の声を読みながら相手の話に合わせるとすぐに事の顛末(てんまつ)が分かるだろう。


 私の予想通り、すぐに事の顛末を知ることが出来た。遠藤くんはオリエンテーションの際に複数人で覗きを行おうとしていたらしい。


 結果的にそれは藤原先生によって防がれたが、東くんはそれをネタにして軽い脅迫をしてきたとらしい。


「覗きの件がチクられたくなければ、俺の言うことを聞け」


 と。遠藤くんは自分の安全を確保する為にカンニングペーパーを作り、翔の机に投入。普通ならそこで人にチクられるが今の翔は学年一の嫌われ者。


 みんなは逆に遠藤くんの行いをその場では見て見ぬふりをしてくれた。……実際には誰もチクらなかったんだけどね。全部私の左目のおかげだし。


 全てを話し終えた遠藤くんの目には涙が浮かんでいた。心の声を聞いた限りだと何1つ嘘は存在していない。なら、ここからは変な嘘を付かないだろう。


 私は眼帯を着け直すと遠藤くんに言った。


「覗きの件は誰かに言うつもりはないから安心して。もう罰は与えられたんだし、一応は未遂なんだから」

「ありがとう……ございます」

「だけどいくら脅迫されたからって翔に冤罪を被せたことは絶対に許さない。先生にも報告する」

「はい……。如月の件は本当にすみませんでした」

「だったら、証人になってくれる? 翔の潔白を示してくれる証人。してくれなかったらこっちも考えがあるけど……」

「はい! やります。いえ、やらせてください!」

「分かった。なら練習戻っていいよ。その時が来たら先生に呼ばれるだろうし」

「本当に……失礼しました」

「私に謝るんじゃなくて翔にも絶対に謝ってよ」

「はい」


 遠藤くんは涙を拭くと小走りでその場を後にする。その背中を見送るとホッと息をこぼした。


「ふぅ……緊張した」

「お疲れ様。相手の考えが分かる左目って本当に便利そうだね」

「その分大変だけどね。前の能力の方がマシだよ。どうして文字が声になったんだろ……」

「そんなこと言われてもあたしは知らないよ。……それにしても、除きかぁ」

「一応未遂だったから良かったよ」

「オリエンテーションであたしが言ってたことも的を射てたんだね」

「翔の部屋の人数が少ない話?」

「そうそう」


 私たちは話しながら職員室に向かう。もちろん翔の冤罪を知らせるために。


 ……少しは翔に恩返し出来ただろうか。中2の頃にしてもらったことに比べれば足りないけど、それでも少しは力になれたはずだ。


 そう思うとこの左目には感謝しかない。

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