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心のヒストリー【現在推敲中】  作者: 西影
第1章 心峰高校
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008 そんなの聞いてないって!

「まだちゃんと授業すら始まってないのに、もう復習してるの?」


 入学式が終わって翌日、翔が春休みに配られていた課題の問題集を読みながら玄関前で私を待っていた。


 勉強嫌いな翔が問題集を持ってるなんて珍しい。普段はテスト期間中じゃないと見られない光景だ。


「あぁ、今日は復習テストだからな。少しでも良い点取りたいんだ」

「なるほどね、復習テストか。……って復習テスト!?」


 思いもしなかった言葉に思わず叫んでしまう。その声のせいで登校している生徒たちが私を見ていた。


 恥ずかしい……頬がどんどん熱くなるのを感じる。私は恥ずかしさを紛らわすべく、一つ咳払いをした。


「復習テストってどういうことよ」

「今日は春休み課題の確認テストがあるんだ。教科は英語、数学、国語の三教科」

「そ、そうなんだ」


 ……全く聞いてないんだけど!? 昨日の終礼でそんなこと言ってたっけ?


 記憶を掘り返してみるが全然思い出せない。私、課題の問題集なんて持ってきたっけ? 知ったからには復習しておかないと。


「もしかして知らなかったのか? 行事予定表にも書いてたはずだけど」

「昨日はそれどころじゃなかったの」


 自己紹介はちゃんとできなかったし、その後の食事で行ったファミレスは楽しかったけど話を繋げるのに必死だった。


 それに、みんなの笑い声がたくさん聞こえたし……。逃げ出さなかった私を褒めてほしい。


 話しながらカバンの中を探ってみるが、それらしいのものが見つからない。そりゃ、入れた覚えもないものが入ってるわけないよね。


「ほら、俺の貸してやるよ」


 私の動きで察したのか英語の課題の問題集を渡された。


「え、でも……」

「俺は数学の問題で必死なんだよ。それに英語は得意だからノー勉で行くつもりだし」

「ありがと」


 ほんと、こういうところだけ察しがいいんだから。もっと恋愛的な意味でも察しがよくなればいいのに。


 ペラペラとページを捲りながら翔の隣を歩く。そこで奇妙な赤丸を見つけた。他のページにも書かれてある。


「ねぇ、この赤丸は?」

「単純に間違えた場所だ」

「へー、翔でもこんな凡ミスするんだ」


 見れば英語嫌いな私でも楽々解けるような問題にも赤丸がついている。一応赤丸の場所は覚えておこうかな。


「――いたッ」


 しかし読むのに夢中になってしまい、前にぶつかってしまった。急なことだったため尻もちをついてしまう。


「いたた……あ、ごめんなさい!」


 咄嗟に謝るが返事がこない。おかしいと思ったときには遅かった。


 目の前には立っている一本の電柱。じゃあ私が話しかけたのは……


 ――途端に羞恥心で顔が熱くなる。絶対耳まで赤くなってるじゃん!


「……ふふふ」


 そこで笑いを堪えるような声が後ろから聞こえてきた。振り向くと問題集で顔を隠している翔がいる。


 私は急いで立ち上がると持っている問題集で翔の頭を思い切り叩いた。


「――いって! ちょ!? 何すんだよ!!」

「翔が笑うからでしょ!!」

「こんなの誰が見ても笑うって」


 翔はまだ笑っていたのでもう一度頭を叩く。加減して叩いたからか、翔は何も言わずに叩かれた箇所を擦る。そして私に愛想笑いを向けてきた。


 私はその笑顔から逃げるようにそっぽを向く。


 頭痛い……それに恥ずかしい。


 復習テストも忘れてて、電柱にもぶつかって……


「はぁ、今日は厄日だよ」

「ま、どちらとも結月が悪いんだけどな」

「……うるさい」


 そんなの自分でも分かってる。でも、ついそう考えてしまうのだ。それに……つい周囲に目を配ってしまう。


「心配するな。大丈夫だよ。笑ってるやつがいたとしても、その笑いはあいつらとは違う」

「そう……だよね」


 分かってる。そんなの分かってるけど、意識せずにはいられない。


 周囲を確認したい気持ちをグッと抑えて前方を注意しながら再び問題集を開いた。


「翔、そろそろ返すよ」


 教室の前に着き、私は閉じた問題集を翔に差し出す。


「別に放課後でいいぞ」

「それだと復習できないじゃん」

「俺はどうせ英語は見返さないからいいんだよ」


 そう言って翔は二組へ足を向ける。


「……そう、じゃあまた放課後にね」

「おう」


 私は手に持っている問題集を少し見つめてから教室に入った。


「「「望月さんおはよ」」」

「おはよ~」


 昨日話した数人のグループに挨拶を返し、自分の席に向かう。


 教室では数学の公式や英単語のスペルなどが飛び回っていた。見渡してみると所々に人が集まっている。


「宮野さんおはよう」

「おはようございます」


 荷物を机において席に座る。宮野さんは勉強せずに本を読んでいた。


「あれ、勉強しないの?」

「はい。どうやら結果は成績に関係ないらしいですし」

「だったら勉強するだけ無駄って思考かな?」

「そうですね。一応課題はきちんとしてきたので」


 なるほど。成績が関係ないとしても私は点数を意識して勉強してしまう。宮野さんの余裕は私も欲しい。


「望月さんおっは~」

「おはよう、佐々木さん」


 先に来ていた佐々木さんが私の席まで歩いてくる。


「英語の問題集じゃん! 一時限目のテストが英語だし、あたしにも見せてくれない?」

「いいよ。って最初が英語なんだ」

「ほら、黒板に書いてある」


 言われて前に視線を向ける。確かに黒板には英数国の時間が書いてあった。……終礼の時は書いてなかったよね?


 佐々木さんは自分の席から椅子を持ってきて私の机の横に座る。その間に何人かの生徒を連れてきていた。


 こうしてテストが始まるまで勉強した。佐々木さんは自分から見せてほしいと言ってきたのに少しだけ教科書を見るだけだった。

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