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心のヒストリー【現在推敲中】  作者: 西影
第6章 スペル
77/96

69 見られた⁉

 カレーを食べ終わった私たちはお風呂に入ることにした。もちろん如月家にはお風呂が1つしかない。


 しかし4人で1つのお風呂を使うのは時間がかかるので、女子の私と華は私の家でお風呂に入ることにする。


 私と華は荷物から着替えを持って如月家を出る。空を見上げればちょうど月が雲に隠れており、少し光が漏れていた。ここは街頭も多いため星が見えづらい。


 そんなことを考えて歩いてこと約15秒、(うち)に辿り着いた。


「やっぱりゆづの家と如月くんの家って近いよね〜。ゆづの家から如月くんの家に行く時に毎回思っちゃうよ」

「そう? 私は何も感じないけど」

「しかも幼稚園から……だっけ? そこからずっと同じ学校に通ってさぁ。運命ってやつなのかもね」


 華の言葉に対して少し思考する。私はこれが普通だと思ってた。だって何度も通った道で、今ある結果としか考えてなかったから。


 でも、もしかしたらこれが華が言うように運命というやつなのかもしれない。今まで関係が続いてるのは翔だけだし、しかも幼馴染で家も隣。


 関係が続いてるのは私のせいでもあるのだが、幼馴染や家が隣という環境は私では作り出せない。しかも前にやった心理テストでも翔が運命の相手だったし。


(運命……運命かぁ)


 響きもロマンチックで素敵だ! なんだか幸せな気分になってくる。


「……ゆづ、ニヤニヤしてて気持ち悪いよ。運命とか言われてそんなに嬉しかったの?

「へ? いや、違うから。と、とりあえず中入ろ」


 私は中に入るためドアを開けようとする。しかし鍵がかかっていた為開かなかった。今日のお母さんは帰るのが早かったようだ。


 私は懐から鍵を取り出すとそれを使って中に入る。そしてちゃんと鍵を閉めると声を発した。


「ただいま」

「お邪魔します」

「おかえり〜。でもあれ? 今日は翔くんの家でお泊り会じゃなかった?」


 リビングの方からお母さんの声が聞こえたかと思うと足音が近付いてくる。そして私と華の姿を見たお母さんは少し驚いたような顔をした。


「あらやだ、私スッピンなのに。華ちゃん……よね。初めまして。ささ、狭いですが上がって上がって」

「はい、初めまして!」

「お母さん、今回はお風呂に入りに来ただけだよ」

「なるほど、確かに男女で分けるのは当然よね。お湯は沸かしてあるし、すぐにでも入れるわよ」

「それじゃあお母さん、今からお風呂入るところだったの?」

「そうだけど……お二人が先に入ってちょうだい。私は長く入るからね」

「分かった。それじゃ……華は先がいい? それとも後?」

「一緒は無理?」

「そ、それは駄目!」


 一緒に入るのは流石に危険だ。お風呂に入る時……というより、翔の家にいた時からカラコンを着けていない。


 そんな状態で華に眼帯に隠れてる左目を見られたら……。


 考えるだけでも少し怖い。もしかしたら今の日常も崩れ去ってしまうかもしれない。


「最近、結月は恥ずかしがり屋なのよ。だから華ちゃんは少し私とお話しましょ?」

「分かりました」


 そう言ってリビングに向かう華とお母さん。なので私は脱衣所に向かう。そこで服を脱ぎ、眼帯を外して浴室に入った。


 いつものように先に体を洗ってから湯船に浸かる。このまま何十分でも浸かっておきたいが、今日は華がいるので早めに上がらなければならない。


 全身を脱力してリラックスする。この時間は本当に心地いい。


 こうして数分経っただろうか? いきなり脱衣所と浴室を繋ぐ扉が開いて体がビクッと跳ねた。私は驚いてそちらに目をやる。


 そこなは裸になっている華がいた。


「ごめんね〜。入りに来ちゃ……」


 華は私を見て呆然としてる……って私の左目見られてる⁉


「あの、えと、これは……その……取り敢えず出て!」

「ご、ごめん‼」


 華はすぐに浴室を後にすると扉を閉める。しかしまだ脱衣所に映る影はなくなっていない。まだ脱衣所にいるのだろう。


 そんなことよりも……見られた? 絶対に見られたよね⁉ ど、どどど、どうしよどうしよ。


 取り敢えず湯船から上がると左手で左目を隠して扉を開ける。そしてすぐにバスタオルを持つと華に言った。


「……お風呂上がったよ」

「あ、うん……じゃあ入るね」


 華が浴室に入って扉を締める。それを確認して左手を外した。……ひとまず体を拭いて落ち着こう。


 今更華のことを考えても仕方ない。それに、もしかしたら華は左目に気付いてないかもしれないし。


「……早く出よ」


 私は服を着て眼帯をつけると脱衣所を後にする。そしてリビングで髪を乾かしながら華が戻ってくるのを待った。


 しかし髪を乾かし終わっても華は戻ってこない。なのでお母さんと少し雑談を始める。


「そういえばお母さん、さっき華と何話してたの?」

「知りたい? やっぱり結月は知りたいよね?」

「だから尋ねたんでしょ。……で、何話してたの?」

「うーん……言ってもいいけど、結月は怒らない?」


 お母さんが変に言おうとしないので少し腹が立ってくる。私はお風呂上がりのお茶を用意して言った。


「怒らないから早く」

「例えば〜、オリエンテーションの時に翔くんに膝枕してもらってたとか?」

「――⁉ ゲホッ、ゲホ」


 驚いたからか、咳を起こしてしまい口にしているお茶を吐いてしまう。すぐにお母さんを見るとやれやれと首を振っていた。


「だから言ったでしょ? 怒った?」

「怒ったっていうか恥ずかしいと言うか……それだけ?」

「もちろん他にも聞いてるわよ。今度は逆に結月が翔くんに膝……」

「わー! わー! 駄目駄目。言わないで」


 思わず静止の声をかけてしまう。というか華ってば何話してるの⁉ 恥ずかしいんだけど‼


「ちなみに言うとあと四つぐらいは聞いたわ」

「もう勘弁して……」


 お茶を飲み干した私はソファーに寝転がる。だらんと手はソファーから垂れており、本当に間抜けな体勢だ。私は静かに目を瞑る。


「ゆづ? どうしたの?」


 あれから数分ぐらい経っただろうか。声がしたので目を開けると華が私を見下ろしていた。


「……何でもない。取り敢えず翔の家に戻ろ」

「そうだね。それではお邪魔しました!」

「はーい。また遊びに来てね」

「はい!」

「行ってきます」

「行ってらっしゃい」


 外に出て空を見上げる。月は雲に完全に隠れており、光すら見えなくなっていた。




 それから翔の家に戻った私たちは勉強を再開した。華はいつもと同じに見える。もしかしたら本当に左目のことを見てないのだろうか?


 本当なら聞きたい。でも聞けない。怖いから。もしも、その一言でこの日常が崩れ去ってしまったら……。


 そう思うだけで体が震えてしまった。

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