66 お泊り会!
それから時間は経ち土曜日。今は終礼で高橋先生の話を聞いている。
「皆さんも分かっていると思いますが、明後日から金曜日まで中間テストです。途中1日休みも挟んでいますので万全の準備を整えてテストに挑んでくださいね! これで終礼を終わります。土曜日班は掃除をお願いします。委員長!」
「起立! 礼!」
先生が言ったように明後日は高校に入学して初めての中間テストだ。その事実に少し体が震えた。
「華、早く今日も勉強会しに行くよ!」
「う、うん……」
私と華は宮野さんに手を振って廊下に出る。2組の前で待っていると終礼が終わったのか、どんどん人が出てきた。
翔と神崎くんも出てきて私と華のところに来る。
「ごめん、待たせたね」
「待たせたな」
「別にいいよ。終礼は仕方ないし。それじゃあ華の家に行って勉強会しよ」
私たちは学校を出て帰路を辿る。すると華がはぁ、とため息を吐いて言った。
「せっかく明日は休みなのに勉強しないといけないのかぁ」
「まぁそれがテスト期間なんだし。仕方ないんじゃない?」
「そうそう。だから今日も勉強するぞ」
「はぁ、せめて夜とかにみんなと遊び……そうだ!」
そこで何かを思い付いた華。なんだろう。華の心の声は見てないけど分かる気がする。それは……。
「今からお泊り会しようよ!」
予想通りの答えで逆に驚いてしまう。まさか本当に当たっているとは……。
神崎くんは予想外の言葉だったのか驚いていた。
「いや、僕と翔は男。佐々木さんと望月さんは女。だから無理でしょ」
「ええー……別にいいじゃん」
「私も翔と結構お泊り会したことあるし」
「そ、そう? ならいい……のかな?」
「それで、家はどうするんだ?」
「あたしの家は遊びでこの人数はいけるけど、泊りってなると少し狭いかな」
「ごめん、僕も無理だよ」
「私の家も聞いてみないと分からないかな。でも連絡つくのは夜だし……」
そこで会話が一旦終わってしまう。やっぱりいきなりお泊り会とか無理だよね。そう思っていると翔が声をあげた。
「多分俺の家はいけると思うぞ。部屋もあるし、親父に聞いてみるよ」
そう言いながらスマホを耳元に当てる翔。電話が繋がったのか先程話してた内容を話し、ところどころ相づちを打っている。
翔はスマホを耳元から離すと私たちに言った。
「オッケーだったぞ。それじゃあ今日は泊まりの荷物持って俺の家に集合な」
「やったーー!」
翔の言葉に大袈裟に喜ぶ華。いや、これは普通に喜んでいるらしい。どれだけ嬉しかったのだろう。華はカバンを持ち直した。
「あたしは走って家に帰るよ。それじゃあまたね!」
そう言って走り出す華。それを3人で見送る。華の行動が面白くて私たちは少し笑った。
だけど私も人のこと言えないけどね。久しぶりに翔の家でお泊り会。その事実に嬉しくなり心の中で華以上に喜んだほどだ。
少し歩くとパンの良い匂いがしてきた。もうそろそろ神崎くんとも別方向になる。
「それじゃあ僕はこっちだから。またな」
「おう」
「またね」
それにしても今から翔の家に泊まるのか。泊まるのは中学3年生以来だろう。あの頃は受験勉強で翔の家に勉強を教えてたっけ。
今じゃすっかり成績が逆転しちゃったなぁ。でも私は今回のテストに自信がある。なぜならみんなが寝ている時間も私はノートを書き写していたからだ。
復習テストでは翔に負けたけど今回は勝てるかもしれない。
「それじゃあ2人はこの部屋使って。荷物置いたらリビング集合」
「分かった」「了解!」
翔の家に入った私と華は1つの部屋に案内された。その部屋にはほとんど何もなく、あるのは本棚と布団だけだった。
本棚には医学に関する専門的な本がずらりと並んである。主に脳、神経など。
「うわあ、難しい本ばっかり並んでるね。これもしかして如月くんのお父さんのやつかな?」
「いや、多分お母さんの方だと思うよ」
「今海外で研究してるって人?」
「そうそう」
私は返事をしながら荷物を置いて勉強道具を取り出す。最近、眼帯姿をよく見せているから誰もそのことに触れなくなっていた。
今回はカラコンを外している為絶対にみんなの前で眼帯を取るわけにはいかない。
「へぇ、頭良さそうだなぁ……。それじゃ、リビング行こうか」
「うん」
私たちは部屋を出る。もちろん華は場所を知らないので案内した。
「「お邪魔しまーす」」
「それじゃあ拓也来てないけど始めるか。……と言っても何するんだ?」
「あたしは課題するよ」
「私はもう終わらせたから自分のノート見ておくよ」
「結月はもう終わらせたのか⁉ 早いな」
「暇な時にやったらね……。分からないところあったら教えるよ」
暇な時と言うのはもちろん深夜のことだ。最近は綺麗なノート制作よりも課題をやっていたせいでみんなより早く終わらせてしまった。
私は書き写したノートを読み返す。やはり私がいつも授業中に書いてるノートより見やすい。
(作っていて良かった)
それから少し時間が経ち神崎くんも合流した。私はノートを読みつつ華の分からないところを教える。神崎くんは翔が教えていた。
私は華に示された箇所を教える。案外人に教えるのって楽しいかも!
「あぁ〜……疲れたぁ。それにお腹も……」
勉強を開始してどれくらい時が経っただろうか。華が机に突っ伏して呟く。気付けばもう13時。いつもならもう昼食を食べている時間帯だ。
「今が学校なら昼飯食ってる時間帯か……。それじゃあ今から何か作るから待ってろ」
「え? 如月くん料理できるの?」
「当たり前だ。親父はいつも帰るの遅いからよく作ってるんだよ。結月の家もだよな?」
「うん、そうだね」
「へぇ、2人とも凄いなぁ。あたしなんて自分のご飯すら作るの面倒くさいから週に1回か2回は外食で済ませてるよ」
「僕もそんな感じかな」
「如月くん、とりあえずすぐにできるの作って〜」
華は空腹を訴えるようにお腹を擦る。私は立ち上がるとキッチンに立つ翔に近寄った。
「私も手伝うよ。今から何を作る予定?」
「そうだなぁ。すぐに作れて冷蔵庫の中身も考えると焼きそばかな」
そう言って翔は冷蔵庫から麺、豚肉、キャベツ、人参などの食品を出して行く。私はその間にまな板と包丁を準備した。
「あたしたちって新婚夫婦を見せられてるのかな?」
「確かに。なんか新婚してすぐに共同作業の為に料理を作るみたいな」
リビングから飛ぶ声に頬を赤らめながら水で洗った食材を切り始める。翔も私も料理に慣れているおかげかすぐに切り終わった。
「私は泊めてさせてもらってるから」と言って私が切った食材を炒める。焼きそばを作り終わると4つに分けて皿に入れていった。
「お待たせー」
「待ってましたー!」
「ごめんね、僕たちは料理に参加しなくて」
「お前らは来客なんだし気にすんな。結月は悪いな、最後までしてもらって」
「私が言ったことだから気にしないで」
私はみんなの前にお箸と焼きそばを置くと席に座る。私たちは両手を合わせて言った。
「「「「いただきます!」」」」




