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心のヒストリー【現在推敲中】  作者: 西影
第6章 スペル
73/96

65 アルバム

 水曜日の朝、いつものように迎えに来てくれた華が私に聞いてきた。


「おっは〜ゆづ。それで、昨日は何かあった?」

「昨日?」

「だって2人で勉強会したんでしょ?」

「まあ……」

「それで、何かあった?」

「何もなかったよ?」

「うっそだぁ! 抱きついたりとか、キスとかなかったの?」

「キ、キスって……そんな恋人みたい……な……」


(そういえば昨日は後ろから翔に抱きついたっけ)


 今思えばアレって本当に兄妹(けいまい)姉弟(してい)のような距離なのだろうか。まさにさっき華が言ったみたいに恋人みたいな……。


「ほら、顔赤くなってる」

「なってない!」

「なってるよ!」

「お前ら家の中にも聞こえてるぞ」

「「――うわぁ‼」」


 突然の声で華と一緒に驚いてしまう。すぐに横を振り向くと翔が欠伸(あくび)をしていた。


「もう、驚かさないでよ」

「別にそんなつもりじゃなかったんだがな」

「ねぇ如月くん。ゆづって今顔赤いよね」

「そうか?」


 そう言って私の顔をマジマジと見る翔。綺麗な黒い瞳に私の顔が映る。お互いに顔を見ている状況。その事実に少し恥ずかしくなる。顔が熱くなった気がした。


「あぁ、確かにちょっと赤いかもな。でもまぁ、結月は恥ずかしがり屋だしちょっと顔が赤いぐらいが普通だよ」

「そうなんだ。へぇー……ふぅーん……」

「ど、どうした?」

「いや、確かに如月くんが見たら毎回顔が赤く見えるかもね」

「ちょっと華‼」

「ん? どうして怒ってるのかなぁ?」


"ゆづをからかうの楽し!"


 やっぱり私をからかって楽しんでいる。だからと言って私は反撃できるほどの情報を持っていない。なのでここは逃げるしかなさそうだ。


「もうそろそろ行こ、神崎くんを待たせるのもよくないよ」

「そうだな。それじゃあ行くか」

「そうだね」


 からかいから逃げれたことに少し安堵しつつ私は歩き出す。神崎くんと合流すると今日の勉強会の話をしながら学校に向かうのだった。




 それから時間は経ち終礼も終わった。これから華の家で勉強会だ。


「ゆづ、行こっか」

「うん」

「お2人は今からどこか行くんですか? 来週の始めに中間テストがあるんですよ」


 私たちが話していると前の席にいる宮野さんが声をかけてきた。ちゃんと私服も着こなして今日も綺麗だ。


 だからこそやっぱり違和感しかない。私の中で宮野さんは制服のイメージが強すぎるせいだろう。


 いつになったら慣れるのかな。


 そんなことを思いながら宮野さんに返答する。


「知ってるよ。だから今から勉強会するんだ。華のテストの結果は前に見たよね」

「あぁ……あのテストですか……」

「奏も哀れみの視線をあたしに向けないで〜。あ、そうだ。奏もあたしの家で勉強会しない? 他にも男子が2人いるけど」

「わたしは遠慮しておきます」

「あ、そうなんだ。何か用事があるのかな?」

「そんなところです」


"今から涼の家で勉強会だなんて言ったらからかわれちゃうし、こんな返事でいいかな?"


 心の声を見てみたが、どうやらこれから荒川くんの家で勉強会のようだ。


(ごめんね、心の声で見えちゃった。でも、今から言うのは心の声を見る前から聞こうとしてたことだから)


 私は心の中で少し謝りながら宮野さんに言う。


「今から荒川くんの家で勉強会なのかな?」

「――え? いや、えっと違います……よ」

「あぁ〜、用事って彼氏とのお(うち)デートなんだ〜。ふぅん……」

「ちが、違いますって!」

「――奏、向かいに来たぞ〜」

「りょ、涼⁉」


 宮野さんが必死に否定をしていると荒川くんが1組に入ってきた。宮野さんの件から初めて荒縄くんの顔を見た気がする。


 前よりも顔色が良くてなんだか印象が違う。目は希望で満ち溢れている気がした。


「おっと、ガールズトーク中だったか? すまんな、俺は廊下で待っとくから」

「その気遣いはいらないよ。さっき話は終わったから。ほら、奏はさっさと彼氏のところに行きな」

「は、はい……」


 顔を真っ赤にして荒川くんのもとに向かう宮野さん。すると荒川くんは思い出したように私たちの方を見た。


「そう言えば前は2人にお世話になったな。本当にありがと、奏とはこれからも仲良くしてくれよな」

「はい!」

「もちろん!」


 それだけ言うと2人は廊下に出ていった。私たちも続いて廊下に出る。そして壁にもたれてる翔と神崎くんに歩み寄ってた。


「「おまたせ」」

「いや、こっちはさっき終礼終わったところだから全然待ってねえよ」

「うんうん、それじゃあ今日は佐々木さんの家で勉強会だよね。今更だけどお邪魔して大丈夫なの?」

「前々平気! ひとり暮らしだし。ほら、早く行くよ」


 私たちはいつもの下校のように歩き始める。翔は1度家に帰ってから向かうらしい。私と神崎くんは直接向かう。まだ華の家に行ったことないから楽しみだ!




 途中で自転車に乗った翔が合流して華のマンションに入る。華は鍵を開けて言った。


「どうぞ〜! ささ、上がって上がって」

「「「おじゃまします」」」


 私たちは中に入る。リビングと思われる部屋に着いたがそこには机、パソコン、本棚、タンスなどしかなかった。床にはカーペットが敷かれており、キッチンもある。


 まだ奥に続くような扉があるからそこが華の部屋だろう。


「これがリビングだよね。本当にテレビないんだ」

「まぁ、テレビあっても見ないしね。それに今の世の中はパソコンさえあれば見たいものを見たい時に見れる」

「でもテレビないのは珍しいよな。後、これどうぞ。お菓子とかジュース」

「ありがと! それじゃあお皿とコップ持ってくるから先に勉強しておいて。場所はこの


 華は翔から貰ったお菓子とジュースを持って中に入る。私たちは華に言われた通り先に勉強を始める。今日出された課題もあるからそれを終わらせないと。




 勉強を開始して数十分が経過した。今はシャーペンを持って課題を見てるが、正直に言うと集中が切れている。今はもうしたくない。


 それに今終わらなくても夜に課題をするからどうせ終わるだろう。なら、今は休憩をしてもいいのではないだろうか?


「ちょっと疲れたし私は休憩するよ。華、そこの本棚の本見てもいい?」

「どうぞ。だけど休憩中もあたしが質問したら答えてね。如月くんは神崎くんに教えるので大変っぽいし」

「分かった」


 私は本棚に近付いてぼぉーっと眺める。そこには種目様々なスポーツの本、哲学、医療、占い等々。本当に色々な種類の本が置かれていた。


 だけど漫画は見当たらない。まるで勉強の為の本棚みたいだ。


「……これって……」


 しかし1つ勉強とは違う気になる本が見つかり、私は取り出す。それは中学の頃のアルバムのようだ。透明な袋に入れたまま保管されてある。


「華……これって華の中学の頃のアルバム?」

「ん? あ、そうそう。一応家から持ってきたんだ。というか親に絶対に持って行けって言われたからあるって感じ。ここに来てからは1度も見てないかな」

「見てもいい?」

「どうぞ」


 私はペラペラとページをめくる。私はある1人の名前を意識して探し続けた。そして、ついに見つけることができた。


 その人の名は……。


島田(しまだ) 里奈(りな)……」


 オリエンテーションの時からずっと気になっていた名前。あの悲しそうな表情。やっと見つけることができた。


 幸い、華の中学には『りな』という名前をする人がこの人しかいないからこの人で間違いないだろう。だけど、なぜかこの人は集合写真で変に目立っている。


 1番後ろに立っているはずなのに色の濃さが違うというか……まるで加工されているみたいだ。


 ――いや、これは間違いなく加工だ。加工ということは集合写真の時にいなかったということ。


(でもなんで? 体調不良? それとも……)


 私の脳裏に『いじめ』という言葉が浮上する。貼られてある写真を全て見るが里奈さんの写っている写真はこの集合写真しかなかった。


(じゃあ……やっぱり……)


 それに華は里奈さんのことを知らないと言っていた。本当に知らないのだろうか?


 里奈さんが華に話しかけた時は嬉しさと気まずさが強く見れた気がする。ならば華はいじめをしていた訳ではないのだろう。


 私は華に視線を向ける。華は月曜日辺りに配られた課題を解いているようだった。集中しているのか、私の視線に気づく気配がない。


 真実を知りたいけど聞くのが怖い。それに華はきっと忘れようとしているのだろう。ならば聞かない方が正解ではないだろうか。


 私はアルバムを閉じると本棚に戻して課題を再開する。しかし頭からアルバムのことが離れることはなかった。

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