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心のヒストリー【現在推敲中】  作者: 西影
第5章 寂しがり屋な小石
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067 入学して初めての……

 月曜日。天気予報で夕方頃に通り雨があると知らされていた私は傘を持って登校する。なんやかんやで心峰高校に入学して初めての下校中の雨になるのかもしれない。


 今は宮野さんと帰ってるから無理だけど、いつかは翔と相合傘したり……とかいう妄想をしながら翔の家のインターホンを押す。


「ゆづ、ニヤニヤしてて気持ち悪いよ。どしたの?」

「べ、別に……何でも」


 流石に翔と相合傘する妄想してたとか言えないよね。


「どうせ如月くんと相合傘するような妄想してたんでしょ」

「そ、そんなこと……」

「目が泳いでるよ」

「う……。内緒だよ!」

「はいはい」

「何が内緒なんだ?」

「うわぁぁぁぁ!」


 気付くと翔が私たちのところまで来ていた。思わず大声で叫んでしまう。


「ははは、そんなにびっくりすることないだろ。何か(やま)しいことでも考えてたか?」

「そんなわけないでしょ⁉」

「ちょちょ、ゆづ落ち着いて。はいはい深呼吸」


 華に言われた通りスゥー、ハァーと深呼吸してみる。すると先程までの気持ちが段々消えていき、物事が客観的に見えるようになった。


 ……待って、さっきまでの私とても変に感じるんだけど。


「にしても久々に声を荒らげる結月見たなぁ。そんなに俺に怒ってたのか?」

「いや、違うんだよ。全部私が悪いから気にしないで。今思えば恥ずかしい……」

「そういえば何が内緒だったんだ?」

「えっとね、ゆづってば相あ……」

「――内緒って言ったでしょ!」

「さーせん」

「よろしい」

「ははは」


 私と華の会話で少し笑う翔。いきなり笑ってどうしたのだろうか?


「何か変だった?」

「いや、別に。ただ二人を見てたら微笑ましいなぁ……ってな。まだ一ヶ月ぐらいしか経ってねぇのに仲良いじゃん」

「「そうかな?」」

「ほらハモってる」


 そこでまた笑い出す翔。それに釣られて私も笑った。隣にいる華も笑ってる。あぁ、私……高校生活満喫してるなぁ。




「――なんで僕はその場所にいなかったんだ……」

「そりゃその時にいなかったからだろ」


 途中で神崎くんと合流して学校に登校する。翔が神崎くんにさっきのことを伝えると少し寂しそうな感じになっていた。その姿は少し可愛らしく見える。


「だけどさぁ、もう三人で一つのグループみたいな会話じゃん。そろそろ違うグループにもお邪魔してみようかなぁー」

「すまん、それだけは勘弁してくれ。俺にはお前しかいないんだ!」

「なんで告白チックに言ってんだよ」

「だってクラスだと俺って怖がられてる感じするから拓也以外話してくれねぇんだ」


 少し寂しそうに言う翔。その姿にチクリと胸が傷んだ。


「翔、ごめんね。私もそっちに行きたいんだけど……」

「いや、このままでもいい。結月らの高校生活に支障が出るのはゴメンだからな。ほとぼりが冷めるまで学校内じゃ話さないようにしようぜ」

「ありがと……私のこと考えてくれて」

「僕は?」

「拓也は俺と一緒に怖がられようぜ」

「ええー……まぁいいけど」

「でもさ、それだとあたしたちと一緒に登校するのもアウトじゃない?」

「そうだな。じゃあこれからは別べ……」

「――嫌! 私はみんなと登校したい‼」


 翔の言葉を遮って私は言う。せっかく翔と同じ高校に入れたのに登校までも別々なんて耐えられない。


「そっか。なら仕方ないな」


 翔は私を見て微笑んでくれた。しかしその表情は嬉しそうに見えて悲しそうにも見える。一瞬心の声を見ようか悩んだが、やめておいた。




「ねぇ、今日用事ある?」


 六時限目が終わり、帰りの支度をしていた私に華が近づいてきた。


「いつも通り宮野さんと帰る予定だったんだけど……華は何かあるの?」

「うん。ちょっと奏の家に行ってみたいなぁ〜って思ってさ。ゆづも行こうよ」

「別にいいけど……宮野さんに許可取ってるの?」

「は、はい。場所は荒川くんの部屋の隣……です」

「オッケー」

「宮野さんは行く?」

「わたしは……遠慮させていただきます。二人で行ってきてください」

「うん……分かった」


 やっぱり宮野さんは行きたくないらしい。でも、最近は親や荒川くんに会ったほうがいい気がしてきた。


 宮野さんはよく自分自身を卑下している。「わたしなんか〜」とか言って。宮野さんはどれだけ他人に大事に、そして心配されているか分かっていない。


 だけど……こればかりは本人の気持ち次第だ。本人が会いたい時に会わせるのが一番だと私は思ってる。だから今回は華とだけ行くことにした。


「……ということで、奏はあたしの家に帰っといて」

「はい。分かりました。いってらっしゃい……です」

「ふふ、うん、行ってきます。それじゃあ行こ、ゆづ」

「うん。宮野さん、またね」

「はい。また明日」


 華に片手を掴まれていつもより速いペースで歩く。靴箱付近でやっと手を放してくれた。少し疲れちゃった……。なんで華は少し急いだんだろ?


「ね、ねぇ……なんで少し急いでるの?」

「だって奏の家遠いじゃん」

「時間はまだあるよ」

「時間は有限なの」


 そう言って私の前に行くと、振り返り私を見て笑みを浮かべて歩く華。


 前を見ていないのにちゃんと歩けて凄いなぁ。でも、いつもからかってくる仕返しがしたくなってきちゃった。


「――あ、華後ろ‼」

「ええ⁉」


 急いで振り返る華。しかし後ろには当然何もない。


「ふふ、嘘だよ」

「もう、マジでビビったじゃん」

「あはははは、ごめんごめん」


 そんな話をしながら学校から最寄り駅に向かって歩く。一度歩いたことがあるからか、前より着くのが早く感じた。


 薄暗い雲が空一面に拡がっており、いつ雨が降ってもおかしくなさそうだ。




「あ、降ってる」

「まぁ、今日は降るって予報だったし」


 そんなことを言いながら駅を出ると同時に傘を差す。外では小雨が降っておりポツポツと傘に当たって音を立てていた。


 私たちは今日あったことで雑談をしながら宮野さんのマンションに向かう。


 それにしてもいきなり宮野さんの家に行って迷惑じゃないかな? 向こうからすればいきなり知らない人が訪問してくるんだし。


 しかしその考えに至ったのが住宅街に入ってからだった。もう今更引き返せない。華はどう見ても行く気満々だし。


 そんなことを思っていると不意に華が止まった。突然のことだったので少し前に歩いた私は振り返る。


「どうしたの?」

「多分さぁ。今付けられてる」

「つけられてる?」

「尾行されてるってこと」

「びこ……ってえぇ⁉ なんで?」

「だからこれ持って先に向かっといて。私はその相手捕まえてくるから」


 私にカバンを預けると同時に振り返り、華は走り出した。傘は開けたまま投げ捨てている。すると華より後ろで何かが宙を舞った。


 あれは……傘? 


 傘を持っていたであろう黒髪の人はカバンも途中から捨てて走り出す。あの人が私たちを付けていたのかな。


 その人のスピードも華に劣らず速い。


「……はぁ、何で私が傘を拾わないといけないの?」


 そう言いながらも傘を回収する。幸い、まだ小雨なので当たってもあまり被害はない。


 ついでにもう一人の傘も畳んでいると手元にシールが貼られているのが見えた。そこにはペンで『宮野』と書かれている。


「え? もしかして……宮野さん?」


 遠かったのであまり顔が見えなかったが黒髪だったことは間違いない。


 一応地面に倒れていたカバンを見てみたが、いつも宮野さんが持ってるカバンだった。中にも今日の授業の用意が入ってる。


 でもどうして宮野さんが? もしかして気になったのかな?


 ……まぁ、考えていても仕方ない。どうせ私の足じゃ追いつけない。


 それにこれ以上雨が強くなると困るので、言われた通り先に宮野さんの家であるマンションに向かうのだった。

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