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心のヒストリー【現在推敲中】  作者: 西影
第5章 寂しがり屋な小石
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066 息抜き

 それは本当に唐突だった。宮野さんの過去を聞いて家に帰った日、お風呂上がりの私に華から一つのチャットが来たのだ。


『明日、ショッピングセンター行こ! 宮野さんもいるよ!』


 いきなり過ぎて少し驚いたが、どうやらそこは私もたまに行くショッピングセンターのようだ。


 明日の待ち合わせ場所、時間を設定してから私は自分の部屋に向かう。そしていつも通りノートを写して三時に眠るのだった。




「ごめんねぇ〜。待った?」「すみません、お待たせして」

「いや、私もさっき来たところだから気にしないで」

「あれ? その眼帯どうしたの?」

「実は……まだ少し痛い気がして……」

「え! ゆづ、それって大丈夫なの⁉」

「大丈夫大丈夫。あんまり気にしないで」

「でも、学校では外していますよね?」

「あまり多くの人にこの眼帯姿を見せたくないんだよ」

「なるほど」


 次の日、私がショッピングセンターの前で待っていると二人は一緒に来た。時間を見ると九時五五分。


 一〇時に待ち合わせだったので私は一〇分前に来てたのだが、華がいつもより来るのが早い気がする。


 いつもはギリギリか遅刻なのに。これも宮野さんの影響なのかな。


「それじゃあどこに行きましょうか?」

「とりあえずキャリーケース買いたいんだけどいい? 前の旅行だと結構キツかったんだよね」

「確かに結構パンパンに詰めてたね。じゃあ買いに行こうか」

「旅行……例の部活ですか?」

「そうそう、旅行部だよ。奏も入ってみたら? 楽しいよ」

「わたしは遠慮させて頂きます。……多くの人と関わるのは苦手ですので」

「そっか、それは残念」


 その言葉に華は少し残念がる。宮野さんも少し暗い顔をしている……ような気がした。


 私は人の心の声が見えるけどその力をあまり使っていない。


 実を言うと使ってはいるというか常時発動しているのだが……人の心の声は常に頭上に文字で出現しているので見ないようにしているのだ。


 だけど今日は眼帯で左目を隠しているので何も気にせず人を見れる。


「よし、とりあえず旅行グッズが売ってるところに行こうか」

「了解!」「はい」


 そうして旅行グッズが売っているところに来た。旅行の準備なんて、いつも親がしてくれていたのであまり知らなかったのだが、結構色々な商品がある。


 例えば衣類圧縮袋やコンパクトなハンガーなど。旅行ではどれだけコンパクトになれるのかが大事らしい。


「おまたせ〜」

「いいよ。別に。って何も買ってないの?」

「やっぱり最後に買うよ。今買っても邪魔になるし」

「確かに。それじゃあ他に行きたいところある?」

「あの、少し本屋に行ってもいいですか?」

「そういえば昨日言ってたね。読む本がなくなったって」

「私もちょうど買いたいやつあったからいいよ」

「ありがとうございます」


 私たちは本屋に向かう。着くと三〇分後に店の前で集合ということになった。


 私は買いたい本の場所が分からないので本屋の中にある検索機で調べる。その本の情報を印刷して振り返ると華がいた。


 後ろに誰もいないと思っていた私は驚いて大声を発しそうになるが、口を抑えてなんとか声を殺す。そして小声で華に言った。


「ちょっと、音も立てずに後ろにいたらびっくりするよ!」

「ごめんごめん。あたしって買いたい本がないから暇で。ところで何を検索してたの?」

「ん? あぁ、あれだよ。オリエンテーションで読んでたやつ」

「えっと〜……『四季病 春編』だっけ?」

「え、覚えてたんだ……」

「えへへ。記憶力には自信ありまして」


 そういえばGWの課題もノート見ただけですぐにスラスラ解いてたなぁ。やっぱり華は天才だと思う。


 手にした情報を元に探すとすぐに見つかった。『四季病』は『春夏秋冬』の四つと『桜』を合わせて五つの本がある。私はその中から『四季病 夏編』を取り、レジに向かった。華は後ろから付いてくる。


 無事に買い終わり、店外に出るがまだ一〇分も経ってなかった。


 宮野さんとの待ち合わせの時間まで後二〇分以上残ってる。


 この空き時間をどうしようか悩んでいると、華が声をかけてきた。


「ねぇねぇ、ところで『四季病』ってどういう話なの?」

「最近CMもやってるし、知らないの?」

「実は家にテレビないんだよね。私そういうの見ないし」


 何だか意外だった。私の家に対する考えで一家に必ず一台だと思ってたし。


「じゃあいつも何してるの?」

「筋トレとか参考書読んでる」

「え? 何て?」


 思わず聞き返してしまう。聞き間違い……だよね?


「だから、筋トレとか参……」

「――そういう意味じゃない‼ 何かさ、暇つぶしとかだよ」

「いや、だから筋トレと参考書読んでるんだって」

「えっと……そのぉ……文化部の女子高校生……だよね?」

「失礼なこと言うなぁ。同い年でしょ?」

「そうだけど……」


 そう言いながら華の体をじっくり見る。そういえば今まで気にしていなかったけど、足がとても引き締まっていて綺麗だ。まるで運動部みたい。


「それはそうとして、早く言ってよ。『四季病』ってどんな話?」

「私も最後まで読んでないから詳しいことは言えないけど、簡単に言えば四季病っていう病気に(かか)った男子高校生の話だよ」

「四季病って何? 実在する病気じゃないよね?」

「四季病は実在してないよ。多分。流石に無いと思う。簡単に言えば一年ちょうどで死ぬって病気。でも初期症状が倦怠感だけで、寿命が二ヶ月を切ると段々体が動かなくなるんだって。主人公はたまたま発症して一ヶ月の段階で気付けて日常が一気に変わる……的な話」

「ふぅん。じゃあ後で春編貸してくれない? ちょっと気になっちゃった」

「分かった。学校行った時にね」

「――お待たせしました」


 そんなことを話していると宮野さんが帰ってきた。左手には見た感じ三、四冊ぐらい入ってる袋がある。華はそんな宮野さんを見ると踵を返して歩きながら言った。


「別にそんなに待ってないしいいよ。それじゃ次行こ」

「そうだね」

「はい」


 それから色んなところで商品を見たり買ったり、食べたりして時間を過ごした。結果的に私は四季病 夏編とスマホに付けるストラップを二つを買ってショッピングは終了する。


 そして夕方。夕日で照らされた道を私たち3人は歩いていた。ガラガラと華が引っ張っているキャリーケースの音を聞きながら言う。


「久々にこんな買い物したよ。誘ってくれてありがとね」

「別にいいよ。また三人で行こ」

「…………」

「ん? 宮野さん。黙り込んでどうしたの?」

「あ、ええと。すみません。少し考え事してて……」


 もしかして涼真くんのことを考えてるのかな。荒川くんの話を聞いてから、何かあるとすぐにそれが浮かんでしまう。


 私は小さく首を横に振ると立ち止まった。


「宮野さん!」

「はい? どうしましたか?」

「えっと、これ! 華と買ったんだ。受け取ってくれない?」


 私はカバンから小さな袋を宮野さんに渡す。中に入ってるのは……。


「これ、望月さんが買ってた黒猫のストラップ……ですか?」

「うん。華と相談して買ったんだ。三人同じ種類のやつだよ」


 そう言ってスマホを見せる。そこには私がさっき買ったストラップが付いていた。華も同じストラップが付いてるスマホを宮野さんに見せる。


「え、でも何で……」

「宮野さんの誕生日プレゼントだよ。もう過ぎちゃってるんだけどね」


 四月二四日。私が宮野さんのことを忘れているうちにそれは過ぎていた。それを昨日華が報告してくれて、急遽プレゼントを買うことにしたのだ。


「ありがとう……ございます。大切にしますね」


 そっとストラップを胸に当てて感謝を言う宮野さん。その声は少し震えている気がする。


 私と華はお互いの顔を見て笑みを零した。


 


 その日の夜、華が動画を送ってきた。それはスマホにストラップを付ける宮野さんの動画だ。


 最後に気付いた宮野さんは少し顔を赤くしながらこっちに向かい……動画は終わる。ストラップを付ける宮野さんは嬉しそうな顔をしていた。


 どうやらサプライズ成功だったのかな。

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