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心のヒストリー【現在推敲中】  作者: 西影
第1章 心峰高校
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006 入学式③

「それじゃまた放課後でね」

「おう、またな」


 私は翔と別れてA組に入る。中は静かで大多数の人がスマホを触っているか本を読んでいた。


 何人か話している人もいるが、塾や中学が一緒だった人だろうか。


 こういう静かなクラスの方が私は好きだ。この方が何も気にせず楽になれる。


 でも数日経ち、グループの形成が終われば騒がしくなるだろう。そう思うと少し悲しい。


 私は賑やかで、特に笑いが溢れているクラスが苦手だから……。


  私は黒板に貼られている座席表を見に行く。


 お、私最後尾だ!


 欲を言えば窓側の列の方がよかったが、私の名字でその位置はまずないだろう。だから仕方ない。


 静かに廊下側二列目の最後尾に座る。


 前の黒板には大きな文字で『Congratulations on your entrance!』と書かれていた。


 確か、入学おめでとうって意味だよね。


 英語は苦手だから少し不安だけど合ってるはず。今日は入学式なんだし。


 周りはピンクのチョークで描かれた桜の花びらなどで鮮やかにされていた。


 ……それにしても暇だ。まだ入学式まで20分もある。張り切って早く来なければよかった。読んでる途中の小説は家に忘れてきたし、話し相手はもちろんいない。


 こんなとき、翔がいてくれたらなぁ……。


 翔と話すときはいつも時間が早く流れる。それだけ楽しいってことなんだろうけど、寂しくもある。


 ほんと、どうして翔と同じクラスじゃないんだろう。こういうのを物欲センサーって言うんだっけ。


 仕方なくスマホを開けて普段は見ないSNSや写真のフォルダを見て時間を潰す。


 そうして過ごすこと20分。ドアから声が聞こえてきた。


「もうすぐ入学式だから体育館に移動しなさ~い。椅子に出席番号が書いてあるからその席に座ってね」


 見た目ですぐに先生だと分かった。茶髪のセミロングにスーツを身に(まと)っている女性。


 身長は私より少し高いぐらいだ。年齢も若そうで話しやすそうな雰囲気が出ている。この先生は当たりかもしれない。


 先生の言葉に促されるように私は席を立ち上がった。




 入学式は国歌を歌うことから始まり、新入生代表の挨拶、校長先生、PTA、生徒会長と話が続く。


 新入生代表は同じクラスの井上(いのうえ)さんらしい。「暖かな春の訪れと共に〜」とよく聞きそうな新入生代表の挨拶を言って席に戻っていった。


 代表の読む挨拶ってある程度の例文があるのかな。私は経験がないから知らないけど。


 それから校長先生の話に続く。校長先生の話は長いとよく言われるけど、他の人の話も長いと思う。……そして面白くない。


 あくびを噛み殺しながら興味もない話を聞かされ続けていると、段々眠気が訪れてきた。思考が働かなくなってきて、瞼が重たくなる。


 眠い……。昨日はちゃんと寝た……のに……。


 刹那、左肩が軽く揺らされた。突然のことで意識を取り戻し、私はすぐに前を見る。


 壇上ではタイミングよく生徒会長の話が終わり、姿を消そうとしていた。どうやらPTAの話中は寝ていたらしい。


 今度はスクリーンが現れ、校歌が映される。


 私含め新入生は席を立つと歌い始めた。しかし周りも私のように気だるげに歌っており、元気に歌う人などいない。


 歌い終えると教頭先生が壇上の真ん中に立ち、マイクを片手に持った。

 

「それでは各々の教室にお戻りください」


 その言葉を合図に新入生たちは歩き始める。多分、この人が私を起こしてくれたんだよね。


「あのっ!」


 私の言葉で振り返ってくれる。セミロングの黒髪に丸眼鏡をかけている女子生徒。少し酷く言うと目立たなさそうな人だった。


「さっきは起こしてくれてありがとう」

「……どういたしまして」


 彼女は私と視線を合わせないで答えるとすぐに前を向いて歩き出した。私も彼女の後ろを歩いてA組に向かう。


 A組に戻るとさっきより少しだけ会話が聞こえてきた。入学式で何人かの生徒は話せる人を見つけたのだろうか。


 私も周りに合わせて早速前にいる先程の丸眼鏡の女子生徒に話しかける。


「ねぇ、名前を教えてもらってもいい?」

「……わたしですか?」

「う、うん」

宮野(みやの) (かなで)

「宮野さんか。私は望月 結月、よろしくね」

「よろしくお願いします」


 互いに自己紹介が終わり宮野さんとの雑談を始める。見た目からコミュ症と思っていたけど、話し上手だったので意外と楽しかった。


 こんな人が近くの席なんてラッキーだ。翔と同じクラスじゃないのは残念だけど、早速女友達が作れて嬉しいな。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  冒頭3話を読んだだけで、この作品が何を見せたいか、という部分がそろうので、読み手の注意をひきつける要素になっていると思います。  余計な描写を書きすぎない文体はすっきりとしていて読みやす…
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