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心のヒストリー【現在推敲中】  作者: 西影
第5章 寂しがり屋な小石
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058 本当に望んでいるもの

 一時限目が終わり、私、華、宮野さんの三人は早速二組に向かっていた。後ろのドアを開けて中を覗き込む。


 中は一組ほど賑やかだった。教室の外から翔を探す。


 見渡していると窓側から二列目の真ん中付近の席に座っている翔を見つけた。翔は神崎くんと喋っている。


 私が変に気にしているだけか、翔の周りを神崎くん以外が避けている気がした。 


 気のせい……だよね。


 私は嫌な考えを消して、人の頭上を見ずに翔に近づく。


「ねぇ、翔。聞きたいことがあるんだけど……」


 私がそう言った瞬間、二組が一気に静かになった。そして多くの視線を感じる。


 ――逃げたい……。


 嫌な空気が生まれて、今すぐにでも逃げ出したい気持ちになる。それでも、何とかその気持ちを抑えた。


 するとそんな空気も一瞬でなくなる。段々と周りが何もなかったかのように元の賑やかさに戻っていった。


 もしかして変に意識しすぎただけかな?


「それで、どうかしたか?」

「あ、えぇとね……」


 いざ聞こうとするが、どういうふうに聞けばいいか悩んでしまう。


 いきなり能力の話なんてしたら変じゃないかな? 何か世間話から始めた方がいい? でもどうやって繋げよう?


 私がどう切り出せばいいか悩んでいると後ろにいた華が答えた。


「能力っていうか、異能の力? 特殊能力? まぁそこら辺の力について教えてほしいんだ」

「……もうそんな時期か……」

「時期?」


 私の質問に翔は口を隠す。もしかして口が滑ったってやつなのかな。何だか翔にしては珍しいかも。


「いや、まぁそれはこっちの話だ。それよりも、能力なら拓也の方が詳しいと思うぜ」

「おい」


 神崎くんは翔を睨みつけるが、そんなの気にしないと言わんばかりに翔は笑いかける。


「いいじゃないか。それに詳しいのも事実だろ」

「そうだけど……まぁいいか。それで、どんなことを知りたいの?」

「えーとね。暴走とか?」

「暴走?」

「あ、えぇとね……小説の考察とかしたいんだけど、あまりそういうの知らないからさ。少しでも情報を知ろうと思って……」

「それって僕の知ってる情報でもいいの?」

「うんうん。それでいいから」

「そっか、じゃあ……っとごめん。今日は時間割変更で移動教室なんだよね」


 時計に目を向ける。確かにそろそろ移動したい頃合いだった。それを聞いた華はすぐに提案する。


「分かった。じゃあ昼休みに話を聞かせてもらうよ。あたしも午前は移動教室あるしね。それじゃあまたね」

「またな」

「分かった」

「また屋上でね」

「…………」


 私たちは二組を出て一組に向かう。私は歩きながら華に言った。


「華、本当にありがとう。華がいなかったら話進まなかったかも」

「ほんとーになんで聞かなかったのよ。あたしみたいに言えばよかったじゃん」

「いや〜……なんか変だと思ってさ」

「どーゆうことよ。それに奏も!」

「すみません」


 華に叱られて身を縮める宮野さん。華はそれを見てため息を吐いた。


「まぁいいや。……で、昼休みはどうするの? あたしたちと一緒に食べる?」

「すみません。お昼は一緒には……」

「んー……分かった。取り敢えず何か気付いたことあったら言ってね」

「はい……」


 一組に入り、次の用意を始める。宮野さんもそうだろうけど、昼休みは私も楽しみにしていた。


 ……もしかしたら私にも役立つ情報があるかもしれないしね……。




 それから時間は過ぎて昼休み。移動教室から帰ってきた私と華はお弁当を持って屋上に向かっていた。


 屋上のドアを開けると、いつものところに翔が座っていた。その周りというか、屋上を利用している生徒は少ない。


 日に日に屋上を使用している生徒が減ってきている気もする。私はそれを少し気にしながら翔に近付いた。


「「おまたせー」」

「いや、あんまり待ってねぇから大丈夫だぞ。拓也は購買に行ってる」

「分かった。ちなみに如月くんはどれぐらい知ってる?」

「知ってるって能力とかのことか?」

「うん」

「んー……あんまり知らねぇな」

「へぇ、男子なのに意外だね」

「そうか? いや、少しぐらいは知ってるけどさ……お前らが知りたいのは暴走だろ。そこら辺は知らないんだ」

「ふぅん」

「――おまたせ」


 そんな話をしていると神崎くんの声がドアの方から聞こえてきた。


「あたしたちもさっき来たところだよ。それよりも早く話を聞かせて」


 神崎くんは翔の横に座ると持っていたビニール袋を置いて私たちの方を向いて言う。


「うん。えぇと……暴走の話だよね。暴走ってどういう感じなのかな?」

「えっと……自分で能力を制御出来ないって感じ」

「なるほど。……僕が知っている能力はね、自身の望みを叶える為に発生するんだ。だけど、発生してすぐは制御できないんだよ」

「望みを叶える為の能力なのに、発生してすぐに制御できないんだ。じゃあ時間が経てばどうにかなる感じ?」

「違うよ。能力を制御するには()()()()()()()()()()を実現させないといけないんだ。例えば強大な敵が現れて死にそうになった場合。その時って大体望んでいることは『生きたい』とか『死にたくない』とか『やつを倒したい』でしょ? だからこの場合は身の安全の確保や敵を倒すことが出来れば能力の制御が可能になるんだ」

「なるほどぉ。ゆづは何か聞きたいことはある?」


 いきなり話を振られて返答に困る。そう言えば、私の左目はどうしてこうなったんだっけ?


「……えっと……神崎くんが知っている能力は()以外のことでも発生するの?」

「……うん。凄く稀にね。過度な虐待やイジメ、他には絶望とかね。そういう人たちは能力の制御が特に難しいんだ。たまに自分が望んでいるものが分からないときもあるし」


 もしも、私のこの能力が神崎くんの言った能力の場合……考えられるのは絶望なのかな?


 でも、寝てる間に絶望って……夢とか? そんなの内容も覚えてないし、制御できない気が……考えるのやめよ。


 どうせ神崎くんが言ってるのは空想の中の能力だし。


「そっか、ありがと。じゃあ私たちはもう行くよ。お弁当も食べ終わっちゃったし。それじゃあまたね」

「またね」

「また放課後な」

「またな」


 私と華は屋上を出ると一組に向かうのだった。

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