051 頼れる人間
《佐々木 華視点》
流石にこれ以上課題をしたくなかったあたしはゆづの家から出る。
お昼ご飯の後は遊びという可能性もあったが、ワンチャン英語の課題もやってたかもだしね。ここは逃げるのが妥当だろう。
勉強から逃れられたことが嬉しくなり思わずスキップをして帰路を辿る。するとポケットに入れているスマホがブルブルと震えた。
画面を見るとまさかの人物だったので足を止めてしまう。
あたしは慎重に応答ボタンを押すと耳元にスマホを当てた。
「もしもし? どうしたの? …………そんなの覚えてるに決まってるじゃん。……えぇ! それは急だなぁ。別にいいけど。……うん、それじゃあマンションで待ってるね。住所はすぐ送るから。それじゃあまたね」
あたしは住所を打ち込むとマンションまで走り出す。取り敢えず散らかっている部屋を片付けないと。
マンションに帰るとすぐにリビング、自分の部屋を片付け始めた。それが終わると色々なところを雑巾で拭いておく。
するとピンポーンとインターホンの音が聞こえてきた。モニターを見てみると電話をしたあの人だ。
「はーい。今開けるよ」
入り口のロックを解除してあたしはまた整理を始める。インターホンがもう一度鳴ったのでドアを開けに向かった。
「いやぁ、いきなり『泊まりたい』っていうものだからびっくりしたよ。ほら、上がって上がって」
「お、お邪魔します」
あたしの目の前にいるキャリーケースとカバン持っている人は同じクラスの宮野さんだ。
学校ではよく話している。でも最近はゆづと一緒にいたので話していなかったかも。
宮野さんはリビングに荷物を置くとあたしに向かって頭を下げた。
「本当にいきなりすみませんでした!」
「うぉ! びっくりしたぁ。いいよ、あたしひとり暮らしだし。それに……」
「それに?」
「なんかさ、宮野さんってあまり人を頼らない感じだったからさ。それであたしに頼ってきてくれたのが嬉しかったんだ」
「……そう、ですか。それが原因なのでしょうかね……」
「原因?」
「あのですね、実はわたし……」
宮野さんは言いかけるが黙って下を向く。それだけ言いたくないことなのだろうか? それでも宮野さんは首を左右に振って言った。
「――わたし、人から忘れ去られているらしいんです!」
「えええぇーーー‼」
その言葉にあたしは近所迷惑並の大声を出してしまうのだった。




