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心のヒストリー【現在推敲中】  作者: 西影
第5章 寂しがり屋な小石
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050 天才

「……で、これはいったいどういうこと?」

「あははー……これにはマリアナ海溝よりも深いわけがありまして……」


 私はソファーから華を見下ろすようにして座っていた。華は床に正座しており、私たちの間にある机にはGW課題が置かれている。


「数学は初歩的な問題しかない一枚目と二枚目は終わってるけど丸つけなし。残り四枚は手も出してない。生物は終わっているけど英語も数学同様初めの方だけ。……はぁ……」

「そんな深いため息する必要ある?」

「あるよ! 絶望的だよ! 何で手を付けてないのか言ってみてよ!」

「分からなかったのと教材全てが学校のロッカーにあるからだよ」


 さも当然のように言ってくる華。その姿を見て思わず立ち眩みが起こってきた。


「うん、知ってた。絶対にそうだと思ってたよ……いつも授業は寝てて置き弁だし。……取り敢えず教材取りに行くから準備しといて」

「分かった」


 私は自分の部屋にある数学と英語の教材を取りに行く。そしてリビングに戻ると机の上に数学の教材を置いた。


「取り敢えずこれ見ながら課題を進めて。私は英語の勉強するから」

「ゆづも課題終わってないの?」

「終わってるに決まってるでしょ。今からやるのは予習だよ」

「さっすがぁ。ゆづは凄いね」


 パチパチと手を鳴らしながら華が言ってくる。


「そんなこと言う暇あるなら手動して」

「イエス、サー」

「いや、私男じゃないんだけど」

「ん?」


 私の返答に頭にクエスチョンマークを浮かべる華。なのでちゃんと説明する。


「イエス、サーは男性に対して使うの。女性に言う場合は『イエス、マム』ね」

「イエス、マム」

「口より先に手を動かす」

「イエス、マム」

「じゃあ課題頑張ってね」

「イエス、マム」

「分からないことあったら教えるから言ってね」

「イエス、マム」

「うるさい」

「イエ……」

「――怒るよ?」

「……すみませんでした」


 華の言葉に少し腹を立てながら英語の予習を始める。その怒りも時間が経てばすぐに消えていった。


 四〇分以上経ち、華の様子を見るために顔を上げる。ある程度進んでいると思っていたがまだノートを読んでいるところだった。


「あれ? まだ一問もできていないの?」

「うん、でも今ノート読み終わったからここから一気に終わらせるよ」


 そう言って華は問題に取り掛かった。すぐに覚えれるほど数学は簡単ではない。だからすぐにノートを見ながら解くだろう。


 ……そう思っていたのにすぐに華は問題を解き始めた。それから一問も手を止めずに、先程は分かっていなかったはず問題を解き終わる。


 そして次の問題も少し考えると一度も手を止めずに問題を解いた。しかもちゃんと合っている。


「なんでもう解けるようになってるの?」

「そんなの一回見たからね。一度見ればある程度覚えれるんだ」

「いいなぁ。私もそういう天才みたいな力欲し……かったな」


 言っている途中に左目の力を思い出したが、それとこれとは話が違うだろう。


 応用問題とかは流石(さすが)に分からなかったようで、そこは私が教えてあげる。すると一三時には数学の課題を全て終わらせてしまった。あとは英語だけだ。


「うぅーん……疲れたぁ!」

「お疲れ。もう昼だけどご飯はどうする? ここで食べる」

「ううん、今日はもう帰るよ。本当にありがとね」

「それじゃあまたね」

「またね」


 私は玄関まで連れて行くと手を振って華を見送った。まさか華があんなにも天才だったとは。


 春風(はるかぜ)さんの言っていたことも本当だったら華は文武両道の凄い人になる。


「凄かったなぁ」


 私しかいないリビングで私はそう呟くのだった。

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