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心のヒストリー【現在推敲中】  作者: 西影
第4章 GW 香川旅行
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044 [心]

 香川旅行最終日。なぜか昨日のように五時に起きてしまった私はジュースが飲みたくなったので、サイフを持って外に向かう。


 すると旅館の入り口に置かれている丸太イスに座っている高橋先生と橘先輩を見つけた。二人は何か話しているようで私には気付いていないようだ。


 その様子を見て少し悪戯心が湧いた私は足音を立てずにゆっくりと近づいた。


 ……それが間違いだったのだろう。私は聞いてしまった――二人が話している内容を。


「それにしても不思議だよね。如月くんの右目が見えなくなるなんて……」

「そうですよね。病院の先生曰くどこにも異常はないみたいですし」


 思わず足を止めてしまった。


 翔の右目が見えない? どういうこと? もしかして入院してたのって……。でも病院の先生はどこも異常がないって。


「いきなり右目が見えなくなるだなんて……。アタシなら困惑というか、絶望というか。よくそれを受け入れられましたね」

「生活だって急に不便になって。無理をして。この間の体育もちゃんと参加してたらしいですよ。本人から『目のことは他言無用でお願いします』とか言われたから一応職員にも内緒にしてるんだけど……」


 ずっと無理していた? 私たちに頼らずに? ……そんなに私って頼りなかったのかな……。


 聞きたくない聞きたくない聞きたくない。


 私がどれだけそう思っていても高橋先生と橘先輩は話を続ける。


「それにみんなに迷惑をかけたくないからって隠そうとする辺り優しいというか何というか……。もうちょっと周りを頼ってくれたらワタシも嬉しいんだけど」


 もっと頼ってほしかった。昔からよく一緒にいて、家族みたいに仲もいいって思ってたのに。


 体から力が抜けて地面に膝がつく。手にしていたサイフも地面に落としてしまった。


 その音で二人は私の方を振り向く。その顔は驚いているように見えた。


「望月ちゃん……さっきの話聞いて……た?」


 橘先輩の質問に答えれる余裕なんてなかった。それほど私は冷静さを失っていた。ガンガンと私の頭に響くような頭痛が私を襲う。


 その痛みはどんどん強くなる。『これに身を任せて気絶しろ』と、現実から逃げる為の道を指し示してくれているようだ。


 現実と向き合うために頭痛から抗う……そんな選択肢は私にはなかった。 人として私はそんなに強くない。


 なので私は頭痛を受け入れて意識を落とすのだった。




 目を覚ますと雲一つない綺麗な青空が見えた。体を起こして周りを見渡す。そこにあった光景を見て驚きすぎて口から声が出なかった。


 周りは水色の地平線が広がっていて本当に何もない。少なくともこんな空間は日本に存在しないだろう。


 下を見てみると地面が見えなかった。あまりの高さに足の力が抜けて尻もちを付く。


 そんな私をあざ笑う少年のような声が後ろから聞こえてきた。


「あははは、本当に面白い反応するなぁ。それだけで呼んだ甲斐があるようなものだよ」


 すぐに後ろを振り返る。そこには本当に少年が立っていた。


「あ、貴方は?」

「僕は創造神。よろしくね、望月 結月さん」

「創造神? それにどうして私の名前を……」

「それは僕が神様だからさ。……ってそんな話をするんじゃなくて。ねぇ、君は大好きな人に隠し事をされていたよね。それもとても大きな」


 そうだ。翔は右目が見えないんだ。それを橘先輩と高橋先生の会話で知ってしまって……。


「私なんて頼りにならない……って思ったんだよね」

「……うん」

「隠し事されてどう思った?」

「……悲しかった。もっと私にも頼ってほしかった。相談……してほしかった」


 言葉を紡いでいくと何かが弾けた気がした。どんどん声は震え、ついには涙まで流れてきた。


「私は! 翔の力になりたい‼ 翔の理解者になりたい!」

「うん。僕は君の力になる為に来たんだ。だから君にはこれをあげるよ」


 いつの間にか創造神の右腕の周りに紫色の粒子が飛び回っていた。それを見た瞬間、全身の鳥肌が立ち上がる感覚を覚える。


 ――危険。直感的に私はそう感じた。私は少しずつ後ずさる。


「ねぇ、どこに行くの?」

「こ、来ないで‼」


 また一歩と後ずさろうとした瞬間、パチンと指を鳴らす音が聞こえた。


 途端に足が動かなくなる。ピクリとも動いてくれない。まるで私の足が自分のものじゃなくなったみたいだ。


「大丈夫。この[心](ハート)さえあれば君は如月 翔の理解者になれるはずだよ。……ちゃんと君の目的を果たしてね」


 創造神は私の近くまで来ると私の左目に右手を置いてきた。恐怖のあまり目を瞑ってしまう。


 真っ暗な視界。しかし左目の瞼の隙間からあの紫色の粒子が入ってきた。


 粒子は光を発してまるで妖精のように飛び回っている。その光景は美しいと思った。


 どんどん粒子の光は強くなっていき、最後には何も見えなくなる。視界がまた真っ暗になった時には紫色の粒子は消えていた。


 ゆっくりと目を開ける。そこにはニコニコとしている創造神の姿があった。そう認識すると創造神の上に文字が浮かび上がってくる。


"よし、ちゃんと[心](ハート)を与えれたっぽいね。これは多分見られてるけどまぁいっか。それじゃあまたね"


 創造神が手を降ると私の真下から亀裂が入る。逃げようとするが足が動いてくれない。私は抗うことができず、穴に落ちてしまうのだった。

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