043 診断結果
私が先程の結果を考えないように自分で持ってきた本を読んでいると、みんなが起き始めてきた。
ある程度キリがいいところで本を閉じると、スマホの画面を見る。時が経つのは早いもので、いつの間にか七時になっていた。
私は本をカバンに片付けて橘先輩が点けたテレビを見る。そこにはいつものように天気予報のコーナーがやっていた。
どうやら今日の昼頃から雨が降るらしい。まぁ、今日も外に出ないので意味はないのだが。
明日は晴れの予報が出ている。これなら明日は存分に楽しめるだろう。……そういえば明日はどこに行くのかな?
それはまだ発表されていない。……気になる。でも多分答えてくれないんだろうな。
私は思わずため息を吐くのだった。
「ふわぁ……」
そのタイミングで佐々木さんが欠伸をしながら起き上がった。
思わずドキっとした。心臓が早鐘を打つのが分かる。
結局昨日は怒らせた後に話してないし……本当に不安だ。まだ怒ってるよね。
「あの、佐々木さん……」
眠り眼を擦っている佐々木さんに話しかける。佐々木さんは「ん?」と不思議そうな声を出してこっちを振り向いた。
「望月さん、おっは〜」
「あ、うん。おはよう。それと……昨日は変な事言ってごめんなさい」
意を決して頭を下げて佐々木さんに謝る。これに対して佐々木さんは何て思っているか分からない。
蒸し返されて困っているのか、怒っているのか……。
そんな私の考えをよそに佐々木さんは軽く言った。
「うん、いいよ」
「え?」
思わず聞き返してしまう。だって珍しくあんなにも怒っていたのに、そんな答えが返ってくるなんて思ってなかったから。
「だーかーら! いいよって言ったの。聞こえなかったの?」
「いや、聞こえてたけど……まだ怒ってないの?」
私の言葉に首を傾げる佐々木さん。そして自分のスマホを操作して、「なるほどね」と言葉を零した。
「もういいよ。望月さんの反応は仕方ないと思うし、あたしも理由説明してないっぽいしね」
そう言うと、佐々木さんは立ち上がり、私の手を引いた。
「ほら、みんなも食堂に向かったし、あたしたちも行こうよ」
時は経ち昼頃。椿さんの美味しい料理を食べ終えた私と佐々木さんは椿の宿の廊下を歩いていた。
私は伸びをしながら佐々木さんに話しかける。
「ん〜〜……今日の昼も無事に終わったね」
「そうだね。それに仕事も慣れてきたからすぐに終わったし」
先輩二人は高橋先生と明日の打ち合わせ、翔と神崎くんは椿の宿の外にある自販機に、飲み物を買いに行った。
佐々木さんは今も昨日のことがなかったみたいに、いつも通り過ごしている。だけど無理をしているように見えない。
もしかして寝るだけで昨日のことがどうでもよくなるような人なのかな? もしそうなら、そういう人を初めて見た気がする。
部屋に戻ると佐々木さんは机の上にある心理テストの本を手に取った。
「ねぇ、望月さん。暇だから適当に開いたページの心理テストしない?」
「いいよ」
「それじゃあね〜……これ! 『あなたは長いトンネルの中を歩いています。出口に一人の異性が立っていました。あなたは今誰を思い浮かべましたか?』」
「――え?」
「ん? どうしたの?」
「いや、何でもない」
さっき佐々木さんが言っていた心理テスト……今日の朝、勝手に読んだ心理テストだ。その診断結果は確か運命の人……。
途端に顔が熱くなった。
「ちょ⁉ どうしたの? いきなり顔赤くして」
「な、何でもない。それより佐々木さんは誰が浮かんだ?」
「あたし? 気になっちゃう?」
私はコクリと頷く。するとニヤニヤとしている顔を私の耳に近づけて言った。
「……如月くんだよ」
「――え?」
つまり佐々木さんの運命の人が翔? そんな……。
「ごめんごめん嘘だって。だからそんなこの世の終わりみたいな顔しないで。普通にからかっただけだから」
「どういうこと?」
「あたしこの心理テスト知ってるんだ。まぁまぁ有名だしね。ちなみにあたしの場合は誰も浮かばなかったよ。つまり運命の人はいないのかな」
「よ、良かった〜」
「「ただいま」」
佐々木さんとそんな会話をしていると翔と神崎くんが帰ってきた。
「おかえりー」「おかえりー!」
「結月どうした? なんか良いことでもあったか?」
「どうして?」
「結月がすげぇ嬉しそうな笑顔してるからな」
「私が?」
「あぁ」
どうやらそれだけ佐々木さんの診断が嬉しかったらしい。
「そうそう、せっかく四人いるんだから昨日の心理テストの結果を言うよ。一応昨日の解答はここに書いてるから置いておくね」
佐々木さんはそう言うと昨日開いたページの次のページを見て言った。
「猫になったら〜ってやつなんだけど、『一番を選んだ人はストレスがない生活を求めるんだって。そして面倒事を遠回しにする傾向があるらしいよ』」
「確かに面倒事を遠回しによくするな」
「あたしも。ついつい遠回しにしちゃうんだよね。それでは次に『二番を選んだ人。その人は好きな人と一緒にいられることが一番幸せと感じる人だって。そして愛されたい欲求が強いらしいよ』。ねっ? 望月さん?」
ニヤつきながら挑発的に言ってくる佐々木さん。やっぱりまだ根に持ってるんじゃないの?
「別にいいでしょ。好きな人とはいつでも一緒にいたいものだよ! それの何が悪いの!」
「いや、悪いとは言ってないんだけど……。まぁ、気を取り直して『三番を選んだ人。その人が求めているものはここにないらしいよ。ロマンチックな気分を味わうために空想に逃げがちだって』。神崎くん気を付けてね」
「んー……僕ってそんなにロマンチックなこと好きかな?」
「いや、拓也には似合わねぇわ〜」
「そんなの自分が一番知ってる」
「一応言うと、『四番を選んだ人は思い通りの人生を求めてるんだって』。それじゃあ次の心理テストの答え見よっか。望月さん、ページ分かんないから開いて」
心理テストの本が私に渡される。昨日の記憶を頼りにページをひらいていると、さっきの結果が蘇った。
――あの心理テストって何を意味してたんだろ?
もしかしたら、また自分の羞恥を晒してしまうかもしれない。
「望月さん、何で手を止めてるの?」
いつの間にかページを開く手が止まっていたようだ。私はパタンと本を閉じると佐々木さんに返した。
「あのさ、次の心理テストの結果は各自で見ない?」
「え? 何で?」
「いやぁ、今更ながら恥ずかしくなってきちゃって……」
「結月が嫌なら俺は別に構わんぞ」
「えぇ……じゃあ何する?」
「僕UNO持ってきたよ」
ということでUNOをすることになった。途中で先輩たちも入って六人でする。予想以上に楽しくて一七時まで暇を潰すのだった。
二回目の心理テストはサイコパス度を示しています。
仕事が終わり家に帰ると、飼い猫がいなくなっていました。さて、いなくなった原因は次のうちどれだと思いますか?
一,窓から脱出した。
サイコパス度一〇パーセントの一般人。
人の痛みもよくわかり、喜怒哀楽もきちんと持っているあなたには、サイコパスな要素なんて、どこにも見えません。
二,泥棒が盗んだ。
サイコパス度七〇パーセントの責任転嫁タイプ。
あなたはサイコパスの要素を持っているかもしれません。
トラブルがあると、すぐに他人のせいであると責任転嫁したり、自分は悪くないと自己保身に走る傾向があるようです。
三,実は隠れている。
サイコパス度九五パーセントの疑心暗鬼タイプ。
あなたはもしかすると、相当なサイコパスかもしれません。
表面上はニコニコと人懐っこい笑みをたたえていますが、他人が自分に何かよからぬ思いを抱いているのではないかという「被害者妄想」がかなり強いかも。
四,猫なんていなかった。
サイコパス度三五パーセントのひねくれ者タイプ。
あなたはサイコパスというよりは、ただの「ひねくれ者」という方が正しいかもしれません。
他人の言うことをあまり素直に信じず、あまのじゃくな発言や行動が目立つみたい。
なんでも素直に受け止めるのはバカらしい、あるいは正直者が損をすると思っている節も。
皆さんはどうでしたかね? ちなみに自分は三番を選びました。




