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心のヒストリー【現在推敲中】  作者: 西影
第4章 GW 香川旅行
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041 実は有名人⁉

 今日の夜の仕事を全て終わらせた私、佐々木さん、橘先輩は大浴場に入るために脱衣所にいた。昨日と同じロッカーに着替えやバスタオルを入れて浴場に入る。


 ちゃんと体を洗った私はみんなより先に湯船に浸かった。


「ふわぁ……」


 疲れているからか思わずそんな腑抜けた声が洩れる。そんな私の声に反応する人がいた。


「気持ちよさそうな声を上げますね」

「――え?」

「あはは、いきなりすみません。今日から二泊することになった春風(はるかぜ)です」


 今は旅行同好会の人以外誰もいないと思っていたけど、一人だけ一般客がいたようだ。見た感じ春風さんは私と年齢が近いと思う。


 あれ? でも確か春風さんって六人客で来てたよね。何で一人でお風呂に浸かってるんだろ……。


「あの、春風さんって他にも女性客はいませんでした?」

「あ〜。実はあと二人ほどいるんだけどね、一人の足が不自由なんですよ。そしてもう一人はその子と仲が良いから、二人で部屋のお風呂を使ってるんです」

「そうなんだ」

「……あの……いきなりですみませんが、もしも貴方の寿命が残り少かったら何をしたいですか?」

「え?」


 突然の質問に戸惑ってしまう。余命……か。そんなの今の私には関係ないと思ってたから考えたことがなかったなぁ。でも、私だったら……。


「えぇと……私は好きな人の近くにいたい……です」

「そう、やっぱりそうだよね。ごめんね、いきなりこんなこと聞いちゃって」

「いえいえ、私はあまりそういうの考えたことなかったので、今考えて良かったと思います」

「貴重な意見ありがとね」


 春風さんに合わせて半身浴をしながら話す。すると佐々木さんと橘先輩も体を洗い終わったようだ。


 二人は湯船に浸かり、佐々木さんは私たちの方にやって来た。


「望月さん、そっちの人は?」

「この人は春風さんだよ」

「初めまして、春風です。……?」


 春風さんは佐々木さんの顔を見て何かを考え始めた。それに佐々木さんは困惑する。


「えっと、あたしの顔に何か付いてる?」

「いや、違うんです。どこかで見た顔だと思いまして……。お名前を伺ってもいいですか?」

「佐々木。佐々木 (はな)だよ」


 佐々木さんの名前を聞いた春風さんは一瞬驚いたような顔になる。そして恐る恐る佐々木さんに聞いた。


「……もしかして中学の頃バレー部に入ってました?」

「あ、はい」

「思い出したぁ! 顧問の先生が注意人物って言ってた人だ」

「ちゅ、注意人物って。言い過ぎだよ」

「いやいや、全てのプレイが全国級の人は注意しないといけないでしょ。中学最強の選手と言われてたし」

「え、待って⁉ 佐々木さんってそんなに凄い人だったの⁉ 聞いてないよ!」

「いや、だって言ってないし……」


 まさか佐々木さんがそんなに凄い人だったなんて……。そんな人が身の回りにいなかったので、何と言葉に表せばいいか分からない。


「それじゃあそろそろ出ようかな。望月さん、佐々木さん、また縁があれば会いましょ」


 湯船から立ち上がった春風さんは浴室を後にした。それを見て私は佐々木さんに聞いてみる。


「ねぇ、何でバレー部に入らないの? 強いんだよね」

「その話はもういいよ。あたしはもうバレーなんてしないよ」

「えぇ……それってもったいないなくない?」

「…………」

「才能があるんだろうし、きっと高校でも……」

「――うるさいなぁ、あたしはやらないって言ってるじゃん!」


 バシャンと水しぶきを立てて佐々木さんは立ち上がる。初めてみる佐々木さんだった。そのせいか呆然としてしまう。


「……あたし、今日はそろそろ上がるよ」


 佐々木さんはタオルを持って浴室から出ていった。その姿はまるで思い出したくないものから逃げる人のように見えた。


「ちょっとま……」


 取り敢えず今すぐ謝りたい。佐々木さんのことを何も考えずに、変なこと言って……。


 追いかけようとする私の腕を誰かに掴まれる。相手は橘先輩だった。


「放してください!」

「それは出来ないかな。それに今言っても変に気持ちが高ぶるだけだし」


 正にその通りなので否定できない。私は再び湯船に浸かると少し時が経つのを待つのだった。

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