038 椿の宿
私たちが高橋先生の家に着いた頃には高橋先生以外は集まっていた。
挨拶を済ませると橘先輩が高橋先生の家のインターホンを鳴らす。その行動を待っていたかのように高橋先生はすぐに家から出てきた。
「「「「「「おはようございます」」」」」」
「おはよう、全員揃ってるね。それじゃあほら、車に乗って。橘さんは助手席に」
「分かりました」
私たちは車に乗りこむ。今回は高橋先生の家に向かっている途中に、酔い止めの薬を飲んだから安心だ。
先生の車は意外に広く、座る場所が前、中、後ろと分かれていた。前には高橋先生と橘先輩、中には私と佐々木さん、後ろには翔、神崎くん、上杉先輩が座っている。
私の家の車はこんなに大きくないので、正直驚いた。でも、何でこんな大きいの買ったんだろ? 家族が多いのかな。
「高橋先生の車大きいですね」
「ふふ〜そうでしょ。自慢の愛車だよ」
「先生って結婚してましたっけ?」
「……ノーコメントで……」
最後の質問で高橋先生の声が小さくなる。もしかして独身なのにこんな大きいの買ったの⁉
全員が乗ったのを確認して高橋先生は車を走らせる。橘先輩は車内の全員に聞こえるように声を出した。
「それじゃあ今回の旅行の復習するよ。今回のボランティア内容は『椿の宿』での営業。基本的には料理以外の全てそれを三日間します。それが終わってからは……お楽しみということで。質問はないよね」
周りを見てみるが誰も質問をする気配を感じない。すると高橋先生が言った。
「みんな今日は早起きしたから眠いでしょ。ちゃんと車内で寝ておきなさい。それで仕事に支障が出たらボランティアの意味がなくなるからね」
「「「「はい」」」」
先輩たちを除いた私たちは返事をする。先輩たちはもうアイマスクをしていて寝る気満々だった。
『アイマスク(できれば)』としおりに書いてあったのはこの為なんだろう。
家にあったアイマスクをカバンから取り出して装着する。寝不足だったこともあり、すぐに眠りについた。
「……月さ……望月さん、起きて」
「ん? ……ふわあぁぁ……」
私が起きるときには車は停まっていた。アイマスクを取って外を見ると『椿の宿』と書かれている看板が見える。ここが目的地なんだろう。
カバンを持って外に出ると伸びをする。車の中に積まれていたキャリーケースを外に出し終えると、全員で椿の宿に入った。
中に入ると、私たちを待っていたかのようにおばあさんが立っていた。橘先輩は私たちの前に出る。
「こんにちはー!」
「「「「「こんにちは」」」」」
橘先輩に便乗して私たちを挨拶をする。目の前のおばあさんは私たちを見て柔和な笑みを浮かべた。
「いらっしゃい。旅行同好会のみなさん。去年よりも人数が倍以上に増えてますね」
「ははは、おかげさまで」
「それでは新しい人たちの為にも自己紹介を。私は椿 佳穂と申します。ここ、『椿の宿』の支配人です」
「今日から四日間よろしくお願いします」
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
「それでは、お部屋にご案内しますね」
椿さんが前を歩いていったので私たちは付いていく。椿さんが入ったのは和風な部屋だった。
旅行同好会のみんなが入っても十分なスペースがある。真ん中辺りには部屋を仕切る用の襖があった。
「ここが旅行同好会様のお部屋になります。仕事の時に呼びますので、それまではお寛ぎください」
扉が閉められるとみんなは寛ぎ始める。高橋先生は別の部屋らしく、そこに荷物を置きに行った。
ん? 待って……男女一緒の部屋? ってことは翔と一緒⁉
そこまで思考すると私は橘先輩に言った。
「橘先輩! どうして男女の部屋が一緒なんですか?」
「えっ……だめ?」
「一応私たち高校生ですよね」
「そうだねぇ。でも何もやましいことなんて起きないでしょ。それに望月ちゃんはオリテのときに男子の部屋で寝たんだよね。佐々木ちゃんが言ってたよ」
「…………」
それを言われたら何も言い返せないので黙り込む。なので私も何も言わずに寛ぐのだった。




