036 初の旅行場所
日曜日をダラダラ過ごして月曜日になった。私たちはまたいつものように登校している。
だけど今日は何だか視線を感じる気がした。久々の感覚だ。私に向けられている気もするし近くの人に向けられている気もする。
でも、その大部分は翔に向けられているのだろう。どちらかというと嫌な視線の部類に入るし。
そんな違和感を持ったまま上靴に履き替える。すると翔が声を発した。
「購買に昼飯買いに行くから先行っといて」
「あ、僕も購買行くよ」
「それじゃあ私も……」
付いて行こうとしたけど、翔はすぐに走り去ってしまった。神崎くんもそれに驚いていたけど、すぐに走り出してしまう。
「それで、望月さんも購買行くの?」
「……いや、もういいよ。何か面倒臭くなっちゃった」
ということで私と佐々木さんだけで一組に向かう。教室に入ると一瞬静かになった。今度はみんな、小さな声で喋り始める。
嫌な予感がした。私は以前、こんな感じのクラスを見たことがある。それは中学の頃の話なんだけど、もしかしたら高校でも……。
そんなことを考えながら席に座ると一人の女子生徒が歩み寄ってきた。
「あの、望月さん」
「おはよう、どうしたの?」
「うん、おはよう。えっと今日は誰と一緒に学校に登校したの?」
「佐々木さんと二組にいる如月くんと神崎くんだけど」
「……そう、ごめんね。こんな質問して」
質問を終えた女子生徒はグループの輪の中に戻って行った。でも質問の意味は分かる。聴きたかったのは『翔と一緒に来ている』という言葉だろう。
その事実は、ここでは『嫌われ者と一緒に来ていた』という意味になる。
東くんの席には多くの女子生徒が集まっていた。ここからは席が遠いので会話は聞こえないが多分女子生徒が東くんを心配してるのだろう。
「望月さ〜ん……」
すると佐々木さんが私の席にまでやって来た。その声はなんだか弱々しく感じる。
「どうしたの?」
「如月くんの悪口がずっと聞こえてたから嫌になって避難しに来た」
「……発生源は?」
「もちろん東くんの席」
「やっぱり……どんなこと言ってた?」
「え〜と……まぁ、ほとんど如月くんが言っていたことの逆だったね。後はありもしない噂話だよ。暴力が多いとか」
聴いてて思わずため息が出てしまう。……にしても本当に嫌な時期にいじめが発生してしまった。
まだ四月。周りが翔のことをあまり知らない時期。つまりいじめで起きた噂が翔の第一印象になってしまう。
――翔、大丈夫かな。
放課後になり私、翔、佐々木さん、神崎くんの四人は旅行同好会の教室にいた。中には橘先輩と上杉先輩もいる。
「今日は話したいことがあるの」と昨日作られた旅行同好会グループチャットで橘先輩が言ったので、何かしら重要な話があるのだろう。
でもまぁ、内容は予想付くけどね。その後に個人チャットでタイミング良くある言葉を言うように命令されたし。
「それで、報告したいことって何ですか?」
神崎くんが棒読みで聞く。何だか上級生に対して言う態度じゃない気がするんだけど……。もしかして神崎くんにも命令したのかな?
「よくぞ聞いてくれました! ワタシたち、旅行同好会のGWに行く旅行場所が決定したのです‼」
「どこに行くんですか?」
個人チャットで命令された言葉を言ってみる。それを橘先輩は自信満々に答えた。
「香川よ! 上杉くん、今回の旅行のしおりを配って」
「あいよ」
橘先輩の命令で上杉先輩が私たちにしおりを配ってくれた。私は早速開く。そこで橘先輩が説明を始めた。
「今回のGWは一〇連休、ワタシたちは土曜日も学校あるから九連休だけど……。まぁ、いつもより休みが多いから旅行の期間が一日増えるんだよね。四月三〇日から五月三日までの三泊四日の旅行になりました」
「でも、どうして香川なんですか?」
間髪入れずに翔が質問する。わざわざそれも言う必要ないし、これも命令……なのかな?
「それはね、この1つしかない依頼が来たからだよ。実はこの人ね、去年ワタシたちがお世話になった宿の人なんだ。そんな人に依頼されたら行くしかないでしょ」
そこでしおりを開いた佐々木さんが言う。
「予定表に五月三日の予定が書いてないんですけど」
私も予定表を見てみる。確かにその部分には何も書かれていなかった。そこ以外は全部ボランティアになっている。
「君たちにはまだ内緒。でも安心して。ちゃんと予定は決まってるから」
「そういえばこれってあたしも行っていいんですか? あたしってまだ入部すら決まってないんですけど」
「ん? あ、もしかして佐々木ちゃんは行きたくなかった? ごめんね。空気読めない先輩で。それじゃあ佐々木ちゃんの分は取り消しに……」
「あ、すみません、行きます! 行かせてください!」
「あ、取り消しちゃった」
「えぇ……」
そこで肩を落とす佐々木さん。それを見た橘先輩は笑い始めた。
「あはは、ごめんごめん。嘘だよ、少し悪戯したくなったんだ」
「もう、びっくりさせないでくださいよぉ……」
「とまぁ、今回の話はこれで終了。後は各々、しおりに書いてる物を準備してね」
その言葉を聞いた上杉先輩はすぐに教室を出る。私は早速スマホで香川について調べるのだった。




