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心のヒストリー【現在推敲中】  作者: 西影
第3章 旅行同好会
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035 隠し事

《橘 葵視点》


 如月くんはワタシの質問に少しだけ無言になる。すると笑みを作って答えた。


「別にどこもおかしくありませんよ」

「そう……じゃあ質問だけど、そこにあるワタシ用に買ったコーラの缶見える?」


 ワタシは如月くんから見て右側のところを指し示す。すると如月くんは右を向いてから答えた。


「ありませんね。どういうことですか?」

「うん、ないよ。だってまずワタシは如月くんのしか買ってないもん」

「じゃあどうして……」

「――単刀直入に聞くよ。如月くんの右目……見えてないでしょ」


 如月くんの瞳をジッと見つめて返答を待つ。誤魔化しても無駄だと思ったのか、如月くんは深くため息を零した。


「……いつから気付いてました?」

「疑い始めたのは望月ちゃんが君の肩に触れたとき。あの驚き方は異常だったから。それに右目が見えなかったらあのドアは死角になってるしね」

「確かにそれは認めます。でも! ちゃんと隠していた自信はあります。どこにも他に変なところはなかったはずです」

「ワタシは君を二回試したよ。何か分かるかな?」

「さっきの死角に指し示したのと……」


 如月くんは悩むように顎に手を当てる。でも答えが見つからなかったようで沈黙が続いた。なので先に答えを言う。


「君がさっきまでしていた動作全てだよ」

「す、全て?」

「そう。例えばコーラを持つ時。あれも慎重に取っているように見えた。片目が見えなかったら距離感を測り辛いからね。それをみんなに勘づかせたくないから取り損なうことは許されないし」

「……そんなところまで……」

「まぁここら辺は意識の違いだね。ちなみにその目ってやっぱり昨日から?」

「はい。起きたらこうなってました」

「治る見込みは?」

「分かりません。医者曰く原因不明らしいです。どこも異常はないらしいんですが……なぜか右目が見えなくて」


 原因不明……か。普通考えるなら脳に強いショックが与えられたとかだけど……。やっぱり職業柄か違う可能性が先に思いついてしまう。


 そこら辺は伸二さんに聴けば分かるかな。


「……じゃあ聴きたいことは終わったしワタシは帰るよ」


 早速伸二さんに話を聴くために席から立ち上がる。すると如月くんがワタシを呼び止めた。


「あの! このことは内緒にしてくれませんか?」

「望月ちゃんたちに?」

「はい」


 確かに隠すってことは知られたくないんだろう。まぁ、わざわざ言う必要もないし、ここは後輩の為に黙ってあげようかな。


「いいよ。でも高橋先生には一応報告しておくから」

「分かりました」


 ワタシは背を向けてデイルームを後にする。そして伸二さんに少し通話すると待合室のドアを開けて中に入った。


 しかしワタシが足を踏み入れたのは待合室ではない。黒と白の市松模様でできている部屋だ。ここはワタシたちA.G.S.A.T(アグサット)の部署。


「お疲れ様でーす」


 中には伸二さんと拓也くんがいた。伸二さんがいるのは分かるけど、どうして拓也くんまでいるんだろ。今日って招集かけられたっけ?


「それで、何でお前が病院にいたんだ?」

「そんなの決まってるじゃないですか。可愛い後輩くんのお見舞いですよ」

「僕に内緒で翔のお見舞いですか。僕なんて同好会行っても誰もいなくて一人寂しく帰ったんですよ」

「ごめんごめん、あれだね。旅行同好会のグループチャット作らないとね。休む時はそこで連絡とか」


 少し拗ねている拓也くんに笑顔で対応する。すると伸二さんがいきなりワタシに頭を下げてきた。


「文章での礼は言ったがちゃんと礼は言えてなかったな。本当に昨日は翔を助けてくれてありがとう」

「顔を上げてくださいよ。それにワタシはちゃんと守れていなかったみたいなので」

「いや、そんなことは……。もしかして知っているのか?」

「はい、今日のお見舞いで気付きました」

「えっと……何の話?」


 何も知らない拓也くんが疑問符を浮かべる。ワタシは伸二さんに視線を飛ばす。伸二さんは一つため息を吐くと話し始めた。


「翔が入院したっていうのは知ってるよな」

「はい、今日の朝に翔からチャットアプリで聞かされました」

「実は翔は……右目の視力を無くしたんだ」

「――え? 視力が?」

「あぁ、しかも不思議なことにどこも異常がない。本来見えるはずの目を持っているにも関わらず見えないんだ」

「もしかして能力者(ギフテッド)が……」


 ワタシも思っていたことをすぐに拓也くんが口に出す。しかし伸二さんは首を横に振った。


「それもない。能力(スペル)や魔術によるものだったら右目に魔力の痕跡が見つかるはずだ」

「でも他には……」

「医者は何らかの強い衝撃が原因と言っていた。逆にそれ以外考えられないようだ」

「そう……ですか」

「取り敢えずこのことは秘密にしてくれ。もちろん翔と仲がいい奴らにもだ。いいな」

「「はい」」

「今回はそれを伝えたかったんだ。まだ能力者(ギフテッド)の情報もないし、これで解散。ちゃんとトレーニングだけはしておけよ」

「「はい!」」


 ワタシは部署のドアを開ける。繋がっていたのはワタシの部屋の玄関だった。


 伸二さんの[橋](ブリッジ)は本当に便利な能力(スペル)だ。しかもデメリットは消費魔力が大きいのと使用条件のみ。


 それに比べてワタシの能力(スペル)なんて使用条件はあるしデメリットもあるから使い勝手が悪い。


 参式と壱式のレベルの差をまた痛感ながらワタシは自室に向かうのだった。

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