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心のヒストリー【現在推敲中】  作者: 西影
第2章 オリエンテーション
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027 違和感

 オリエンテーションが終わり、今日から通常授業が始まる。


 私が歯磨きをしているとインターホンが鳴り響いた。うがいを終わらせてモニターを見に行く。そこには佐々木(ささき)さんの顔が映し出されていた。


「ちょっと待ってて」


 そう一言告げるとカバンを持って玄関のドアを開ける。


「お待たせー」

「あんまり待ってないから大丈夫!」


 なんだか佐々木さんが私と重なって見えた。このような風景を(しょう)は見ているのだろうか。


 迎えに来てもらうという経験があまり無かったので、少し嬉しいと思う自分がいた。


 私はすぐに如月(きさらぎ)家のインターホンを鳴らす。いつもと同じ返事が聞こえてからすぐに翔が出てきた。


「おはよ。今日は佐々木さんも一緒なのか」

「まぁね。ちなみにこれから毎日の予定だから」

「ならよかったよ。俺も拓也(たくや)と待ち合わせする約束してあるし」


 翔の話によると神崎(かんざき)くんとの待ち合わせ場所は通学路の途中にあるパン屋の前らしい。いつも通る時にいい匂いがするのでその存在は知っていた。


 神崎くんと合流し、私たちは通学路を歩く。そこで私たちは部活動について話し合っていた。


「どうせなら全員同じところ入りたいよな」

「なら運動部はなしかな。男女で別れるし。僕はどれでもいいよ」

「なら天文部なんていいんじゃない?」


 私はこの提案で決まりだと思っていた。翔は中学の頃から天文部に所属している星好きだ。


 それに翔は部活に集中できるという理由で心峰高校を志望校に決めた。


 もやは初めから決まっていた部活決め。……そう思っていたのに……。


「――いや、天文部ではない部活にしようぜ」


 翔に反対されてしまった。でもそれは翔がここに来た理由を自分で否定していることになる。なので思わず突っかかる。


「ど、どうして⁉ 翔は天文部に入りたかったんじゃないの?」

「いや、えぇとな。……ちょっと上手くやれる自信がないから……かな?」

「上手くやれるかって言ってる意味が分からないよ‼」

望月(もちづき)さん、別に如月くんを否定しても仕方ないじゃん。とりあえず入る部活考えよ……ね?」


 佐々木さんの意見で我に返る。


「あ……ごめんね、どの部活動に所属するかは本人が決めることなのに」

「別にいいよ。結月(ゆづき)は俺と一緒に受験勉強も頑張ってくれたしな。あの時の俺は『天文部入りてぇ』って(うるさ)かったし」

「……うん。でも他に面白そうな部活ある?」


 私たちは佐々木さんが持ってる心峰高校のパンフレットを見る。しかし他に面白そうな部活動は書かれていなかった。


 いっそのこと帰宅部という選択もあるが、心峰高校に入ってその選択はもったいない気がする。


「それじゃあ同好会はどうかな?」


 そんなときに神崎くんが提案してきた。佐々木さんはすぐに次のページを開く。そこには部活動よりは少ないものの、十以上の同好会の名前が書かれていた。


 開かれたページに神崎くんが指し示す。


「ほら、旅行同好会なんてあるよ?」

「面白そう! それに中間テストまではあたしたち仮入部期間だから気になるところは行ってみようよ」


 ということで、今日の放課後に旅行同好会の教室に行くことになった。一度集合してから教室に向かう感じだ。


 旅行なんてあまり行かないのでこの機会に行きたいと思う私もいた。


 一組に入ると近くにいる人に声をかける。私はカバンを自分の席の横にかけると着席した。佐々木さんは自分のカバンを席に置くと私に近づいてくる。


 黒板の上にある時計を見ると、一つ前の席の人が視界に入った。ふとその女子生徒を見て不思議に思う。


 ――こんな生徒一組に居たっけ?


 肩まで伸びてる黒髪の制服を着ている女子生徒。名前は確か……あれ? 思い出せない……。前の席だから話したことがあるはずなのに。


 だけどなぜだろうか。どこか懐かしいと感じてしまう。まるで奥底に仕舞われた記憶のような……ど忘れに近い感覚だ。


 自分の記憶に(もや)がかかっているみたいに上手く思い出せない。


 そんなことを考えていると佐々木さんが目の前にやって来た。


「いやぁ、もう少しで本格的に授業が始まっちゃうよ〜」

「そうだね。まぁほとんどの教科は少し進んでるけどね」

「そーだけどー! やっぱりなんか違うじゃん! 六時限になるんだよ。ねぇ宮野(みやの)さん!」

「え……」


 突然話を振られた女子生徒、宮野さんは困惑しているように見えた。その瞬間、私の中の(もや)が晴れる。


 そうだ、彼女は宮野さんだ。なんで忘れてたんだろ?


「わ、わたしは……」


 何かを言いかける宮野さん。しかしまるで逃げ出すように教室から出ていった。


 ――私の視界から宮野さんが消える。


 すると不思議な感覚に包まれた。何かが私の中から隠されるように感じる。


 佐々木さんは驚くがすぐに私に話しかけた。


「なんで逃げちゃったのかな?」

「さぁ……。いきなり話したから困惑したんじゃない?」

「宮野さんに悪いことしちゃった感じかな」

「…………」


 その言葉に無言を返す。なんて言えばいいか分からなかったからだ。


 本鈴が鳴る数分前に前の空席が埋まった。それからすぐに一時間目の生物科担当の先生が入ってくる。


 旅行同好会や佐々木さんの発言も気になるけど今は授業に集中しなければならない。


 しかし私は佐々木さんの発言に疑問を覚えながら授業の用意をし始めるのだった。

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