021 勘違い
2日目の午前中は生活面、学習面などの話をされた。心峰高校は高大一貫の付属校なので、特に推薦権の話は詳しく説明される。聞いている限りだと生活面で問題なく学習面を怠っていなければ大学まで行けそうだ。
それから昼食を旅館で食べると私たちはバスに乗って近くの体育館に向かった。そこで明日にある男女別のクラス対抗球技大会の練習をするらしい。
……と言っても遊びみたいなもので、主に生徒間の中を育むのが目的。優勝すればジュースが貰える程度だ。
今回は佐々木さんから酔い止めの薬を貰えたのでバスの中でも一安心。
「今日は他校の生徒もいるので、問題を起こさないようにしてくださいね」
体育館に向かっているバスの中で高橋先生が言う。
他校の生徒と問題を起こすことってあるのだろうか? スポーツ漫画じゃあるまいしライバル校出現‼ なんて展開も起きないだろう。
そんなことを考えているとバスが止まった。目的地に着いたらしい。私たちはバスから降りると総合体育館に向かう。
バスケットボール、ドッジボールをする人は大体育室、卓球をする人は卓球室で練習する。なので私以外の班メンバー、それに宮野さんは種目的に大体育室で練習をする。
なので特に仲良いメンバーは1人もいない。私も卓球以外を選択すれば良かったと後悔しながら数号場所に向かった。
そこには高橋先生と何人か心峰高校の1年生がいた。高橋先生は卓球のラケットと球を入れたかごを持っている。
すでに半分の台が心峰高校の生徒ではない人たちが使っていた。この人たちが高橋先生が言っていた他校の生徒だろう。
私が来て数分経つと全員集まったようだ。高橋先生が人数を数え終えると私たちに指示を出す。
「今回使わせていただくことになったのはAからHの台です。誰がどの台を使うかは先生が決めましたのでそれに従ってくださいね」
今回は4人で1つの台、人数的に3人のところは先生が入るらしい。ちゃんと男女で別れているが、私と練習する3人の生徒は1組ではなかった。
他クラスの人とも仲良くさせる為にワザとしているのだろう。知り合いがいないのは不安だが仕方ない。
頑張ろう。
こうして練習が始まった。昔に卓球を習っていたこともあり、すぐに勘を取り戻してラリーが続くようになる。今は中学の頃に卓球部だった3組の人とラリーしていた。
ラリーが続いているのはこの人がずっと打ちやすい球を送ってくれているのもあるだろう。
その後もラリーやサーブの練習をし、休憩時間になった。
私たちはラケットと球を台に乗せて休憩を始める。
「望月さーん。あーそーぼ!」
そこで入ってきたのは佐々木さんだった。この部屋にいる人の視線が佐々木さんに注目する。
「佐々木さん⁉ 別にいいけど、バスケはどうしたの?」
「面白くなくて……あ、大丈夫だよ。みんな強いから勝てるよ。きっと」
別に勝ち負けを気にしているわけじゃないんだけど……まぁいいか。私が台に置いてあるラケットを佐々木さんに渡す。
「……もしかして華?」
1つの声が私の耳に届いた。向こうで練習していた生徒、他校の生徒が近付いてくる。
中学の頃の友達かな。
「誰かあたしを呼んだ?」
「うん、里奈だよ。えっと……久しぶりだね。心峰高校に受験してたんだ」
「えぇと……誰だっけ?」
他校の生徒、里奈さんは驚きの表情を見せるがすぐに顔をもとに戻す。しかしその表情はどこか……寂しそうだった。
「……ごめんね。人違いだったみたい」
「そう? それにしてもすごい偶然だね。まさか同姓同名で顔まで似てるだなんて」
「あはは、世界は広いってことなのかな。ごめんね、声かけて」
里奈さんは背中を見せると戻っていった。私は隣に立っている佐々木さんに視線を移す。
「ねぇ、本当に知らないの?」
「知らないって……里奈さんのこと?」
「それ以外ないでしょ」
「うーん……名前の響きが懐かしい感じがしたけど、記憶にないんだよねぇ」
「でも忘れてるとか……」
「――それはないよ。あたしは……友達の記憶を消さないはずだから」
ハッキリと言われてしまい、唖然としてしまう。その声にはどこか迫力を感じた。それに少し違和感を覚えてしまう。
休憩時間が終わり、練習に入ったがあまり集中できなかった。里奈さんが気になって仕方がない。
里奈さんのあの表情。あれは本当に悲しんでいる顔だ。本当に人違いという可能性もあるが、なぜかそれはないと思ってしまう。
それからただ時間だけが過ぎ、気付けば練習が終わっていた。帰りのバスに乗り、旅館へ戻る。
隣に座る佐々木さんはいつもと変わらない。
やっぱり私の考えすぎ……だったのかな?




