002 さよなら
《如月 翔視点》
「大好きだよ。そして――さよなら」
「お、おい!」
俺の呼びかけと同時に通話が切れる音がした。
「くそっ!」
俺はすぐに家を飛び出した。隣にある結月の家に視線を向けると高そうな黒い車が停まっている。
珍しい光景に目が奪われた。結月の家に何か用事があるのだろうか。
――いや、そんなことを考えている暇はない。
俺は自転車に跨ると急いで心峰高校に向かった。スピードをあまり落とさなかったおかげですぐに校門に辿り着く。
しかし既に校門は閉まっていた。慌ててスマホを見ると18時40分。この時刻なら校門が閉まっていてもおかしくない。
だがここで立ち止まるわけにはいかない。今は一刻も早く結月に会わないといけないんだ!
俺は自転車を乗り捨てて閉ざされた校門をよじ上る。
「待ってろよ、結月!」
俺は校門から飛び降りて校舎に向かって走り出す。全力疾走で息が苦しくなりながらも校舎の前に着き、すぐに異変に気付いた。
「おい、嘘だろ……」
目の前の光景に思わず足を止めてしまう。蒸し暑いのに鳥肌が立ち、冷や汗がどんどん溢れてきた。
校門から校舎まで整備されているコンクリートの道。そこに水溜りがあった。その上には夕日に照らされている制服を着た桃髪の少女の姿がある。
関節という関節がおかしな方向に曲がっており
しかしその水溜りは透明ではなく――純粋な紅色だった。
「ああぁぁぁぁぁぁぁ!」
絶叫しその場で崩れる。
俺のせいだ、俺のせいで結月が死んだ……。
もっと俺にできることがあったんじゃないか?
何かしてあげれなかったのか?
もっと俺が結月の力になっていたら自殺なんていう最悪な結末が生まれなかったかもしれない。
俺は、彼女を守ることができなかった。
視界がどんどん狭くなる。黒く塗りつぶされていく。
もう、何も考えたくない。
そうして俺は現実から逃げるように意識を手放した……。




