#1
どうも、なんの前置きもシナリオチャートも考えずにリアパス書き出しました。安田です。つまるところ葉緑体です。気が向いた時ぼちぼち上げていくつもりです。気長に見守ってね。
…え?早く始めろ?…わかったわかった。
ほな、画面下でまた会いましょう。
─この世には、数知れずの「世界」が存在する。その「世界」は時に交わり、また時に離れてその時間軸は一つに定まらない。
─なんの話をしてるって?それについては今まで数多くのサブカルチャー作品やゲームに触れてきた読者であればわかるだろう。転生しかり召喚しかり。あるいはコラボ、などと呼ばれるその現象。その現象を司れる人物は創造神でもなければ破壊神でもない。
─世界線の創作主位であれば干渉は可能だろうか。しかし創作主とは本来世界線には干渉するが本編には干渉しないのがお約束であろう。ならば前もって言及しよう。創作主抜きに「世界線」は生まれない。
─これは、とある創作主により作られた「世界」の中の物語である─
え?この話、さっきも聞いた?
…まあ…いいじゃない?
#1
───
「おはようございます~…ふああ…眠い…」
「お、起きたか?シルフ。」
「はい。昨日は大変でしたからね。ぐっすり寝ちゃいました。双太さんはどうですか?」
「こっちもだ。夢まで見ちまった。」
シルフ、と呼ばれた垂れたうさ耳を持ち黒髪と瑠璃色の瞳の丁重な言葉遣いの少年は双太と呼ばれた白髪と白黒のオッドアイでざっくばらんと話した青年に話しかける。シェアハウスのルームメイト、といった感覚の仲だろうか。悪そうには見えない。
「朝ごはん、久しぶりにビレサンにでも行くか?俺がおごる。」
「いいですよ。僕の分は自分で払いますから。」
「でもお前が買おうとするとだいたい売り切れだろ?お前の悪運が発動しないうちにっと…」
と先を行く双太。シルフはそれを追う。
「ちょっと!それには触れない約束じゃなかったんですか!?待ってください!!あっ!痛っ!?」
…はずだったのだが何もないところで躓き顔面から床に倒れ伏した。
「大丈夫かー?ほら、行くぜ?」
「わかりましたよ…。」
ここはパステル大陸と呼ばれるとある大陸の東に位置する付属島。正確な名前よりも大陸の名をとって「パステル」と呼ばれる事が多い。
常時初夏のような暖かい気温である事や広く海に接した地形、他にも島の中に存在する森林王国「ネイチャーパル」と近年国交を開始したことにより数多くの観光客で賑わうリゾート地である。
そんな島の一角に佇む一つの建物。なにかの寮のように見えるその建物では数人の少年少女がシェアハウスのように過ごしており、また街中で困った人を手助けするボランティア活動をしている。シルフ、そして双太はそのメンバーのうちの二人である。双太は店構えをしていながら椅子に座り休んでいた店主に聞いた。「ビレッジサンド」とかかれた看板。サンドイッチ店だろう。
「おやじー!今空いてるか?」
「ああ、ようやく一仕事終えた感じだぜ。これからまた昼の仕事があるからな、休んでたとこだ。」
「んじゃ卵サンド二つあるか?」
「あー、卵サンドは人気であと一つしかないな。他どうだ?」
「だとよシルフー?」
「…はは、やっぱりですか…。…じゃあレタスサンド、お願いします!」
「はいよ、じゃこれ、卵とレタス。お代は…ちょうどだな。またこいよー!」
二人はサンドイッチを食べながら歩いていた。
「最近観光客がやけに多いな。」
「ですね。…この状況でなにもなければ良いのですが…。」
そういいながら食べつつも歩いていた次の瞬間だった。
ドンッ
双太の腕当たりに誰かの肩が当たる感覚。しかも結構な強打の様だ。
「ってえ…大丈夫か?悪かったな。」
「大丈夫ですか?」
そういいながら双太は振り返りぶつかったであろう相手に謝った。
「…。」
相手はなにもいわない。見るとフードをつけたマントで全身を隠してはいるが体型的には子供だろう。下を向いたままなにもいわない。少し息が荒いのは恐らく走っていたからだろうか。勢いよくぶつかったことにも納得が行く。
「ん?」
「…周りには気をつけろ。」
「お、おい!?それが謝る態度かよ!?」
しかし相手はなにも返すことなく立ち上がると去ってしまった。
「ちっ…あいつ、絶対ガキだよな。それになんだよあの態度、しかも服装をなんで一々隠して行動してんだよ…」
「もしかしたら…『ナイトサイズ』による襲撃の前兆かもしれません。警戒を強めましょう。」
この島には三つの区分がある。彼等の寮があり、リゾート地として数多くの観光客がやってくるシルキー街と呼ばれる場所、シルフも含まれる獣人と呼ばれる種族が多く住まう森林王国、そしてこの島の地下にある世界「地底界」。
かつてこの地で戦争が起こった際、一部の人間が地底界に閉じ込められて以降地底界の人間はなんとかして地上で生活出来ないかと考えた。
あるものは
「対話により部分的に領土を共有できるよう説得出来ないか」
と、
またあるものは
「そんなものでは解決出来ないからと武力を振りかざそう」
とした。そしていつしか地底界では意見が真っ二つに割れてしまっていた。前者は穏健派と、後者は過激派と呼ばれた。過激派はまた「ナイトサイズ」とも呼ばれる軍事組織を結成し、時々地上に攻撃をしかけて来るのであった。
「…だけどよ、ナイトサイズも最近は襲撃が減ってるんだ。最後がいつだ?」
「大きかったのは三ヶ月前です。襲撃が少ないということは何か新しい兵器を使って来る可能性が大いにあるということです。だから気が抜け…」
平穏は突如、男性の叫び声によって断たれてしまった。
「わー!!ま、魔物!魔物だあぁー!!」
「来たな!?」
「フラグだったようですね。…恐らくあの少年が元凶の可能性が高いです!!行きましょう!」
彼等のボランティア活動、とは我々の感覚とは少し違う。確かに道案内やビーチの清掃といった我々にもできるようなボランティアもしてはいる。が彼等のボランティアはそれだけに留まらなかった。
「……装填完了、障害物上空に無し、ターゲット確定……。シルフ!あれで良いんだな!?」
「間違いありません!あの蛟みたいなやつです!距離を縮めましょう!双太さん!まずは撹乱頼みます!」
「了解!!」
双太は左に下げていたポシェットから拳銃と弾を取り出すと装填、蛟のような、うつぼにも見える魔物の眼を狙い銃を撃った。弾は眼に当たるかと思われたが魔物はそれをかわす。一発は首筋に当たったようだが、あまりダメージが入ってないように見えた。
「くそっ、にょろにょろと動きやがって…弾がはいらねえ!」
「うーん、やっぱり撹乱ならチコさんの方がいいのですが…彼女は通信手段を持ってませんし…」
「おおきなうなぎだね…何人前だろう?ね、双太!今日のゆうはん、うなじゅうにできるね!」
ズコっ
(((「……いやくえねぇよ!!!」)))
二人の背後からひょっこり現れた少女。首には長い水色のマフラーを巻き、白のワンピースの下に黒いズボンを履いた、狼耳の少女だ。突然放った天然とも抜けてるとも取れる発言にすかさず双太がツッコミを入れた。
「いや…あのですね…。」
ずっこけた状態から立ち直ったシルフが少女に、チコに説明する。
「チコさん、あれは鰻じゃありません。ナイトサイズからの魔物です。あれを倒すにはチコさんの撹乱が必要なんです。…路地裏の広間の一つにいるようですが、あれからの攻撃が激しすぎて、なかなか近づけませんので。」
「わかった!…ねえ、あそこまでの日陰を通れるルートはないの?」
なぜかチコは日陰のあるルートを通りたがった。普通の人間であればこの質問にツッコミがはいるのであろうが、彼等は何か、わかっているようだ。
「この時間じゃ…そうだな、ここからよりも右手に回り込んでからの方が影が多い。そっちから行くか。」
「わかりました。チコさんが相手の注目を集めている間に僕らは後ろから、ですね。」
「わかった!」
チコは右手に走り出した。
世間一般的な知識として、創作物の中では非常識的な現象が当たり前のように起こっている。人間が妖魔を従え、また少女がビルを破壊し、あるいは人と人ならざるものが語らいながら草原を闊歩することも気力で星を消し飛ばすこともごく当たり前のように起こる。彼等に関してもその恩恵は漏れることはない。
チコは建物と建物の影、ちょうど日陰に当たる小路に入り込んだ。そして建物の壁をさらっと撫でるように触れた。
と、黒紫色の煙が壁から沸き立つ。それが彼女の手元に集まったかと思うと、それは三日月型の物体─ちょうど、我々が弓と呼ぶものと等しい─へと形作られた。
Shadow Maker、またの名を「影創成能力」。影を踏んだ状態において、その影から任意の物体を創成する特殊能力である。
「えいっ!」
チコは走りながら弓に四本の矢をつがえ、魔物の目を引くように打ち出した。蛟は体をうねらせて回避する。しかしその内の一本が命中したようだ。
魔物は怒りの矛先をチコに向け、多数のエネルギー弾を放った。弓矢とは分が悪い。
「えへへ、いっぱいとがらせてよかった!…なら…これで行くよ!」
チコは弓を影の中に離すと、そこからさらに影を集めた。そして作り上げたのは、鎌のような武器。よく見ると、刃の付け根であろう部分が星型のように象られている。
エネルギー弾をいとも容易く切り、また盾のように弾き返す事で、被弾を最小限に抑えつつ敵に確実に近づいていった。
「それっ!」
チコは大きくジャンプするとひょいひょいと蛟の頭部分に上り上がる。と、そこへ全く逆の道から双太とシルフがやってきた。
「双太!うなじゅう、つくれるね!」
「だから鰻じゃねえってるだろ。…案外楽勝か?」
「というか、チコさんはあれだけの攻撃をかわしきったのですね…。」
チコが来た道を見ると、多数の弾幕と思わしきエネルギー弾が地面に当たった後があった。弱点がえぐれている。一発でもまともに当たれば消し飛んでいたかもしれない。
「ってかチコ!?お前、そこ!!」
「ふえ?……あっ!!」
よく見ると、チコの鎌に日の光が当たってしまっている。路地裏を通っている間は建物により光が遮られていたが巨大な魔物の頭部である。光が当たるのも納得だ。
影創成能力の最大の弱点、それは光に滅法弱く、日なたにおいてはその能力は完全に無効化されてしまう所だ。
『オォオオオオ!!』
「わ、わあっ!!?」
チコの鎌がサラサラと砂のように消えてしまう。同時にチコは暴れ出した魔物から振り落とされ、地面に落ちてしまった。
「大丈夫ですか!?…良いところまで行ったのですが、せめて曇っていれば…。この分では、僕らで仕留めるのはだいぶ難しいです。」
「だいじょうぶ!…ねえ…私、助けをよんでくる!」
「助け…あの二人か?」
「うん!!」
助けを呼ぶ、そういいチコは今来た道を戻っていった。
「シルフ、勝算はあるか!?」
「わかりません。ですが…足止め位ならできるかと。…やってみます!」
そういうとシルフは敵の方へ走り出す。魔物は大型だ。その巨体を活かして、シルフに突進しようとした。
「!!」
次の瞬間、その巨体は完全に前進を止めた。いや、止められた。
「…双太さん!今です!目を狙ってください!」
その相手はシルフ。小学生程の身長しかない少年が、自らより遥かに巨大な相手を力でねじ伏せていた。その能力、人呼んでGravity Ignorant。「重量無視」とも呼ばれるその能力はつまるところ怪力、もしくは馬鹿力に等しい。
「任せとけ!」
双太はシルフによる固定の助けもあり、魔物の片目を拳銃で確実に撃ち抜いた。
『ガアアアアアッ!!』
「あともう一つ!……だっ!?」
蛟は体を大きくうねらせると、二人を大きく突き飛ばした。地面にたたき付けられ跳ね飛ばされる二人。
「…意気がいいなぁ。ほんとに鰻じゃねえか。」
「…どうやら足を悪く打ったみたいです。…この状況で一撃が来たら間違いなく回避不可…です」
「いやなんとかならねえのかよ!?…とりあえず、壁際に寄るぞ!」
壁際に寄り、シルフの足首の回復を待つ。魔物はジリジリとこちらに寄っていた。片目を奪われたことで、大いに怒っている様だ。チコを救援要請に行かせたのが失敗だったか─そう考え、次の手段に何があるか、そう考えたその時だった。
…フッ
何か、一瞬だけ息のようなものを吹き込む音が聞こえたその次の瞬間。
『ギュルルアアアッ!?』
バアアァァァッ、という凄まじい音とともに魔物が風に吹き飛ばされたように壁に激突した。完全に上を向いており、顔面に隙が生まれている。
(今だ!!)
すかさず双太は銃でもう一つの目を撃った。相手の視界を完全に封じ込んだ所で双太は手榴弾に似たものを投げ付ける。手榴弾は魔物の付近で爆発し、魔物は力を失って倒れ込んだ。
「…た、おしたんでしょうか…?」
「みてえだな。…だけど、さっきの…」
そこに、コツリと音を立てて何者かが姿を現した。見覚えがある。黒マントの少年だ。相変わらずフードで隠れてしまい顔を目視することはできない。
「…だから言っただろう。…周りには気をつけろと。…あの一瞬よそ見をしていなかったら、手を貸すまでもなかった。ここにいたのも偶然だ。恵まれてるよ。」
煽られたか、呆れられたかのような物言いに双太が食ってかかった。
「…お前、さっきのガキだな?お前が魔物をしかけたんじゃねえだろうな?」
「双太さん!ダメです!無駄に相手を刺激しちゃ!」
「…。はあ。…無駄にしゃべってる時間もない。探してる相手がいるからね。それじゃあ。」
…そう言うと少年はくるりと向きを変え、再び路地裏に消えてしまった。
「…何だったんだアイツ。」
「分かりません…ですが、あれは演技では無さそうですし、少なくとも彼はナイトサイズの人間では無いじゃないのでしょうか…?」
「…。」
シルフは少年の受け答えから推測して、彼を敵ではないと認識したようだ。しかし双太は。
「いや、あからさまに嫌な顔してただろ。探してる人が誰なのかもわからねえ。そもそもここは人がごちゃごちゃ来る所、しかもたかが観光地だぜ?その人は帰ってるかもしんねえし、一人で探して見つかるような場所じゃねえだろ。」
確かにそうだ。ここはたかが一つの島である。そんな島の中と固執して探さなくても…とも思うのも一理ある。
と、その時だった。
「シルフ!!双太!!…あれ?」
「え?魔物、どこ?」
「…あれ、まもの、いない…?」
チコが2人の少女を連れて戻ってきた。そう言えば応援を呼ぶ、そう言ってチコはいなくなっていたのだったのだ。忘れた人は戻って読み直そう。
「…それがなんですが、僕と同じくらいの身長の人が倒してしまって…」
「…つうか、倒すチャンスを作ったっつうか…」
「ですが、協力してくれたことには変わりないんですがね…」
すると、二人の少女のうちひとり、片目に黒い眼帯を付けた浅葱色の瞳の少女が聞いた。
「ちょ、ちょっと待って。じゃあ、その人にお礼を言わなくちゃいけないよ?その人、どこにいるの!?」
「それがなんだけどな、『探さなきゃ行けない人がいるから長居はしたくない』つっていなくなっちまったんだよな。黒いマント羽織ってたんだけど…エミィ達は見てねえのか?」
エミィ、と返された眼帯の少女は1度考える素振りを見せ、もう1人の立ったうさ耳と人の耳を持った、制服の少女を見て、チコを見てから、首を振った。
「ううん、私たちは見てない。」
「と言うか、その人はなんで助けてくれたわけ?何があったの?」
うさ耳の少女…セプトは黒マントの人物に懐疑的なようだ。その瞳は瑠璃色。シルフのそれと似た色だ。
「それがなんですが、1度襲撃の前にあっていまして…」
シルフは今に至る経緯を1から説明した。少年とぶつかった事、相手の様子、見た目、それから襲撃時の対応、そして。
「彼は、重力系…いや、重力でしたら僕達も飛ばされているはずですから除外しましょう。とすると念力か圧力…おそらく圧力の中なら風圧に関連する能力を持っている可能性、念力ならサイコパワー系の能力である可能性が高いです。そうでなければあの時、あれだけのサイズの魔物を吹っ飛ばすことなんて不可能ですよ。」
そう言うとシルフは双太が倒した魔物を見やる。
「…吹っ飛ばす…つうか、建物にめり込ませてる辺りかなりやべえ強さだろうな…」
それを聞いたチコの耳がピクりと動いていた。
「ふう…あつ?」
どうも、画面下で待ち伏せしてました。
…まだ第2話がかけていません。投稿時点で。
どうしよう、ゲームにやる気を吸われてる。
次回投稿、お待ちくださいね。