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Star Gate Online ~妹は姉の作ったVRゲームで『裏の世界』の仲間達と一緒に遊ぶようです~  作者: 如月ひのき
第一章 姉のことは信じていますが、信じているが故に、疑ってしまうのです。
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妹、ネタばらしをする。

PVが一気に倍近くになっていて「ふぁっ!?」と変な声が出てしまいました。

現時点で確認出来る総ユニーク数も99件となり、後1つで数字が出る100件に届きそうです。

貴重な時間を割いて、私の作品を閲覧してくださり、本当にありがとうございます。



「普通は3歳くらい、遅くとも5歳までには親によって種族共通語スキルを覚えさせられるはずだが……シャーリィは虐待でもされていたのか? だから、街中であんな奇行を……」


「違いますから。どうせバレているでしょうし、バレていなくても疑っていると思うので言ってしまいますが、私は<星の旅人>です。向こうの世界の言葉で言うとプレイヤーですね」


 冒険者ギルドで無事に身分証明の作成を終えた私は、警備隊詰所にホリンさんと一緒に戻ってきました。騒ぎを起こしたことについての反省文を書き終えて一息ついていると、ホリンさんが探るようなことを言ってきたので、ちょうどいいのでネタばらしをすることにします。


 生まれつきの白金色の髪色も、限定特典のスキルによる黄金色の瞳の色も、通常選択してアバターを作った場合は出てこないので、現地の人の振りもするのも出来なくはなかったのですが、流石にこの世界の常識がないことを見せ過ぎていますからね。箱入りだとか、記憶喪失だとかの設定にすれば誤魔化せるでしょうが、それはそれで面倒ですし、そもそも最初から隠すつもりはありません。単に言うタイミングを計っていただけです。


「やっぱりか……薄々そんな気はしていたが……」


「同胞が迷惑を掛けているようで申し訳ありません」


「いや、お前さんが気にすることじゃ……そういやお前さんも迷惑掛けていたな」


「おおう……」


 半眼を向けられ目を逸らします。

 往来のど真ん中で吸血種族なのに日光浴をする、自殺まがいな事をするという騒ぎを起こした身としては何も言い返せません。


「はぁ……アクアリア様も一体何を考えているんだか」


 ホリンさんが溜息を尽きながらぼやきます。

 アクアリアというのはこの世界を創造した女神の名前です。公式サイトに載っていました。さらには天上世界と下層世界を繋ぐ<星の扉>の管理者でもあります。

 身も蓋もないことを言うと<SGO>の運営のことです。

 

 おそらく『水城リア』――開発者である姉の名前が元ネタでしょう。


 「水」でアクア、それに名前の「リア」を付けてアクアリア。

 「城」は何処に行ったんですかね。

 消えた城。うーん、なんだかホラーチックですね。幽霊城でしょうか。

 幽霊と言えば、幽霊みたいな存在になった友人を思い出しますね。

 彼女も元気でやっているといいのですが……


 ホリンさんがぼやいているのは女神アクアリアが送り込んできたプレイヤーもとい<星の旅人>の問題行為に対するものでしょう。女神様が送り込んできた同胞が問題児ばかりとか、そりゃ溜息も付きたくなりますよね。

 βテスターの1万人全員がログインしていないにしても、仮に1割でもログインしていれば1000人のプレイヤーがこの世界にいることになります。その半分が問題児として500人。総ての問題児が一つの街に固まっていないにしてもそれなりの数のプレイヤーがいることが簡単に予想できます。


 あ、私はかつて往来のど真ん中で自殺紛いのことをする問題児でしたが、反省文を書き終えたので今は無垢な身となっております。


「あの人は自分の作った世界で遊んで欲しいと考えているみたいですよ」


「遊びに、か……なぁ、シャーリィも<星の旅人>ってことなら、あのバカどもに言うことを聞かせられないか? 同郷なんだろう?」


「無理です。あくまで同郷というだけでしかありませんからね。

 ホリンさんは隣の街の見たこともない相手を従わせることが出来ますか?」


「あー、それは確かに無理だな」


 隣の街どころかβテスターは日本中から参加していますからね。

 知らない人だらけです。動画サイトで色々やっているので相手が一方的に私を知っている可能性もありますが、誰が動画を見てくれている視聴者か解らない以上、意味がありません。


「それにしてもお腹が空きましたね。

 ホリンさん、責任を取って私に貴方の血を吸わせてください」


 吸血種族は普通の食事では満腹度が回復しません。だというのに、ホリンさんが冒険者ギルドで暴露した所為で、安定的な供給手段を得る機会を失ってしまいました。これは身体で責任を取ってもらうしかないでしょう。


「なんで俺が血を吸われなきゃならないんだよ。

 そんなに血が飲みたかったら吸血種族用の血液パックを買ってくればいいだろ。

 コンビニに行けば普通に買えるぞ」


「この世界にコンビニがあるのですか!?」


 まさかのコンビニ。ファンタジー設定は何処に旅立った。姉よ。


「天上世界にもコンビニがあるのか?

 そっちの世界のコンビニが同じかは知らないが、俺の知っているコンビニはアクアリア教会が出資している一日中開いている店のことだな。

 お前の様な吸血種族や一部の獣人種族とか、夜に活動する種族も多いからな。

 そういう奴等の為に一日中開いている店が必要だったってわけだ。

 ちなみに売上の一部はアクアリア教会に寄付されるらしいぞ」


「こちらのコンビニは宗教色のない普通の企業がやっているお店ですね。

 一日中開いているというのは同じですが」


 どうやら食料の問題は解決ですかね。

 ホリンさんの妨害がなくとも、冒険者同士での諍いがある程度見逃されることを利用して血を得るというだけでは限界もあったでしょうし、助かりました。妨害の件はこの情報を教えてくれたことで不問にしましょう。

 当然ですが、購入するには先立つ物が必要ですから、稼がないといけません。

 冒険者ギルドで依頼をこなしていかないと、ですね。


 それと同時に耐性スキルもあげていきましょうか。目指すは太陽の克服です。

 60秒の間、日光に身を晒し続けたことで【光属性耐性(小)】を手に入れることが出来ましたが、これより先の【光属性耐性(中)】を手に入れる為にはそれ以上の時間を耐える必要があるでしょう。


 ステータス画面を開き、自分のステータスを確認します。



名称 シャーリィ

総合レベル2/ベースレベル1/種族レベル1

種族 <吸血種族>

性別 女

職業 <冒険者>

活性スキル(1/1) 【黄金神眼Lv1】

【黄金神眼】追加スキル枠(1/1)【透視Lv1】

常時スキル 【吸血】【夜行性】【苦痛耐性】【光属性耐性(小)】【種族共通語】



種族スキル

【吸血】【夜行性】


個人スキル

【黄金神眼Lv1】【苦痛耐性】【光属性耐性(小)】【透視Lv1】【種族共通語】


一般スキル

なし


装備

右手武器 ≪古びた白い日傘≫

左手武器 なし

頭 なし

上半身 ≪古びた白いワンピース≫

下半身 ≪古びた白いワンピース≫

腕 ≪古びた白いサテングローブ≫

足 ≪古びた白いサンダル≫

アクセサリ なし

アクセサリ なし

その他 ≪初心者用アイテム鞄≫


所持アイテム

初心者用アイテム鞄 52/100

≪シャーリィの棺桶≫ 重量50

≪星の鍵≫ 重量1

≪職業カード(冒険者)≫ 重量1


所持金 1500G



 うーん。やっぱり、これ以上の耐性を求めるには体力回復アイテムが必要ですかね。


 【夜行性】の効果で日光を10秒浴びると1割の体力が削られる関係上、今以上の耐性を得るには回復アイテムは必須となります。

 【光属性耐性(小)】を手に入れたことにより、少しは耐えられるでしょうが、流石に回復アイテムなしで【光属性耐性(中)】を獲得可能な時間まで耐えられるとはとても思えません。

 食事用の血液パック、戦闘やスキル上げの為の体力回復アイテムの購入を考えると、しばらくは出費が激しいことになりそうです。


「むぅ。お金が……そういえば、この世界の相場はどうなっているのですか?」


「あ? あー、そうだな――」


 ホリンさんにこの世界の相場を尋ねてみた所、大体1Gが大体100円くらいの価値があることがわかりました。一回の食費の平均は大体10Gくらいだそうです。宿は食事つきで一泊150G、食事なしで一泊100Gが相場とのこと。冒険者ギルドで1000Gを支払いましたが、1G100円換算をするならば10万円ですか。高い出費ですが、身分証を作ったということを考えれば、それくらい掛かってもおかしくないのでしょう。【種族共通語】のスキル書が500G――5万円するのもスキルを覚えることが出来ることを考えれば納得のお値段です。


「このままずっとここに居たくなりますね」


「警備隊詰所は宿屋じゃねえからな。日が落ちたら出て行けよ」


「わかっています。冗談ですよ」


 さりげなく寝床を確保しようとしたのですが失敗しました。宿代の節約は出来なかった様です。宿屋や警備隊詰所に泊まらなくてもプレイヤー用のプライベートルームである<隠れ家>で寝泊まりをしたり、ログアウトをするという手もあります。しかし、これだけ現実感がある世界で、そういうことをするのは野暮と言ったものでしょう。


 日光に焼かれた時の痛み。風の匂い。出会った人達の反応。頭を掴まれた時の触れられた手の感触と、肌の温度。あらゆるものが本当にリアルで、ここが仮想世界だということをうっかり忘れてしまいそうになります。


 まるで本当に下層世界という名の異世界に降り立ったような――


「……仮に本当にそうだとしても、あの姉なら驚くに値しませんね」

「あん?」


 どうやら口に出してしまっていたようです。不思議そうに眉根を寄せるホリンさんに「なんでもない」と伝えます。それからは特に目立った話題もなく、ホリンさんと軽い雑談をしながら日が暮れるまで時間を潰すことになったのでした。

コンビニのあるファンタジー世界。

コンビニは便利ですからね。仕方ありませんね。

機人種族がいる時点で純粋なファンタジーとは言い難いですけどね。



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