妹、冒険者ギルドの隠された制度を知る。
今回はいつもより短めになります。
週間VRゲームランキング(18/12/26朝更新)にて80位になりました。
皆様のおかげです。閲覧、ブックマーク、評価、感想、ありがとうございます。
「結局依頼を受けることにしたのね」
小さな妖精の身体で、丸められた依頼書を胸の前で抱きかかえているセフィロトが、戻ってきて話を聞くなり、私達を見回します。
ここは冒険者ギルドの3階の奥にある部屋になります。
この部屋は防音がしっかりしており、秘密の話し合い等に使われているそうです。
ただ流石に完全に秘密の話し合いを許すと、悪いことに使われるので、設置されている水晶でギルドマスターは話を聞いているらしいです。
「一宿の恩がありますから」
「二人の話を聞く限り、アルフォンスさんは悪い人じゃないみたいだし、後は乙女の勘かなー」
「せめて依頼内容を確認するまでは、受ける方向で考えている、くらいに留めなさいな」
私とシオリの言葉に、セラが小さく肩を竦めます。
しかし、その表情は何処か嬉しそうです。
「ふーん。大体貴女達の関係はわかった気がするわ。
それじゃ依頼内容を説明するわね」
セフィロトが丸テーブルの上に依頼書を広げ、依頼の説明を始めます。
「依頼人は『アルフォンス・クランディルス』
依頼内容は『ディルスの森の奥地に住むハワードという獣人に指定された酒を届けること』
備考として『指定された酒の運び役件、案内人として、森精種族のセラとそのパートナーの妖精種族のセフィロトが同行すること』と『指定のお酒を渡す行為はハワード氏の力を借りる為に必要であり、もし力を借りる事が出来た場合はクランディルスの街まで彼を護衛すること』と『断られた場合、即座に戻り冒険者ギルド、及びクランディルス別邸まで連絡を入れること』の3つがあるわ
依頼料は指定された酒を届けることに関して前金で2000G、成功報酬で3000G。
ハワード氏の護衛をする場合は追加報酬で3000Gが渡されるわ」
「随分と依頼料が高額ですね」
「ランクで言えば、Dランク依頼だからね。
本来なら、Gランクのシオリ、Fランクのシャーリィは受けることが出来ないのだけど、Cランクのセラが同行することで受ける事が可能になったわ。
えーと……とにかく受けられることになったのよ」
セフィロトは言い淀んだかと思えば、早口で誤魔化します
あ、これは制度名を忘れましたね。
「<監視同行制度>ですわ。
Cランク以上の冒険者が、同行することで、本来、その冒険者パーティーの最大ランクの1つ上のランクまでしか受けられない所を、2つ上まで受けることが出来るようになるシステムになりますわね。
ちなみに、調子に乗ってきた冒険者達に監視の元で少し上を見せつけて、現実をわからせることを目的として作られた制度らしいですわ」
「落伍冒険者生成制度でしょうかね」
一瞬、登録時に絡んできた冒険者の先輩達を思い出しました。
あれから会っていませんが、彼らは今一体何をしているのでしょうか。
「それは現実を見せつけられたくらいで落伍するのが悪いのよ。
それよりセラの友人っていうから、もうCランクか、遅くともDランクは行っていると思ったけど、Fランクだったなんてね。
登録したばかりの子は仕方ないにしても、正直驚いたわ」
「まだ依頼を一回しか受けていませんからね」
「戦闘記録を見せれば、一気にランクをあげられますわよ」
どうやら、ギルドカードに自動で記載される戦闘記録を提出すれば、その実力に見合ったランクに上げて貰える場合があるそうです。
セラは大量の討伐部位を持ちこんだことで、実力を確認する為に調べられ、それで一気にランクをあげたとのこと。
私は【解体】を持っていなかったので、討伐部位を回収していませんでしたから、きっとその所為で普通に処理されたのでしょう。
試しにと促され、<ウルフ>や<ファング>との戦闘記録を提出すれば、FランクからEランクにランクが上昇しました。
セラと違い、Dランクまで上がらなかったのは『戦闘内容が雑だったから』だそうです。
戦闘スキルをちゃんと使いこなしているかどうかも、評価の対象になるみたいですね。
「あの時は戦闘スキルを持っていませんでしたからね。使いこなす以前の問題でした」
【挑発】を覚えたのも途中からですしね。
「才能だけでいけるのはCランクまでね。そこからはスキルをどう使いこなしていくか、が鍵になるわ。
この世界は貴女達が思っているほど甘くないわよ」
セフィロトが指を立て、戒めるように言います。
そのことに関しては、私もなんとなくは感じていたので、同意するように頷きます。
「ゲームとして考えるなら、もう少し難易度を下げた方が一般受けするとは思いますけどね」
「リア姉が一般人目線で物事を見られると思う?」
「そもそも私達の時点で『表の世界』の一般人と同じ目線に立つことは出来ませんわ」
「そうだねー、って私は元々一般人だからね!?」
「「はいはい、逸般人、逸般人」」
「なんか字が違う気がする!?」
「貴女達、仲がいいわねぇ」
女三人寄れば姦しいとは言いますが、仲が良い分、それも加速するわけで。
その後も話が何度か脱線してしまい、依頼についての話し合いが終わったのは最終的に昼を大きく周ってからになってしまうのでした。
雑認定をされたシャーリィさん。
力技で<ウルフ>と<ファング>を倒したことは戦闘記録を見ればバレバレだったようです。
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