妹、妖精に感謝をする。
クリスマス番外編はありません。
ネタはあったのですが、書く時間がどうしても取れませんでした。
残念無念です。
日間VRゲームランキング(18/12/25 11時~12時更新)にて90位になりました。
週間VRゲームランキング(18/12/25朝更新)にて76位になりました。
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アルフォンスさんの屋敷で一晩を過ごした私は、次の日の朝、シオリと合流する為、セラ達と一緒に冒険者ギルドにやってきました。
『達』と言っても、もう一人の方は別件で外しているのですが。
冒険者ギルド内は、うん、いつも通りですね。
血眼になって依頼が張り出されるのを待つガチ冒険者勢の群れが見えます。
シオリは来ていないかと見渡せば、奥のテーブルに突っ伏している狼耳がありました。
セラとアイコンタクトを交わし、そっと近づきます。
そして左右から、タイミングを合わせ――
「「ふぅ~」」
「ふゅゅはぁぅん!?」
やりました。成功です。
左右の狼耳に同時に息を吹きかけられたシオリは、面白い声を上げて飛び起きました。
「シャーリィ! いきなり左右から同時に息を吹きかけるなんて、ひど――って、どうやったの? って、セフィ? うわー。ひさしぶりー。元気してたー?」
「お控えなすって、おひさしぶりです。
とは言っても、姿を見るのは初めてですから『はじめまして』が宜しいのでしょうか?
それとこちらではセラを名乗らせて頂いていますわ」
「そうだね。はじめまして、セラ。
私はあっちじゃ霊体化しているから、声だけだものねー。
シャーリィから聞いているかも知れないけど、シオリだよ」
あちらでは霊体化しているシオリは普通に見ることは出来ません。
何故か波長があったらしく、私は普通に見ることが出来たのですが、加々美さん曰く、それは例外中の例外だそうです。
その例外のおかげでシオリと友人になれたのですから、そのことに感謝するべきなのでしょうね。
ちなみにセラはシオリの声だけは聞くことが出来るようです。
「シャーーリィ――♪」
おや、セラと話していたはずのシオリがにこにことしながらこちらに向かってきています。
どうして、手をわきわきさせているのでしょう。
セラが微笑みながら手を振っています。
おのれ、セラ、私を売りましたね!?
シオリ、やめてください。形が崩れてしまいます。
悪かった。悪かったですから。
久しぶりに3人揃ったので、昔のノリでやってみたかっただけですから――
「……はぁ……はぁ……ひ、酷い目に合いました……」
シオリのお仕置きを受けて、乱れた息と衣装を整えます。
おや、先輩冒険者達が少し前屈みになっていますね。
顔を覚えておいて、心の中の『吸って良いリスト』に載せておきましょう。
「シャーリィが悪い。服変わったんだね。買ったの?」
「かくかくしかじかというわけで、成長しました」
「『かくかくしかじか』じゃわからないから」
ですよねー。
高速伝達魔法の実装が急がれます。
ちゃんとウィリアムさんの話、黒騎士との戦闘を含め、『古びたシリーズ』の説明をすれば、シオリはうんうんと頷いて、
「無茶をし過ぎ……! たかが訓練中のミニゲームで、しかもスキル獲得とは関係ない所で、ど う し て そ ん な 無 茶 を し た の か な !?」
「そんなことは決まっています。姉に負けたくないからです」
「やっぱりかー。知っていたよ! 相変わらずだね!?」
シオリがツッコミを叫びます。
自分でも少し無茶をしたな、とは思っていますが姉のことが頭を過ってしまいましたからね。
悪い癖だとはわかっているのですが、やめることは出来ません。性分ですね。
むしろ習性の域まで行っているかも知れません。
「ふふふ。お二人とも変わりませんわね」
私と織莉恵が掛け合いをして、セフィリアがそれを眺めながら、くすくすと笑みを浮かべる。
たまにセフィリアが最大級のボケを振る舞い、それの対処に私と織莉恵が遁走する羽目になってしまう。
それがかつての私達3人の日常。
それはきっと『シャーリィ』と『シオリ』と『セラ』になっても変わらなくて――
「どうしたの?」
「どうしました?」
「ん、なんでもありません。
少し、このノリに懐かしさを感じて浸っていただけです」
3人が揃ったことにはしゃぐのもいいですが、そろそろ本題に入らないといけません。
私はアルフォンスさんの屋敷でのこと、指名依頼のことをシオリに伝えます。
「『友人の元へ、かつて飲み交わした時のお酒の配達』かー。
んー、いいんじゃないかな?
『かつて飲み交わした時のお酒』ってのが、何か隠れたメッセージっぽくて裏に何かありそうなのが特にいい」
「考えられるものとしては『また一緒に飲もう』とか、『あの日、共に飲んだ日のことを思い出せ』とか、でしょうか」
「付き返すことで『お前との友情も終わりだ』とかかも知れない」
「お二人とも……主様を邪推するのは依頼を全部読んでからするものですわ。
ちゃんと依頼の中にそのことについても書いてありますわよ」
考察をする私とシオリにセラが半眼を向けてきます。
「それとシオリ、仮にも冒険者ならば、依頼を見もせずに受ける事前提で考えるのはどうかと思いますわ。
何か大きな事件に巻き込まれるかも知れませんわよ」
「大丈夫、セラ。依頼を見なくてもわかるよ。
セラの主様で、気絶していたシャーリィを助けてくれた人でしょ?
私達を意のままに出来る力を持っているのに、それをしたくないと考えていて。
二人の話を聞いただけだけど、少なくとも悪い人じゃないのはわかる。
だからきっと大丈夫。乙女の勘がそう言っているのです」
セラの諌めに、シオリがうんうんと頷きながら返します。
シオリの判断は私とセラの話したことが正しいことを前提としていて、その信頼が嬉しくて、何処かこそばゆいですね。
『乙女の勘』とか言っていますし、実際に勘による部分も大きいのでしょうが、それでも、少し頬が緩んでしまいます。
「まったく、そんなことでは後々痛い目を見ますわよ」
「その時はその時ってね。それよりも肝心の依頼は?」
「それならセフィロトが――【緑命神樹】という私の限定特典で付いて来た妖精が、ギルドに提出しに行っていますわ。
依頼が正式に受理されれば、こちらにそのまま指名依頼として持ってくる予定です。
私も一応は依頼者側ですが、友人との久々の再会ということで、こちらにまわされましたの」
「気を使わせてしまいましたわね」と、セラが苦笑します。
当初はセラとセフィロトが依頼者側として、ギルドに依頼の提出をする予定でしたが、セフィロトは「こんな仕事、あたし一人で十分よ。セラはお友達とお茶でも飲んで待ってなさい」と、一人で行ってしまいました。
セラが言うように、きっと私達に気を使ってくれたのでしょうね。
おかげで、こうして3人での再会を楽しめているのですから、本当に有り難いことです。
私は心の中で感謝をしながら、彼女を待つ間のシオリとセラとの雑談に興じるのでした。
セフィロトさんはパートナーに気を使える妖精さん。
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