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Star Gate Online ~妹は姉の作ったVRゲームで『裏の世界』の仲間達と一緒に遊ぶようです~  作者: 如月ひのき
第二章 友人が言うので普通に遊びますが、姉に対する警戒は怠るつもりはありません。
14/36

妹、シスコンを疑われる。

第二章の始まりです。



日間VRゲームランキング(18/12/16 11時~12時更新)にて51位になりました。

週間VRゲームランキング(18/12/16朝更新)にて41位になりました。

皆様のおかげです。閲覧、ブックマーク、評価、感想、ありがとうございます。

「そういえば、『彼女』もこの世界に来ているみたいですよ」


「『彼女』って……もしかして、セフィ?」


「ええ、そのセフィリアです。まだ確定ではないのですが、私と同じ冒険者ギルドに所属しているようなので、近いうちに会えるかも知れませんね」


 明け方、私達はクランディルスの街に戻ってきました。

 まだ薄暗い、人通りもまばらな街の中をシオリと一緒に歩いていた私は、ふとシオリにもう一人の友人が来ているかも知れないことを伝えます。

『彼女』らしき人物が来ているかも知れないというのに、私だけが知っていて、もう一人の『彼女』の友人であるシオリが知らないのは、どうかと思いますからね。


 私達は俗にいう仲良し三人組というものでした。

 

 <万能の天才>と謳われた姉を持ち、時空の神である父と転生者の母を持つ(らしい)私、水城シャーロット。


 四条財閥の令嬢にして、唯一の霊体化実験成功者である元一般人、もとい逸般人の四条織莉恵。


 そして、<豊穣の狂母>の千人目の子供。唯一己の腹で産み落とした、植物と人とのハーフ。世界最高峰の暗殺者であるセフィリア・ホワイトローズ。


 あの化け物染みた怪物達が跋扈する『裏の世界』で出会った私達は、歳が近いこともあってすぐに意気投合。私が『表の世界』の高校に進学するまで、よく一緒に遊んでいました。


「そっかー。セフィも来ているんだね。やっぱり持っているかな?」


「そうですね。私とシオリが持っていたことからすると、可能性は高いですね」


 私が持つ【黄金神眼】。シオリが持つ【紫皇神獣】。

 1万人のβプレイヤーのうち、7人だけが持つ限定特典を私達は所持しています。


 表向きはランダム配布を装い、実質は姉と姉の友人達が選んだ7人に渡したであろうそれは、おそらく姉がこの世界を創造した理由に関わるものでしょう。

 もしセフィリアがこの世界に来ているのなら、私達と同じように限定特典を渡されている可能性は高いです。


「なるほど、なるほど、つまりこういうことだね。

 ユニークスキルを持った美少女3人娘の無双旅……はじまります!」


「残念ながら……」


「即座に否定された!?」


「『妖精を連れた森精種族の少女』がセフィリアだと確定したわけではないですし、仮にセフィリアとしても限定特典を持っているとは限りませんからね。

 あくまで状況的に持っているだろう、という予想に過ぎません。

 それに――」


「それに?」


「私はしばらくこの街を拠点にしてスキル上げをする予定ですし、シオリは『無双』と言いましたけど、この世界の魔物はそこまで弱くないと思います」


 Gランク冒険者が受注できる依頼に出てくる魔物の一つに<ファング>という魔物がいます。

 <ファング>は死んだ<ウルフ>の魂が寄り集まって出来た魔物ですが、そのままの状態でも物理攻撃に耐性を持っているので面倒ですし、<ウルフ>に取り憑いて<ウルフ・ファング>になられると物理耐性はなくなりますが、その戦闘能力は跳ね上がります。


 <ウルフ・ファング>の<ハティ>は下級キメラの速度と中級キメラの破壊力を持っていました。

 速度はこちらの方が上でしたので、傍から見れば終始優位に戦えていたように見えていたでしょうが、あの時の戦闘は、一撃でも当たれば即死という状況でした。

 戦いが長引けば疲労もありますし、いつまでも回避し続けられるとは限りません。

 吸血種族となっているので、夜明けというタイムリミットもありました。

 私は<ハティ>を倒したわけではなく、自身の能力で白い狼――シオリが取り憑かれなかった状態に事象変化をさせることで、お茶を濁したに過ぎません。

 これで『無双』が出来るとは、とても言えないでしょう。


 そのことを伝えると、シオリは飽きれたような視線を向けてきました。


「シャーリィ、ああいうのってパーティが複数集まって倒すものだからね?

 一人で相手を翻弄しながら倒すものじゃないからね?」


「姉なら出来ますよ」


「うわ。確かめてもいないのに相変わらずの信頼感!? シャーリィ、リア姉のこと好き過ぎない!?」


「愛していますよ。家族ですから」


「そういうことじゃなくて……まあ、いいや」


 シオリの言いたいことはわかります。『シスコン』と言いたいのでしょう。

 否定はしません。認めます。

 偉大な姉を超えたいと、強く願っている私は姉にコンプレックスを持っていると言えるでしょう。

 姉――シスターにコンプレックスを持っている。つまり『シスコン』です。

 でもそういうことではないのです。この感情はそういったありきたりの言葉では表せません。

 『シスコン』ではあるのでしょう。『家族』として愛してもいます。

 けれど、それは見えている一部であって、根本的な所では私は姉を――


「それで、これからどうするの?」


 私を現実に引き戻したのはシオリの言葉でした。

 VRゲームの世界で現実に引き戻されるというのも奇妙な話ですが。

 どうやら、また思考の迷路に迷い込みかけていたようです。

 私は気を取り直してシオリの質問に答えます。


「まずは冒険者ギルドで受けていた依頼の報告をします。

 それが終わったらシオリの職業探しと宿探しですね」


「私はシャーリィと同じでいいよ」


「シオリも冒険者になる、ということですか?

 別に合わせなくても、他の好きな職業についても構いませんよ」


「えー。シャーリィもセフィも冒険者ギルドに入ったのに、私だけ仲間はずれは嫌かなー」


「……まあ、シオリがそう言うなら……あ、でも……まあ、シオリなら大丈夫ですかね」


「うん? どうかした?」


「いえ、こっちの話です」


 シオリは元々『表の世界』の一般人でしたが、逸般人でもありました。

 霊体化実験の後、『裏の世界』に深く関わる様になりましたし、先輩冒険者達の『洗礼』にも耐えることができるでしょう。うん。


「職業はいいとしても、宿屋は別ですよ」


「なんでよ? 一緒でいいじゃない」


「私が泊まっている<月の恩寵亭>は吸血種族専用ですから、獣人種族であるシオリは泊まることが出来ません」


「差別だー」


「いいえ。区別です」


 吸血種族が普通の宿に泊まったら、窓からの日差しで大変なことになってしまいます。

 獣人が普通の宿のお風呂に入ったら、毛が湯船に浮かんで大変なことになってしまいます。

 種族次第ではこのように普通の宿に泊まることが出来ません。

 ゆえに、種族ごとに専用の宿というものがあるのです。


「むぅ。仕方ないかー。でもたまには遊びに来てよ」


「遊んでいないで仕事で合流しましょう。一緒に冒険者になるのでしょう?」


「仕事って……VRゲームは遊ぶものなのに……」


「VRゲームの世界でもお金は必要ですからね。

 VRゲームで遊ぶ=VRゲームの世界の中で生活する為に働く、ということになるのです」


「せ、世知辛い……」


 生きる為には仕方ありません。

 <SGO>は現実の身体を生体データ化してゲームの世界に本当に入り込む『完全フルダイブ式』を採用しています。

 これはログアウトをしなくても、現実世界の身体がどうにかなる危険性はありませんが、逆に言えば、この世界が生体データとなった私達の現実になってしまっているとも言えます。

 つまり――


「働いて稼がないと、飢えて死にますよ」


「その前に緊急ログアウトとかは?」


「姉がそんな生ぬるいことをすると思いますか?」


「ですよねー」


 そんなことを話している間に冒険者ギルドの建物が見えてきましたね。

 明け方なので依頼を探しに来た冒険者達が次々に入っていくのが見えます。

 依頼が張り出されて受付が込む前に報告を終わらせなければ。

 私はシオリを急かしながら、冒険者ギルドへ進む歩を早めるのでした。

お姉ちゃん大好きシャーリィさん。


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