妹、アバターを作成する。
冷やし中……投稿、始めました。
母→お母様 に変更。 キャラクター→アバター に変更。
他、微修正。大筋に変化はありません。
『ようこそ<Star Gate Online>へ。アバターの作成を開始しますか?』
現在、真っ暗な空間の中で、私の意識だけが浮かびあがっている状態です。
もし、幽体離脱をしてしまったら、このような感じなのでしょうか。
目の前には進行役でしょうか。羽の生えた天使型のアバターの姿が見えます。
身体が存在していないので目が存在しないはずなのに、見えるというのも不思議な感覚ですね。
さて、私がいる場所ですが、完全フルダイブ式VRゲーム<Star Gate Online>のアバタークリエイト空間になります。
『ある一人の天才』が創造した世界初の完全フルダイブ式VRゲーム<Star Gate Online>。
ゴーグルを覗き込んで仮想世界を疑似体験するのではなく、本当の意味でゲームの中に入り込んで遊ぶことが出来る完全フルダイブ式は他に類を見ない画期的な発明でした。
βテスター募集の発表からわずか10分で1万人分のゲームIDと完全フルダイブ式VR装置の無料配布の抽選が終了したそうです。
本来ならば、正式版の発売まで手に入れることが出来ないはずのゲームIDと完全フルダイブ式VR装置が、私の元に送られてきたのは三日前のことでした。
学校から帰ったら、見覚えのない筒状の装置が自宅のマンションの部屋に設置されていたのには本当に驚きました。
抽選に応募した覚えが全くありませんでしたからね。
完全フルダイブ式VR装置と一緒に付いて来た手紙に『私の作ったゲームを遊んで欲しい』と、姉の筆跡で書かれていたので犯人はわかりましたが、せめて事前に連絡を入れて欲しかったです。
完全フルダイブ式VRゲームを開発した『ある一人の天才』とは姉のことだったようです。こんなものを創り出せるのは姉くらいしかいないので、予想はしていましたけどね。
開発者が匿名の『とある天才』だったのは、外見13歳、実年齢22歳の合法ロリの姉が表舞台に出てくると色々面倒なことになるからでしょう。
合法ロリの天才発明家とか話題性抜群ですから。
姉は自分が開発したものや発見したものを表舞台に出す時は、自分の信奉者を隠れ蓑にしたり、匿名で発表したりしています。おそらくは今回も同じことなのでしょう。
そんなわけで、身内のコネで新作ゲームの筐体とゲーム本体を手に入れた私は、この三日の間にネットで情報を集め、今日ようやくまとまった時間が出来たのでログインすることにしたのです。ちょうど今日から夏休みが始まりますしね。
「……あ、はい。お願いします」
いけない。回想に夢中で返事をするのを忘れていました。
天使型の進行役アバターはにこりと微笑むと私の側に近づいてきます。
『まずは登録されている現実でのお名前をお願いします』
「水城シャーロットです」
芸名とかペンネームっぽいですが本名です。いわゆる再婚の連れ子です。
お母様と同じ白金色の髪は私の自慢のひとつです。
幸か不幸か、黒髪の多い日本ではよく目立ってしまっていました。
その所為で昔は色々ありましたが、それも今はいい思い出です。
無理やり黒く染めようとしたあの教師。新しい就職先、見つかりましたかね。
あ、英語は喋れません。ずっと日本で暮らしていましたので。
見た目だけで英語が喋れると思ってはいけませんよ。
『確認しました。ID番号<β-00003>のシャーロット様ですね。
このID番号には限定特典が付いております』
「限定特典ですか?」
限定特典というのは初耳です。
先行IDの説明にそんなものはなかったはずですが。
『限定特典はID番号<β-00001>から<β-00007>までに与えられる特典です。
シャーロット様に与えられる限定特典の名称は【黄金神眼】になります。
これは固有スキルに分類されます。
効果としては【アイテム鑑定】【構造把握】【弱点看破】【霊視】【暗視】等の視界を利用するスキルを【黄金神眼】のスキルレベル×1個分、本来の活性スキル枠とは別に登録することが可能になります。
このスキルは非活性状態にすることが出来ません。
また、瞳の色が黄金色固定となるのでアバター作成時に瞳の色を変えることが出来ません』
<SGO>はベースレベルと種族レベルを合わせた総合レベルの半分の数だけ使用するスキルを登録することが可能になっています。
仮にベースレベル1で種族レベルが1だと、総合レベルが2。この場合だとスキルを1つ登録することが出来るというわけですね。
一度に登録することが可能なスキル数が限られているこのゲームで、視界系スキル限定と言っても別枠でスキル登録が出来るこのスキルは、序盤はともかくレベルが上がってスキルを覚えていけばいく程、有用なスキルになっていくことでしょう。瞳の色を変えられなくなるみたいですが、特に拘りもないので問題はありません。
了承の意を示します。
『続いてアバターの外見設定に移ります。
瞳の色は黄金色固定となりますので、その他の部分の設定をお願いします』
目の前に現実の自分の裸を模したアバターが現れます。
外見設定を進めるとこの身体が変化していくから、それを見て設定をしていけということなのでしょう。
腰まで伸びるふんわりとしたウェーブの掛かった母譲りの白金色の長髪。
少し幼い雰囲気が漂うアンティークドールのような整った顔立ち。
透き通るような白い肌。大きな胸の豊満で肉感的な肢体。
限定特典により、瞳の色だけが本来の蒼色ではなく、黄金色になっています。
うん、可愛い。美少女に産んでくれたお母様には本当に感謝だ。
ありがとうお母様。
「このままで」
『現実と同じ姿にした場合、トラブルが発生する場合があります。多少なりとも変更することを推奨いたしますが、変更なしで本当によろしいですか?』
「問題ありません。このままでお願いします」
お母様譲りの白金色の髪色を変えたくないですし、自分の姿に不満もないので現実そのままの姿で行くことにします。というか、既に動画サイトで顔出しをしているので危険性うんぬんは今更の話です。
『かしこまりました。それでは種族の選択に移ります。
種族によってはアバターの外見に多少の変更が出ますが、ご了承ください』
天使型のアバターがそう言うと、選択出来る種族の名前と特徴の書かれた表が目の前に現れました。
<SGO>には複数の種族が存在します。
種族はアバター作成時にだけ決めることが出来、その後は変更することが出来ません。完全フルダイブ式システムの仕様上、1つのゲームIDに付き、作成出来るアバターは1体だけなので慎重に決めたい所ですね。
種族スキルを持たない代わりに全種族で唯一魔道具を使える<人間種族>
【自然魔法】【植物会話】の種族スキルを持つ<森精種族>
【鉱石発見】【炎無効】の種族スキルを持つ<地精種族>
【肉体強化】【動物会話】の種族スキルを持つ<獣人種族>
【索敵】【機械操作】の種族スキルを持つ<機人種族>
【竜変化】【威圧】の種族スキルを持つ<竜人種族>
【吸血】【夜行性】の種族スキルを持つ<吸血種族>
少し考えて、種族表の中から<吸血種族>を選択します。
この種族を選んだ理由は特にありません。
あえて理由を付けるなら私の中に眠っていた14歳的な部分が刺激されたからでしょうか。
こういうのは直感で決めるのが一番。カッコイイは正義なのです。
それに、どの種族を選んでも長所と短所があることには変わりませんからね。
<吸血種族>を選択したことで、アバターに変化が生まれます。
元々白かった肌がさらに白くなっていきます。口を閉じているので確認することは出来ませんが、牙も生えていることでしょう。
裸だった身体には白いワンピースが着せられ、手には白い日傘が装備されました。この日傘で太陽の光を避けろということなのでしょうかね。
『最後に貴女の新しい名前を教えてください』
「シャーリィ」
シャーリィはシャーロットの愛称です。
特に捻りはないですが、響きが気に入っているので、こういうゲーム等で名前を付ける必要がある場合はこの名前で固定しています。
顔出しで活動をしている動画サイトの登録名も同じなので、<SGO>のゲーム動画を投稿する時にわかりやすいという目算もあったりします。
動画撮影機能は正式版からなのでまだ先の話ですけどね。
『シャーリィ様ですね。
それでは、これでキャラクター作成を終了します。お疲れ様でした。
<Star Gate Online>へようこそ。新たなる<星の旅人>よ――』
天使型アバターの声と共に周囲が光に包み込まれていきました。
ストックが切れるまでは毎日投稿。
ストックが切れたら、週1、週2辺りを目安に頑張ります。
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