表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

花見と唐揚げ

「よし、できたで。完璧や」

「もうできたんか、どれどれ」

「期待してええで。てっちゃん大喜びで転げ回って、三回まわってワン!や」

「唐揚げしか入ってへんやんけ」

「ふっふっふ。そう思うやろ?ほんま素人やなあ。それだけじゃないねん。ここはビックリ仰天の仕掛けが隠されているわけですよ。サプライズや、サップラぁぁあーーーイズ」

「なんやなんや。ビックリ弁当みたいに具材の下に新たな他の具材が隠されとったりするんか?でも唐揚げとおにぎりしか入ってへんしな。おにぎりの具がすごいとかか?」

「ちゃうちゃう。おにぎりの具も唐揚げにしようかと思ったけど、そんなベタな笑いはもう飽き飽きやん?」

「どこがベタなんかわからんけども」

「なんとな、唐揚げの種類が違うんや!バリエーションに満ちた唐揚げたちの共演やで」

「思った以上に地味すぎてサプライズやわ。どんだけ唐揚げ食わせようとするんよ。んー、まあ、たしかに唐揚げよう見たら、形や揚げ色が違うのはわかったけども。やから何やねん。唐揚げは唐揚げやろ」

「唐揚げバカにしよるな。大食い競争とかでもあるやろ。ずっと同じ味食べとったら、飽きがきてなかなか食が進まんくなってリタイアするって。やから薬味たしたりして、少しでも味を変えてから量を稼いだりしよるやん」

「花見いくだけなんに何期待しとるん」

「まずはな、これが冷凍食品でいっちゃん人気のある醤油味風の唐揚げや。衣はしっとりしてキツネ色通りこして焦げ気味に見えるけど、肉汁がジューシーで柔らか、一度箸をつけたら止まらんくなる美味しさや」

「それ褒めとるんか?」

「ほんでこっちがスーパーで売っとった惣菜の唐揚げや。白くてカラッと仕上がった塩味風の唐揚げで、衣だけ食べてもサクサクしてて美味しい。まあ、こらビールのお供に最適なんやないかな。半額やったけど、そんなこと気にするのは無粋やで」

「そら、上手かったらなあ。そこまで神経過敏に賞味期限守るほうでもないし」

「最後にこれや、唐揚げを専門としとる店の唐揚げや。そらもう専門店のものなんやから、味にお墨付きついとるようなもんやな。ここは味付けかぶらんようにちょっと趣向を変えて、カレー風味の骨無しモモ肉をチョイスや。プラスそれだけやあらへん。激辛ペッパー風味の唐揚げ、砂肝の唐揚げ、骨付き肉の唐揚げもサイドに添えてんねん」

「唐揚げで殺す気なんかな。さすがに胃がもたれるわ。もうちょっと軽いもんいれとけや。油ギトギトやんか。なんで弁当なんにポテサラとか卵焼きがないねん。ちょっとはオアシス用意しとかんと、すぐギブやで」

「さすがにそれはなあ、思ってんけど。やから魔法瓶にカレー入れといたろかなって」

「おにぎりの存在意義」

「でもあれやん。魔法瓶がめっちゃカレー臭くなりそうやんか。カレー専用魔法瓶にするのも可哀想やなって、切実な葛藤があってな。連れていってやりたかったんやけどな、今日は我慢しといてやって話つけてん」

「ものわかりのいいカレーでよかったわ」

「悩みに悩んだ末、こうなったわけや」

「もっと悩むとこあったやろ」

「てっちゃんこそ、そんなブーたれとるけど場所取りできたんやろな。今なんでここにおるんか不安でしょうがないけど」

「おう。ええ感じの場所にお前のお気に入りのDVDコレクションばらまいとったから、たぶんそこ空き地になっとるわ」

「ちょお、やめてや。道ばたで寝そうになってる泥酔した女子大生を、介抱するふりしてワゴンに連れこむやつとかみんな大好きに決まっとるやん。人むらがってしまうがな。はあーもう、これが本当の花びら大回転とか言うんやないやろな。ほんまおもんないで」

「うん、俺もちょっと引いたわ」

「何してくれてんねん。ヒマと性欲を持て余しとる近所の奥さんに気軽に声かけれんくなるやろ」

「お前が何してんねん」

「こうなったらてっちゃんの顔写真とTwitterにアップされとる誰かしらんチンコの写真並べたビラ作って、回覧板にはさんどいてやるからな。見せたがりの変質者がこんなとこ住んでんの?いややわあ、こわーいって。みんな離れていくで。あーでもダメや。そのチンコに吸い寄せられて、逆に人妻が殺到するかもしれんわ。ダメや、ダメダメ。そんなんずるいやん。俺も人妻と遊びたいんやもん」

「人妻のこと何やと思ってん」

「ビラに追加で、用がある場合はここまでって、電話番号のせといたらええな。そしたら、今その子お休みしてるんで、代わりの者が伺いますーって、俺が行ったらええしな。ああ、完璧や。これで人妻からのお誘いにのっかれるで」

「絶対それ警察やん」

「そら警察でてきたら、てっちゃん差し出すわ。こんなチンコ、俺のとちゃいます!ってガチ切れしたる。確認したいんですか!はあ?ホモなんですか?なんやの!なんでお前らにチンコ見せなあかんの!本人確認でチンコ見せなあかんとか人権侵害です!はあっ!?なんでそこまで言われなあかんのですか!そんだらもう見せてやりますよ!しょうがないから!仕方なく!ほら!見んかい!これがワシのチンコや!どうや!ぎょえええええ!って」

「俺のでもないんやけど、殺すぞ」

「そんなアホなこと言っとる場合じゃないで。早よいかんと、DVD押収されてしまうわ。中学生ホイホイになっとるかもしらん。俺の貴重なコレクションが汚れてしまう。あーおぞましい。怖いわ。これ以上、彼女たちを泣かせたらあかんねん」

「ほな、さっさと行こか」

「てっちゃん、そしたら、ほら、あれ。例のジャンプや。場面転換のジャンプするで」

「いや、俺はコンビニで酒と唐揚げ以外のつまみも買ってから行くわ」

「なんでやねん。そこはスーッと、行かんと。ジャンプしたついでにそこのシーンも済んだことにしとけばええやん。移動に便利やで」

「お前はどこの世界に住んでんねん」

「ええから、行くで。そこのくだりはもうええんよ。しつこい男は嫌われるいうやん」

「絵すら無いのに無茶苦茶やな」

「お、ついたで。めっちゃ人おるなあ。少し肌寒い気がせんでもないけど、桜も見頃でええな」

「まだ俺、ジャンプしてへんのやけど」

「てっちゃんが確保した場所あそこらへんやろ。ほんまに場所確保できとんのかいな。パワー系の大学生に奪われとったら諦めるしかないわ」

「そっちやないわ。こっちや、こっち。少しのぼったとこやねん」

「え、なんでそっちなん。桜から少し離れるやん」

「そっちごっちゃごちゃして桜は綺麗やけど、絶対酒飲みがうるさいやん。雰囲気ぶちこわしてくれよるから、ちょっと離れてん。こっちの丘から桜見下ろして飲むほうが、なんか風流やろ」

「おー、それはよさそうやんね。ナイスアイデアや。というか、なんでジャンプしてないのにてっちゃんおるん」

「そこは流せや、カス」

「あ!俺のDVD!ああっ!無事やったわーよかった。ごめんよ、マイワイフたち。悪魔の手に渡ってしまったばっかりに……。しかしこれ何枚ばらまいとんねん、ほんま。訴えられてもしょうがないで」

「裁判でDVDタイトル読み上げられていいなら訴えろや」

「そんなレンタル屋みたいな仕打ちやめてや。唐揚げ食べて和解やで。ささ、食べるで。シート広げんと。あ、やば。忘れてきたわ。まあ、いいや。持ってきた体にしとこ」

「なんでもありやな」

「ええねん、ええねん。はいはい、かんぱーい。っっっぷはーっ、骨身に染み渡るなあ。意味はようわかっとらんのやけど、めっちゃ骨身やわあ」

「ファンタやんけ」

「骨ほね言うとったらホッケ食べたくなってきたなあ。あ、でもやっぱポテチやな。ポテチの存在忘れとったわあ。いやあ、でも粗チンみたいにしょぼくれたマックのポテトもええな」

「唐揚げ食うたれや」

「あ、そやそや。すっかり忘れとったわ。じゃじゃーん。花見特製弁当やで」

「もう見とるしな。唐揚げとおにぎりしか詰まってへん」

「はあー……唐揚げは上手いし、ほんま桜もきれ…い………ん?……人間ジャマやな。死なんかな、あいつら」

「それも含めての花見やろ。お祭りみたいなもんやん」

「狙撃するのにちょうどよさそうな場所なんに。もったいないなあ。ちょっとくらい殺してもええんやない。あ、そうや。唐揚げぶつけたろ。ちょうど豊富にあるし」

「日本、出禁になるわ。ちょっと大人しくしとけや」

「ノンノンノン。そんぐらいじゃ俺の暴走は止まらへんで。今まで隠しとったけど、とんでもないポテンシャル秘めてんねん。覚醒する時がいよいよきたんやな。誰が止めようとしてもな、俺のこの揺るぎない精神は……ああ、ん……なんやろ……えーと……揺るぎない精神は、めっちゃ揺るぎないんや。唐揚げ上手いな、これ」

「ほんまやな。量がバカなだけで、うまいな」

「おにぎりは通っぽく、ただの塩むすびやねん。おかずこれやから、逆に具なしはええやろ」

「たしかにな。めっちゃメシ進むわ。少し硬めに炊いた米もええ感じやな」

「そやろー。弁当に詰めてベチャるのが嫌やったから気持ち水少なめにしとってん。食べる時にちょうどええ感じの食感になっててよかったわ。ご飯が上手いと、それだけでいくらでもいけてしまうよな。そこに唐揚げとかパワーフード持ってこられたら、鬼に金棒とおりこして、ショットガンくらいいっとるんちゃう」

「揺るぎない精神どこいったん」

「そこらへんに捨てたわ。使用済みティッシュぐらい存在価値ないわ、そんなん」

「プライドもなにもないな」

「ようゴミと間違えられとるしな。まとめて、ぽいーっやで」

「ついでにDVD捨てといたろか」

「いやん。それはダメやん。優しくしてあげんと。みんなナイーブなんやで。てっちゃんもほら、コンビニ買ってきたもんだしてよ。さすがに唐揚げばっかりで飽きてきたで」

「誰の采配やねん」

「あーっ、やっぱりポテサラ買ってきとるわあ。買ってきとると思ったんよ。あ、これ、ポテチもあるやん!はよ言うてよ。さすがやわあ。抜け目ないなあ、このポテサラ&ポテチ芸人。このポテサラに砕いたポテチふりかけても上手そうやんな。しっとりとサクサク食感の融合や」

「ポテサラにポテチふりかけるんもええけどな、ポテチにポテサラのっけて食べたほうがお洒落やん?」

「あーっ!クラッカーみたいな食べ方!あの、あれやん。ちっちゃいピザ作るみたいな感じのやつやん」

「そうそう。あんな感じ」

「うわあ、めっちゃセレブ感漂っとるなあ。あんなん意識高そうなババアしかせんのかと思っとったけど、てっちゃんババアやったんやなあ」

「なんで急にディスりだしてん。誰がやってもええやろが」

「まあええやん。とりあえずそれで食ってみようや。…どれ…………あ……ええね。うんうん。味はいっしょなんやけど。これはセレブになった感あるわ。はあー…………セレブリティ」

「でも、なんかあれやな。これならチーズとかも買ってきとけばよかったな」

「そこはもう唐揚げで我慢するしかないで」

「いや、もう、唐揚げはええねん。唐揚げ地獄やん。あんま食い過ぎたら見るのも嫌になってしまうわ」

「そこは安心して。夕飯は残った唐揚げやで」

「嫌がらせか」

「ちゃうちゃう。醤油、みりん、酒、砂糖で甘辛く唐揚げを炒めて、片栗粉でとろみつけてから、あとはお好みでマヨちゃんかけるんよ。味がガラっと変わって美味しいで」

「んー……それはうまそうやけど……なんで弁当でそういうのいれんかったんや」

「ライブ感で生きとるからな。そん時は思いつかんかったんよ。なんなら、そのシーンに戻ってもう一度弁当作ろうか?」

「またとんでも理論でてきた。ええわ、どうせ唐揚げ詰めなおされるだけやし」

「さよか。ほんならこのままでええか」

「なんだかんだで唐揚げうまいな」

「うん、最高やで」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ