タコパる
「あいたたた、お腹痛いわあ」
「そんまま死ねばええのに」
「あああああ、このままじゃケツから硫酸でそう」
「ぶちまけたら叩き潰すからな」
「よけいでるやん」
「布団圧縮袋にいれてから叩くわ」
「めっちゃゴマみたいな殺され方」
「ゴマに謝れや」
「さっきタコパやっててな、えらい盛り上がってたんやけど」
「なんで俺よばれてへんねん」
「あれって具いろいろ入れるから楽しいんやんかあ」
「あー、タコだけやのうてウィンナーとかチーズとかやろ」
「そうそう、それやそれや。どれにどれいれたかわからんくなって闇鍋みたいになるやん?」
「そんぐらい覚えとけや」
「それもそうやけどお、でも中に何が入っとるかわからんくなっとるほうがサプライズがあるやろ?ああ、これ当たりのやつやん、上手いわーみたいな」
「あーなるほど。はずれも作ったっちゅうことやな」
「そや。そういうことや」
「それで腹痛いんか」
「それはちょっとちゃうねん。ほら、俺って一流のエンターテイナーやん?やからみんなに最高のサプライズをプレゼントしたかったんよ。みんな好きな具材持ち寄ってな、楽しそーにたこ焼き作ってたんやけど、もうその時点で俺の仕込みは完了しててん」
「悪い予感しかせーへんのやけど」
「みんな元気になるように、生地のほうに精力増強ドリンク混ぜてやったんよ」
「ほんま呼ばれんでよかった」
「まさか生地のほうに細工しとるとは誰も思わんでな。みんなパクパク食うとったわ」
「ソースの味とかでわからんくなってそうやもんなあ」
「しばらくなんもなかったんやけどな、途中からみんなソワソワしだしてきてん」
「ドリンク効いてきたんか」
「たこ焼き食べんでポテチとファンタばっかり飲んでたから、みんなが怪しみだしてん」
「お前ほんま小学生か」
「たこ焼きになんか変なもん入れたんちゃうやろうなあ?とか問いつめだしてきよるんよ。一流のエンターテイナーに向かってめっちゃ失礼やない?」
「誰も呼んでへんから」
「なんかみんな強気やもんね。お前も食わんかい言い出して」
「完全にドリンクのせいやん」
「いいや、俺はもう死んでも食わん言うて必至に抵抗したんよ」
「タコパに何しにいったんや」
「そしたら羽交い締めにされてな。無理矢理、口の中にたこ焼き入れようとしてくるんよ。やっとることほぼレイプやで」
「どんだけほのぼのしたレイプやねん」
「ほんだら、たこ焼き上手すぎて、今度は食べ過ぎて怒られたわ」
「どっちにしろ怒られる運命やったんやな」
「無茶苦茶やろ。食べれ言われて食べたら怒られるんやで。ほんで、食い過ぎて腹痛中や。誰か下剤いれとったんちゃうか、あのたこ焼き」
「そらひどいな。ええお仕置きになったやろ」
「こんなサプライズ求めてないねん。サプライズすぎるわ」
「でも、ええ体験にはなったやろ。悪いことしよう思たら悪いことが返ってくんねん」
「ちゃうやん。善意やん。善意のサプライズで精力増強ドリンクやったんよ。もしかしてエロDVDもセットで用意せなあかんかったん?でもスマホで見れるやろそんなん。そんぐらい自分でコントロールせえっちゅう話や」
「乱してんの誰やねん」
「危うく乱交パーティになるかも知らんかったから逃げてきたんやけどな」
「女もおったんか」
「いや、男だけやけど……」
「地獄絵図やな……ようそんなんやるわ」
「よっしゃもっかいタコパやったろ」
「誰も参加せーへんやろ」
「もう、そんなこと言ってえ。てっちゃんも参加したいくせに」
「アホほどたこ焼き食ってきたばっかやろ」
「ええねん、ええねん。てっちゃんおちょくることに比べたら些細なことや」
「せやな。その前にどつきまわすだけや」
「ちょっと待ってや。まだ何もしてへんやろ」
「する気まんまんやん」
「じゃあ、今日から俺は妊婦っていう設定にするから。せやから殴ったらあかんで」
「性別とおりこすなや」
「さっきからトイレで出産ばっかりしとるんやから妊婦みたいなもんやろ」
「ほんまどっかからクレーム入るで」
「てっちゃんも具材用意しときや。言うとくけど変なもんいれようとしたら自分も食べる可能性あるんやから用心しとくことやで」
「お前に言われたないわ」
「よし、準備できた。あとは焼くだけや」
「この一瞬に何があったん」
「準備しとるとこのシーン端折っただけやん。テレビとかでよくあるやろ?場面変わる時、なんでかジャンプするようなやつ。あれや、あれ」
「荒技すぎひん?」
「まあ、ええやん、そこは。詳しく説明したところでおもんないだけやで。ええ感じに腹も減ってきたし」
「あ、ちょ、待てや。生地流し込むな」
「なんでや、たこ焼きやけへんやろ」
「ドリンクいれてへんよな。チェックせなあかん」
「入れてへんわ。さすがに二度同じサプライズはせんわ。そんなん一流エンターテイナー失格や」
「まだ生きとったんかその設定」
「生きてる限り続くんやで」
「妊婦もか」
「いや、それは飽きたからもう捨てた」
「ほんま怒られるぞ」
「ぎゃーぎゃー言わんと。生地流し込むで」
「変なもん入れてないよな」
「入れてへんわ。今回はそんなところにサプライズ仕組んでないわ」
「サプライズはどっかにあるんか……」
「そうやで。飛び切りのやつやで。てっちゃん喜ぶやろなあ」
「こんな恐ろしいタコパある?」
「てっちゃんも好きな具材、用意してきたんやろ?」
「主に睡眠薬」
「ダメやん、寝るやん」
「医者が処方してくれんかったわ」
「あっぶないわ。またレイプされるとこやったわ」
「お前のケツの穴誰が狙っとんねん」
「そら、世界中探したらどっかにおるやろ。ガムテープ貼っとかなな」
「食欲うせるからやめろや」
「まあ、ええわ。今度こそ流し込むで」
「ほんま大丈夫なんやろなあ」
「そこはもう安心しいな。あ、でも、言わんほうがドキドキするんか」
「お前、なんかやっぱしとるな」
「いやいや、なんもしてないんやけど、なんかしとるかもという可能性も残しといてあげたほうがええんかなって」
「そのミステリーやめれ。無駄にドキドキさすな」
「女はいつだってドキドキしたいもんやろ」
「男しかおらんやろが」
「さあさあ、具材いれてくで。まずはてっちゃんから入れたらどうや。俺はわからんように後ろ向いとくでな」
「そういう風にやるもんなんか」
「出来上がってからいちいち皿に取り出してシャッフルすんのめんどいやん」
「普通に食えや」
「ほんじゃあ、あとはてっちゃん頼むで。中身わかったらおもしろないから出来上がりまで後ろ向いとくかんな」
「おう、わかったわ。自分が何いれたんかわかっとるなら安心して食えるわ」
「卑猥なもんいれたらあかんで」
「卑猥なもんって何やねん」
「使用済みこんにゃくとか」
「殺すぞ。でも、こんにゃくはいれたら上手そうやな」
「そやなあ。おでんの具とか片っ端からいれてもええんちゃう」
「それはおでん食えよ」
「細かくきったお好み焼きいれたら、わかるんやろか」
「わかるかボケ。紛らわしすぎるわ」
「粉もんなだけに?」
「上手いこと言ってへんからな、まったく」
「たまに誰かフリスクいれよるやつがおるんよな」
「うわーそれは、なんちゅう組み合わせや。たこ焼きの味全部もっていきそう」
「たぶん最初からフリスクはいっとる思ってたべたらそうでもないんやろうけど、唐突にひろがるフリスクのせいでくそまずいで」
「わかっとってもまずそうや」
「お菓子いれるんならキャベツ太郎とか上手そうやな」
「ああ、それはほんま上手そう。でもあれちゃんと生地で包めるんかな、大きさ的に」
「そろそろ、ええか?」
「ひっくり返しとるからええで」
「お、ちゃんとひっくり返せとるやん。上手にできたなあ」
「おかんか」
「さて、てっちゃんが何いれたか。センスかかっとるぞ」
「お前やないんやから安心せえ」
「食べて妊娠したりせんよな」
「何が入っとんねん、それ」
「愛やろ、愛」
「もれなく入ってへんわ」
「よかったわ、どうしよかと思たわ」
「どういう思考回路してんねん」
「ごちゃごちゃ言っとらんと食べるで」
「どうぞどうぞ」
「あ、お、お、ほっ、ほっ、おお?ん、あ、ほっ」
「食べてる時までうるっさいなあ」
「あ、これ普通に上手いわ。熱いねんけど」
「それがええんやろ。できたてなんやから」
「ちょお待ってや。これなんか当てたるからな」
「そんなたいしたもんやないで」
「わかった!これ、枝豆やろ」
「正解」
「上手いなあ、これ。大発見やな。次はなんやろ。あ、ほっ、ほっ、あ、ああ、あ」
「そのきっしょい声どうにかならんの」
「はあー上手い。死ぬかと思った」
「ちょっと冷ませや」
「いやあ、しかしこれは簡単やったで。タケノコや!」
「正解」
「わかりやすすぎるで。てっちゃんもまだまだやな」
「誰も中身あてクイズしようと思てへんからな。あとはウィンナーとチーズや」
「ああ、もう、先言うてしもてるやん。なんしよんよ」
「鉄板でええんや、鉄板で」
「ほんだらてっちゃん食べてる間に次の焼くわ。残りを皿にうつしてや」
「変なもんいれんなよ」
「そこは信用してほしいんやけど」
「信用でけへんから言うてるんやろ」
「大丈夫やて。バイアグラとか入れへんから」
「バイアグラ入りたこ焼きって何やねん」
「近所の犬にバラまいとこか」
「通報しといたるわ」
「さあ焼くで。てっちゃん回れ右を二回や」
「なんでこんな思いしながらたこ焼き食わなあかんねん」
「食べるものもなくて困ってる人もおるねんで。食べれるだけで感謝せなあかんわ」
「食べ物で遊んどるやつが何いうてん」
「あ、ほら、もう具材いれるから四回転半や」
「誰がフィギュアするかい」
「ギャグに厳しいなあ。そんなんじゃお嫁の貰い手も……まあいいわ」
「途中でめんどくさがるなや」
「これからどうしたもんかと思ってな。てっちゃんがこの先、結婚できるかどうか……あ、そうや。たこ焼きで当たりがでたら、ええことにしようや」
「嫌やわ、そんな占いみたいなん。なんでたこ焼きに運命握られとん」
「そこはあれやん。外れがでてもな、こんな運命、俺が覆らせたるって熱い闘志を燃やすところやん」
「たこ焼き占いにそこまでの情熱もてへん」
「じゃあもう、ただの一興やと思てるだけでええんやない」
「急に冷めた意見やな。占いなんてそんなもんやろうけど」
「信じるかどうか、思い込みの力やな。プラシーボ効果や。ってことは今てっちゃんが当たり引いてもハズレ引いてもあんま効果ないってことやんな」
「せやなあ、相手みつけるにはまず行動せなあかんしなあ。行動せんかったら当たっても意味なさそうやもんな」
「ほんま心配で夜も眠れんで。7、8時間はきっかり寝なあかんねんで」
「お前は、おかんかて」
「もうええで、こっち向いて。あとちょいで出来上がりや」
「ほんま変なもんいれてへんよな」
「しつこいねん。自分で確かめえや」
「それが怖いから聞いとるんやろ」
「さあ、食べなさい。愛以外はだいたい入れといたから」
「なんやねん愛以外て」
「熱かったらフーフーするんやで」
「うっさいな、おかん」
「あっつ」
「俺もてっちゃんのほうのたこ焼き食べとこ。ちょうどええ熱さになっとるやろ」
「お?……ん?これは……タコ?」
「お、そうや。当たりやん。良かったなあ」
「ここでタコいれてくるとか、まともすぎて怖いわ」
「何しても怖がるやん。もっと食ってや」
「ハズレ引くまで食わす気かい」
「てっちゃんのたこ焼きは俺が責任もって食べとくから、ほれほれ」
「怖いわー。ロシアンルーレットや」
「てっちゃんのはどれも当たりやなあ。上手いわ」
「そうやろ。ていうか俺もそっち食べたいねんけど」
「四回転半しとる間に充分食ったやろ」
「はあ………マヨぶっかけて味わからんくしとこ」
「あ、俺もマヨかけるから貸して」
「ほれ」
「あいよ」
「あっつうて舌ヤケドしそうやわ」
「こっちはもうしてるで」
「ん?……あれ、またタコやぞ。どういうことや」
「凄いなあ、連続当たりやん。よかおめ」
「怪しいな、そういやサプライズどこいったんや」
「さあ?」
「さあ、ちゃうわ。あんだけびびらせよってからに」
「そんなのあったっけ?覚えてないなあ」