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兵器擬人化異世界で補給車のオレがメカ美少女にMMD(モテてモテてどうしたらいい)!?  作者: すずきあきら
第一章 墜落したらそこは兵器擬人化異世界!
6/30

5 敵襲


 その日の夕餉は豪華だった。


「へーえ、みんないつもこんなにいいもの食べてるのか。これじゃほんとに」

(ふつうの人間と変わらないな)


 防人は思う。

 豚角煮、肉じゃが、グラタン、クラムチャウダー、それに、


「うむ。今日のカレーも、よい」


 五二型も絶賛するライスカレー。


「小麦粉をじっくり炒めて、カレー粉と合わせてあるからね。手間暇ちゃんとかかってるんだよ」

「このあいだ輸送艦が持ってきてくれたスパイスに、いいものがあって、さっそく役に立ちました」


 九九艦爆、九七艦攻が言う。

 ふたりとも、調理や配ぜんを終えて席についていた。


「おふたりのカレーはいつも、すっごくおいしいんですよ、防人さん!」

「今日のはまた絶品ね。やっぱり、いつもより力が入ってるって感じかしら。男がいると、違うわよねー」


 二二型の冷やかしに、


「そ、そんなんじゃないってば!」

「あらぁ、そう受け取っていただいても、いっこうかまいませんよぉ。うふふふ!」


 九九艦爆と九七艦攻では、反応が真逆だ。


「ま、まあ、ともかく、さ! うまいよ、みんな! んっ、これ、なんだ?」

「ハム寿司、です。どうぞ」


 三二型が大皿を手元に引き寄せ、そこから茶碗に取り分けてくれる。防人に差し出した。


「ありがとう。そうか、このピンクのはハムか。……んっ、うまい! こう、派手さはないが、ときどき急に食べたくなる味、っていうか、な」


 防人の感想どおり、じつはどれも、たいそうな食材や珍味を使っているわけではない。

 だがどれも味わい深い。

 軍隊の料理はあくまでシンプル、短時間、栄養のバランスと高カロリー、のはずだ。


(それでもうまい。やっぱり九九艦爆と九七艦攻の料理の腕だ。コツっていうかカンが、あるんだろうな)


 ふだん、防人は大食いではないし、朝は食べず、昼は学食か購買のパン、家での夕食もさほど量を食べるわけでもない。

 育ち盛りの男子高校生がそれで足りるわけもなく、では不足の分をなにで補っているかというと、菓子やジャンクフードだ。

 家で食事ができないわけではない。むしろ、言えばなんでも用意されるはずだ。だがどんな高価な食材でも、凝った料理も、


(うまいって感じ、しないんだよな、あの家じゃ……)


 チラッ、と浮かんだ記憶を振り払うように、箸を口へ運ぶ。

 確かに大変な一日だった-まだ終わっていない-が、それにしてもこの世界で食べる食事・飯がこれほどうまいとは。

 次々と料理を平らげて行く防人に、


「なんか、いいねぇ」

「見惚れてしまいます」


 うっとりと視線を向ける艦爆と艦攻のふたり。

 それに気付いた五二型が、改めて見回すと、にい子はもちろん、三二型もチラチラと、二二型もなにかと理由をつけては防人にからんでいる。


「やれやれ、だ」


 五二型は手元の杯をいっきに飲み干す。杯を置くと、しかしまだ濡れた唇は、微笑の形を描いていた。




「……ふぅー」


 大きく息を吐き出すと、代わりに新鮮な空気が肺に吸い込まれる。

 草や木の息吹を感じる空気が夜露の湿気を帯びて、なんとも心地いい。


「湯加減、いかがですか、防人さん」


 背後から声。


「ああ。ちょうどいい。悪いな、にい子」


 防人が答える。

 ドラム缶風呂。いま防人が浸かっているのがまさに、それだ。


「映画やマンガの中だけかと思ったら、ほんとにあるんだな」

「え、なんですか」

「なんでもない。にい子、もういいぞ」

「ぁ、はい。でも、もう少しだけ……この薪もぜんぶ、くべちゃいますね」


 二一型はドラム缶の間近で、火を絶やさないよう見ている。夜は空気がだいぶ涼しいとはいえ、ずっと火のそばで熱そうだ。

 ここは宿舎の裏にあたる、ちょっとした庭といったところ。

 人目につかないところに、ドラム缶がひとつ、石を積んで固めた簡易な炉の上に設置されていた。

 ドラム缶の中は、木のスノコが敷かれ、直接火であぶられるドラム缶の底に足がつかないようになっている。


「もうみんな、入ったのか」

「はい。いつもはなかなか順番が進まないんですけれど、今日はみんな、競争するように早く入ってしまって。といっても、わたしと、二二型……きさらぎさんとやよいちゃん、だけなんですけど。あ、ちゃんとお水は替えてありますから」

「ん、それはいいんだけけど」


 聞けば、同じ露天でもいちおう屋根のついた風呂もあって、そっちは五二型や九九艦爆、九七艦攻の専用なのだそうだ。


「序列ってことか」

「五二……さつき隊長はお姉さまだし、九九艦爆や九七艦攻さんは先輩ですから」

「九九式や九七式が先輩ってのはいいとして、なんで零戦だけ型番が多い方が姉っての、いまだによくわかんないんだけど……まぁいい。そっちの風呂はどこにあるんだ。あとでちょっくら覗きに……」

「覗きに来るのか、防人」

「ほんとか、防人、待ってるぞぉ!」

「あら、ちょっと楽しみかもぉ」


 すぐに声が返って来る。声はドラム缶風呂のすぐ隣、垣根の向こうからだ。


「ええっ? その、露天風呂ってのは」

「はい。そこに見えてる屋根がそうです。言ってませんでしたっけ」

「言ってねえー! あ、覗くとか、冗談です冗談! マジ冗談!」


 なんと、垣根ひとつを挟んでふたつの風呂はごく至近にあったのだ。ということは今までの防人の話も筒抜け。


(やばいやばい! 変なこと言ってなかったか。言って……ないな)


 胸をなでおろす。

 そしてこちら、となりの露天風呂のほうは、


「二二や三二型は、さっさと風呂に入ったあとって、珍しいな。ドラム缶が狭いからって、あたしたちが入ったあとの、こっちの風呂に入ることも多いのにさ」

「お肌を磨いて、なにかすることでもあるのでしょうか。どうやら防人さんより早く、身体を洗っておきたかった、ということみたいですね」


 九九艦爆と九七艦攻がクスクス笑い合う。

 並んだふたりの、はす向かいには五二型。


「ふたりこそ、いつもはわたしが出るのを待って入るのではないか。いつもより急いで、なにか予定でもあるのか」

「えっ、いやー、ほら、やっぱり一日の汚れは早く落としておきたい、っていうか」

「ふふふ、消灯までの時間を少しでも長く、楽しみたいのよね、そうでしょう?」

「ば、バカ。別に、防人のことなんて……それに九七艦攻だって、同じじゃないさ」

「あら、防人さんのことなんて言っていませんよ。まぁ、わたしも九九艦爆といっしょですけれど」


 湯船は三人が同時に入れるほどの広さはあるが、その場合、肩や脚が触れ合うほどには狭い。

 三人分の体積でお湯があふれ、今も湯船の淵ひたひただ。ちょっと動くたびに、湯が淵を超えてこぼれ落ちる。

 やはり、大柄な艦爆と艦攻の分が大きい。

 ことにその胸は、五二型と較べるとひと回り以上の差はありそうだ。


「なんだかまた少し、胸が育っちまってさ。こうなると肩が凝るんだよな」


 肩をぐるぐると回してみせる九九艦爆。

 そのたび、パシャパチャ、湯船に波が起こる。


「こればかりは、しかたありませんね。重い爆弾や魚雷を抱えて行くんですから。しっかり馬力を出さないと」

「でもさ、大きすぎるのも困るって、近頃わかったよ。それに将来、垂れてこないかって心配じゃん」

「あら、九九艦爆の胸なら、そんな心配ないと思いますよ。大きくても弾力があって、ピンと張って、とてもきれいな胸ですもの」

「そ、そうか。九七艦攻の胸も、あたし好きだよ。なんかこう、やさしい感じでさ。柔らかいし」

「ありがとう。柔らかくて、ハの字胸で、もう垂れてるって、ほんとは言いたいんですよね」

「違う違う! ほんとに好きなんだって。あー、ほんとだってば!」

「うふふ、わかっていますよ。ほんとうはうれしいんです」

「えへへ」

「ふふふっ」

「な、なんだ、あのふたり……」


 垣根を隔てて会話が聞こえる。ほとんど聞かされている態の防人。さっきから内容に耳をついそばだてて、顔が赤くなる。


「あれ、お湯、熱過ぎでしたか、防人さん?」

「いや、いいんだ。お湯は、いいんだ」

(わざとか! わざとなのか!?)


 わなわなと震える。ドラム缶風呂の水面にもさざ波が。

 それにしても。


(重い爆弾や魚雷を運ぶのに、胸が大きくなるって……。逆だろふつう。胸が大きくなったらその分重くなって、よけい……い、いや、まさか、胸に挟んで爆弾を……??)


 想像図が浮かんで、防人の頭の中は無用に混乱する。

 もはや、なにをどう考えていいのかもわからない状態。


「ほんとか? ええい、この世界って!」

「どうしました? 防人さん」


 見上げる二一型に、防人はじっと視線を合わせる。見つめてしまう。


「な、なんですか」

「にい子」

「はい」

「胸を、見せてくれ」

「えええ!?」


 たじろぐ二一型。

 あっという間に顔が真っ赤に染まる。口からは、あわあわと声が漏れ、身体もプルプル震える。

 しかし意を決したように、


「わ、わかりました。防人さんが、見たいなら……」


 立ち上がると、制服の胸元に手を掛ける。

 夜。街灯などの灯りもない。

 ただ、ドラム缶風呂を温める火が、赤い灯となって足元からにい子の身体を照らし出す。朱に染まった肌がいっそう赤味を帯びる。


「……こんなことになるなら、わたしも先にお風呂を使えばよかったです。きれいな肌を、見てもらいたかったのに、汗かいたままで」


 セーラー服のサイドのファスナーを開ける音が意外に響く。

 いよいよ上着の裾に両手をかけて、そこからいっきに頭から抜き取る、というところ、


「待てよ。胸の中に爆弾や魚雷を、こう、イメージ上、収納できるとか、そういうことなのか? なにしろこの世界はどうなってんだか……って、うああ!? にい子!」


 ぶつぶつ言いながら腕組みし、考え込んでいた防人が振り向くと、そこには上着をたくし上げたまま、しかしそこから動けずに固まっている二一型が。


「ぅう、ぅー」


 すでに上着は胸の上までまくれあがり、二一型のシンプルな白の下着をすっかり露わにしている。

 フルカップのブラに包まれた、決して小さくない、しかし大きすぎることはこれまた決してない、推定Bカップ以上Cカップ未満のバスト。

 防人の目に飛び込んで来る。


「ま、待て! にい子、オレが見せろって言ったのは、立って、服の上から見るってことで」


 けんめいに押しとどめようとする防人だが、二一型もまた、羞恥の限界に達してそんな声は聞こえない。

 とうとう、


「にい子?」

「っぁああ、やっぱりダメ! 恥ずかし過ぎますぅううううっ!」


 ぶん、ぶんっ! 両腕を振りまわした。

 これが、ドラム缶の淵に当たって、


「のぅわわ!?」


 ただでさえ不安定なドラム缶風呂を完全にひっくり返してしまう。

 ダバッ! あふれるお湯。

 ゴロン、ガラン! 派手にころがるドラム缶。

 中にいた防人はといえば、


「あがががが!」

「防人さん!」


 あわてて二一型が押さえようとするも、戦闘機は決して力が強いわけではなく、逆にいっしょになって転がってしまう始末。

 気がつけば、ふたり、折り重なるように地面に倒れていた。ドラム缶は、その向こうでようやく止まる。


「ぁ、あ」

「うう……」


 ふたり、ダメージに顔をしかめながら、ようやく身を起こそうとする。

 すると、


「えっ」

「あ、あれれ」


 地面にあおむけに伸びている防人。その上に完全に乗っかってしまっている二一型。しかし頭と足がさかさまだ。

 つまり、防人が顔を上げるとそこには二一型の下半身。もっといえば、お尻。それも股間が。

 逆に二一型の目の前には、


「補給管、です、か……」


 その形状から、燃料などを注ぎ込む補給用の管、ノズルかと思いきや、


「ち、違う、それ、オレの」


 意識したせいか、もぞり、と動いた。

 それをごく間近で見て、


「きゃあ!? イヤぁぁあああっ!」

「げふっ!」


 悲鳴とともに逃げ出そうとする二一型。とっさに立ち上がろうとした足が思い切り防人の顔を蹴飛ばし……、


「なんだ、にぎやかだな、隣は」

「ふふふ、若いって、いいですねぇ」

「……いや、そんなに歳、変わんないだろ」


 そんな声を聞きながらの、九九艦爆と九七艦攻だ。


「わたしは、そろそろ失礼しよう」


 ザバッ、浴槽の中、身を起こす五二型。

 スレンダーでありながら、きっちりと出るところは出た、プロポーションの良さが際立つ。

 濡れた肌が月明かりに浮かび上がるのを、


「ほぉー」

「まぁ」


 思わず見蕩れるふたり。

 そのときだった。

 トン、トン! 短い破裂音。

 続いて、かすかに空気の震える音が。


「敵襲!」


 ただちに五二型が叫ぶ。湯船から素早く出ると、もうフライトジャケットの上着をつかんでいた。


「迫撃砲?」

「短砲身の発射音ですね。さほど口径は大きくないようです」

 同じく九九艦爆と九七艦攻も、急いで湯船を出る。


「なになに? 敵はどこ?」

「真っ暗で、なにも見えませんぅ」


 宿舎からも二二型と三二型が飛び出して来た。

 そこへ弾着が、ドン! バンッ! 炸裂する。

 闇夜に、火薬の破裂する光が射した。と思うともう爆発音があたりを揺るがす。土砂が巻き上げられ、爆風が起こる。

 防人も、


「敵、だって」


 身を起こしていた。

 その間にも、断続的に発砲音、そして弾着の衝撃、振動が襲う。


(そうだ。敵がいる。襲ってくる。だから軍隊だし、だから戦闘機や爆撃機なんだ。戦うために、みんなはいるんだ。ここは、この世界は……)

「防人さん、だいじょうぶですか!」


 二一型の声が飛ぶ。

 振り返ると、もう飛行メカを展開している。


「にい子!」

「防空壕へ入っていてください、防人さん!」


 それだけ言うと、二一型のエンジン音が急に高まる。主翼付け根に近い部分のフラップが大きく動作した、と思うと、


「ぅわ!」


 間近にいた防人がよろけるほど、プロペラからの風圧が噴きつける。と思うと、


「ぇえい!」


 二一型は急角度で夜空へと舞い上がって行く。


「飛んだ……」


 見上げる防人に、二一型の翼端灯がみるみる小さくなっていく。


「あー、行ったのか。おいおい、だいじょうぶか」

「にい子さん、こんな夜に……」


 と、九九艦爆と九七艦攻が。声に防人が振り向くと、


「うわ!? ぁ、あの……!」


 すぐ側で、やはり空を見上げている。

 けれどその姿、九七艦攻はバスタオルを巻いただけだし、九九艦爆は身体に巻いてもいなくて、ただ手で胸から下に当てて押さえているだけ。


「なんだ、風呂に入ってたんだから、しかたないだろ」

「はい。しかたないです。防人さんも……ちょっと元気になりましたか?」


 ふたりもまた、防人を見る。

 その視線が、防人の顔から下へと移って、


「へ……ぅゎわ!」


 あわてて股間を隠す防人。

 ドラム缶風呂がひっくり返り、二一型ともつれあうように倒れてから、まだ服も着ていないし、前も隠していなかった。


「これを使え」


 すっ、と差し出されるタオル。


「あ、ども」


 受け取って、その手の主は、と見ると、


「五二……さつき、さん。うわっ!」


 かたわらに五二型が。こちらも、ショート丈のフライトジャケットは纏っているものの、逆に言えばそれだけ。


「制服を着ているヒマがなかったのでな」


 前も留めていないフライトジャケットは、その下の肌をすっかり見せている。五二型の形のいいバストが、谷間の稜線をくっきりと露わにしている。

 さらにも増して防人を驚かせたのは、ジャケットの下だ。

 あるはずの、ぴっちりしたスパッツが、いまはない。

 下半身を覆っているのは、闇夜にもまぶしい白のショーツ……、と見えて、


「じゃ、ない。T、バック……でもなくて、それ、ふんど、し」

「ふんどし? ぁあ。動きやすいし、下着の線がズボンに出るのはイヤなのでな。わたしは下帯び、と呼んでいるが」


 平然と言う。

 おそらく五二型にとっては、全裸だとしても臆することなどないのだろう。ただ平然と冷静に、必要なこと為すべきことを為す。

 そこに防人がいてもいなくても、変わらないのだ。


「いやでも、女の子がふんどし……下帯びとか、その、うううぅぁ!」


 つい目が行ってしまい、完全に食い込んだバックだけでなく、極限まで細くしか布地が覆っていないフロントまでも見てしまい、


(こりゃ、Tフロントなんて目じゃないんだけど)

「どうした」

「はぁ、ぁ……そ、それより! にい子が飛び出して行ったけど」


 かろうじて防人が言うと、


「うむ。困ったヤツだ」

「困った、って、敵が攻めてきてるんだろ? にい子はそれをなんとかしようって」

「なんともならないから困ったヤツだ、と言っている」

「なんとも、ならない?」

「いまは夜。飛行機は夜なんか飛ばないんだよ」


 九九艦爆が答える。


「でもにい子は」

「飛ぶだけなら、できます。けれど」

「敵を見つけることも、戦うことも、できん。着陸も難しいから、せいぜいケガをしないようにと祈るだけだ。ケガですめば、よいがな」

「ええ?」


 彼女たちの言葉に、防人はもう一度空を見上げる。

 満点の星。

 それに煌々と半月が照らしている。


「晴れ空なのはよかったけどな」

「ええ。月も明るいですね。着陸、無事だといいのですけれど」

「そういうこと、か……って! 敵が攻めて来てるんだろ!? そっちはどうするんだよ。それが一大事じゃないか。だからにい子は」


 防人の焦りはまだ解けない。解けるはずがない。


「あわてるな。……着発信管だ。敵は二キロ先、といったところだな」

「二キロ!」

「この感じ、戦車砲だ」

「戦車!」


 オウム返しにするしかない防人。

 自分の役に立たなさに唖然とするが、もともと訓練を受けているわけでもなく、タミヤのプラモのインスト程度の知識では、これが限界だ。


「でも、いったい誰が」

「そうだな。だいたい見当はつく。戦車といえば……」


 五二型が言いかけたときだ。

 ヒュルヒュル……と頭上から音が降って来た。暗闇で見えないが、音はこっちへ、落ちて来る。


「ぇ……?」


 固まる防人。


「危ない!」


 声が飛ぶ。と同時に耳を塞ぐ爆発音が響き、身体ごと跳ねとばされていた。


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