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プロローグ
それは、朽ちた機械。
壊れ、錆び、埋もれ、もう動くことはない。
かつては、大空に舞い、大地を踏みしめ、海原をどこまでも征った。
成層圏に星々の瞬きを見、木々や花の香りをかぎ、押しつぶされそうな海の底の音を聞いた。
人とともに。
いつだってそれらは、人とともにあった。
しかしやがて撃たれ、爆破され、引き裂かれ、吹き飛ばされ、ぐしゃぐしゃに押し潰され、一直線に地面に叩きつけられ、破孔からは凍りつくような冷たい水が大量に注ぎ込んだ。
多くを失い、いくつもに千切れ、あるいは無数の破片となって飛び散った。
だが、いつか終わる。
そんな日々が終わったとき、しかし人はそれらを振り返らなかった。
遠ざけられ、疎まれ、残ったものも人の手で壊され、忘れ去られていった。
永遠に。
二度とふたたび、輝きを取り戻すことはない……。