彼との出会い
「ねー結衣、さっきから何か考え事?早く食べないとアイス溶けちゃうよ」
私は沙織の言葉で我に返り慌てて
「あ、ごめんなんでもないから。ちょっとボーッとしてただけ。ありがとね、早く食べちゃう」
「もー勉強のしすぎなんじゃないの?今日はもうやめとく?」
「大丈夫だから。心配してくれてありがとう。これ食べたら休憩終わりにして勉強始めようか」
沙織は心配しながら
「それならいいけど。結衣の教え方上手だからついつい頼りにしちゃってごめんね。疲れちゃうでしょ」
私は沙織のやさしさに感心しつつ
「そんなことないよ、沙織との勉強楽しいからついつ張り切っちゃうだけ、だから気にしないで」
「結衣がそこまで言うなら、お言葉に甘えてもう少しお願いします。」
私は気合を入れて
「じゃー勉強やりますか」
私と沙織は勉強を始めた。
さっきの彼との出来事は一旦忘れよう。今は勉強に集中しよう。
私は心のなかで言い聞かせ、シャーペンを動かし始めた。
「それじゃー今日はありがとうね。また教えてね。」
喫茶店を出て沙織はお礼を言ってくれた。
「私もいい勉強になったから大丈夫だよ。それじゃーまた明日」
「それじゃーね」
私は沙織と別れ家に帰ることにした。
そしてようやく夕日が町並みを輝かせた時を思い出すことにした。
彼との出会い。
なぜあの時私は声を掛けることができたのか不思議だ。
そしてあの時という言葉に彼はなんのことだかわからないような反応だった。
私はそれが悲しかった。でも彼も私と同じようにあの時のことを忘れようとしたのかもしれない。
電灯が寂しく輝く中私は自分にそう言い聞かせることにした。
そして私はあの時かなり緊張してたんだなと改めて感じた。
そんなことを思い出していると気づけば家についていた。
そして道を振り返りまた夕景の時に彼と出会えますようにと祈った。