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運命のデジタル時計

作者: たかぴょん


一字一句を刻んで行く携帯電話画面右上に何かしらいぶかしく浮かぶ小さなデジタル時計。奴がこの世の中を牛耳っている。正確にいうと彼は現人神あらひとがみの一味だ。昭和初期日本の時計技術は北欧を追い越し、その精密さは?SEIKO?のブランドで知られる。間違いなく奴は日本国籍だろう。

また右上のデジタル時計様(!)が顔と言うべきか、表情を変えた。運命の時間ときを世界共通の秒針で指し示めす。会社や学校の合否ハガキをめくる瞬間や「チチキトクスグカエレ」物騒な機械文字で書かれた電報、それに終電発車時刻。世界を牛耳っているのは間違いなく現代神だ。



昔テレビのブラウン管に映るデジタル時計が恐かった。あと四十九分で社会へ飛び出す時間だ。顔中に冷や汗が出る。

いっそのことあんな信用が置けない会社、辞めてしまおうか。吐き気を催す中で、ただ口を開いてくうを飲み込むのみである。



時計の夢を観た。わたし自身が、指先からローソクになって溶けて行く。しじまに響くチクタクをリズムとして、舞踏をしながら……。同種族はチクタクと呼吸をするものだが、デジタル時計だからモノラル音さえなく沈黙だった。午前二時十三分。天井はただ黄色い足場を照らす光を放つのみ。テレビ放映はすべて終了。わたしはリモコンで銀砂漠を移す機械を切った。すべてが不安になった。わたしはグリニッジ天文台にある世界時計の針を止めてやりたくなる。自由の女神像ぐらいある巨大時計の中へ潜り込んで、わが身をもって世界を止めようとする。極悪犯罪行為に間違いない。わたし自身の見栄が発端で、年齢を鯖読んだことから解雇されたこともある。ともすれば私文書虚偽記載罪でお縄にかかった女性も多いはずだ。



顔の筋肉が固まり始めたわたしは、最近観念し出す。例の時計を止めるに等しい行為をしてしまうと、世界人類共通の進歩を止めてしまあかねない。次世代に譲ろうとする謙虚な気持ちがあるから、老舗商売や科学技術、文化は効率的なモチベーションを保りつつ、更なる一歩を踏みしめる。


時間に食われるものは、食物連鎖の潤滑油となるしかない。








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