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LIVE.8 大国神社が落とされた日

「メイ、あいつらと戦うのは初めてだったな」


 玄武は、愉快そうに唇をつりあげる。


「ああ、大国神社に異人は入って来れないって聞いていたし、実際……」


「そうだ。実際、侵入を許したことは今までなかった」


「じゃあ、今の状況って」

「言っただろう、緊急事態だと」

 玄武は、白目のない、ぐりぐりの黒い瞳を細めて言った。


 メイは、生唾をのんだ。


「さあ、着いたぞ、本尊裏だ。

 表を見てみろ。

 異人がうじゃうじゃと居やがる」


 言って玄武は、舌なめずりをした。

 年齢不詳のこの青年、どこまでいっても余裕綽々である。


「ぜぇ、ゼェッ、ここに、姫巫女が!?」


 遅れて、メイが到着した。


 大国神社の本尊は、巨大なクリスタルの原石である。

 天井にそびえるそれは、『次元の扉』のカケラだと言われている。


 古より、大国神社と『次元の扉』は繋がっているのだ。


 祀られた本尊の裏に、小さな地下への入り口があった。


 隠れ扉のように壁と同化しており、鍵穴が分からない。

 扉は、人一人がなんとか屈んで入れるくらいの大きさだ。

 鉄で出来ている。


「なあ、玄武……、こんなとこにいるのか?」

「ああ」

 玄武は短く答える。


 メイは、自分の想像とは180度違う現実に混乱を隠せない。


「ちょ、待てよ。姫巫女なんだろ?

 こんな、こんな監禁みたいな??」


 玄武はメイから目をそらして、


「異人どもは、ここに気づいていないようだが、……時間の問題だな」


 と言って、ため息をついた。


「……姫巫女は、下にいるのか?」

 とメイ。


「ああ。この地下の牢獄に姫巫女はいる。

 代々、ここにいるんだ。

 それが、闇喰一族の運命なんだ」


「そんな……」


「いいか、メイ。

 牢獄を開けて、さらに地下へ行け。地球人の地下街に出られる」


 いきなり突き放すように玄武は言った。

「地球人の地下街……?」

 メイは、当惑した。


 異人によって住処を追われた地球人は、

 地下深くに生活の住処を移している。


 第二世界連邦における、地球人の生き方は三つだ。


 地球人を裏切り、連邦に骨を埋めるか、


 異人の奴隷になるか。


 地下街へ逃げるか。




 地下街の住人は、光も届かない所で、

 異人を恐れて息を潜めて生きている。


 ーーこの星に、地球人の人権などない。



 その地下街を守り、地球人を異人の脅威から守る防衛軍が存在する。


 その防衛軍こそーー、





「なんだよ、玄武さん、あんたも行くんだろ?」

「俺は、ここにいる」

 黒目は、炎を受けてメラメラと輝く。

「バカなことを!」

 メイは、玄武の言わんとすることを悟り、大声を上げた。


 この大声を、異人たちは見逃さなかった。


「あ!?」

 慌てて口を塞ぐメイ。


 だが、もう遅い。


「ははは、どのみち、見つかる。

 問題ない」


 ガチャリと、玄武は鉄扉を開けた。


 地下から、ひんやりとした冷たい風が上がってくる。


「俺も闘う!」


「このションベンタレ」


「うっせぇ、亀野郎!

 やるったらやる!」


 そう言って、メイは鉄の扉を閉めた。

 扉を背に、異人に対峙する。


「聞かねぇな、こりゃあ」

 玄武は、そう言って頭を掻く。


「異人どもめ、皆殺しにしてやる」


 メイは両手の拳をギュッと握り込んだ。


 ゆらゆらと、異人は二人に近づいてくる異人。

 メイは腹の底からわいてくる恐怖を感じる。


『グギギィミリィィイ』


『ガハ、グチィ……ムビイ………ィィ』


 じわりじわりと近づいてくる恐怖。


 一列に並んで行進するように迫ってくる。


 まるで、白と赤の壁がせまってきているようだ。


 メイは、ぎゅっと両足に力をいれた。


「大丈夫だ、俺はできる」

 メイは呪文のように呟く。


 異人たちは、手に子供の身の丈はある大きな鎌を持っている。


 面白いくらい、全員が同じ格好をしている。

 白いロングコートの軍服、

 白いロングブーツ、白い革手袋、

 そして頭部は白いマスクで頭からすっぽりと覆っている。


 悪趣味にも、マスクと革手袋、そしてロングブーツは血の色のまだら模様を施してある。


 声は奇声を上げるだけで、人語を話さない。


 顔が全く見えない。


 中身が人間だという保障はない。




 まぎれもなく、異次元から来た侵入者である。


『グッヒィ』


 とブタみたいに愉快そうに鳴くと、

 メイの一番近くに迫った異人が、ブワッと鎌を振り上げた!


「先攻、来タぜ!」


 メイは咄嗟に叫び、横に飛ぶ。


 振り下ろされた鎌は、大理石に弾かれた!


 それを合図に、異人たちが一斉に鎌を振り上げて攻撃を始める。


 一撃目を避けたメイは、

 軽々と本尊が祀られている祭壇へ飛んだ。


 地下への入り口に仁王立ちする玄武に、異人たちの攻撃が集中する!


「玄武さん!」


「はぁぁん!?

  大国霊人おおぐにれいとの式神をなめてもらっちゃあ困るぞいっ!」


 言って、玄武は錫杖をクルクルと目の前で回転させて、


めっせよ!」


 バリトンで叫び、魔法陣を展開した!


 具現化した魔法陣に、異人たちは怯む!


 その一瞬を、玄武は見逃さない!


「喉仏に食らいつけ!」

 まるっとした短い腕を天に向けて振り上げると、

 異人の喉仏に向けて指差した。


 ドドドドドドドドドドドド!


 玄武の指揮の元、

 無数のエメラルドの蛇は、ばっちり異人の喉仏あたりにヒットしていく。


 メイの目には、光の蛇が異人の喉仏を噛み切るように見えた。


 パァン! パパパパパパパァァァアン!!


 小気味いい破裂音と共に、異人は木っ端微塵となる。


 異人の赤い血液が巻き散った。


「すっげぇ!! さすが玄武さん!」


 上から、メイが感嘆の声を降らせる。


「おい、メイ!

 お前も青龍せいりゅう白虎びゃっこから仕込まれた対人戦闘方法、会得してんだろ!

 出し惜しみするんじゃないぞ?」


 玄武は、メイに向けて鼻を親指でピッと跳ねて見せた。

 その背後に、影が落ちるのをメイは見逃さない。


「じゃあ、お言葉に甘えてっっ!」

 メイは叫ぶ!

「成敗してやんよッッ!」


 メイの飛び蹴りは、見事に玄武の背後の異人に決まった。


『グピイッ』

 白いマスクがひちゃげる。


「もう一丁ッッ!」


 メイは、着地してすぐに大理石の床に転がった鎌を三本拾い上げ、重ねる。

 そして、それを素早く逆手に持ちかえ、

 真横に低く構えるやいなや、

 鎌で一文字を描く!


「食らえ、連邦特製三枚刃だッぜェェェ!!」


 ブウウウウン


 風が鳴るのと、異人たちの醜い悲鳴が轟いたのは同時だ。


 鎌の刃は、次々と異人の足を切断していく!


 カランカランッ


 メイは、血まみれになった鎌を捨てると、新たに鎌を拾い両手に取った。


 胸の前でX字に構え、

 空高くジャンプをし、空中で一回転した。


 キラリと鎌が太陽の光を反射した。


「玄武さん、よけてっ!」


「メイッ! 異人の弱点は、喉仏だ!

 首を落とせ!」


 叫び、玄武はカメのように頭部を竦める。


「オッケー!」


 メイの声とともに、その上を鎌が抜けて行く!

 そのまま、スパンという音とともに、異人の首は転がった。


 首を失った胴体は、ピクピクと動いている。


「トドメ♥︎」

 玄武は茶目っ気たっぷりにそう言ってから、


 ズン


 と異人の喉仏目掛けて錫杖を落とした。


 パァンっ!


 派手な音を立てて、異人は木っ端微塵となった。


 文字通り、木っ端微塵である。


 彼らが何故喉仏を刺すと木っ端微塵となるかは、謎である。

 帝国軍が解明しようとやっきになっている研究のひとつだ。


 メイは、玄武の横に着地して、大きく深呼吸をした。

 浴衣ははだけ切って、ボロボロになっている。

 鍛え抜かれた胸筋と腹筋は、泥とススだらけになっていた。

 早熟な肉体は、とても14歳には見えない。


「こいつら、人なのかな?」

 メイは、第二陣に向けて両手に鎌を構える。


「さあな、でも、ーー敵だな」

 玄武は、つるんとした面をポリポリと掻いて俯いた。



「ーー助けてーー」


 メイは、女の声に振り返る。

 鉄扉の方からの聞こえた。


「玄武さん! 今の、聞こえた?」

「メイーー」


 玄武がそう言った瞬間、


 ダァンッ!



「……え?」


 突然の熱が、メイの左腕を襲った。

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