LIVE.4 死人の軍隊。
ソウルシーカーズの屯所に併設されている食堂で、メイは、先程の玄鉄隊長から受けた任務を思い返して天井を仰いでいた。
彼の眼の前には大量の空の皿が積みあげられている。
もちろん、メイが一人で平らげたものだ。
彼のエンゲル数は、ソウルシーカーズ隊の脅威である。
「『神剣 神楽の守護処の警備及び、周辺の異人の殲滅』ねぇ……」
神剣 神楽は、この世界と異界を結ぶ『次元の扉』の鍵である。
2320年、この『次元の扉』は先代の正統後継者である大国 霊人によって封鎖された。
その時から、異次元への行き来は不可能になっている。
つまり、異人が異次元から来ることが出来なくなった訳である。
これ以上、異人からの侵略を拡大させないための最終手段であり、
これによって、大国霊人は命を落とした。
人類が差し出した犠牲は、この一人の英雄の死だけではない。
『次元の扉』が、封鎖されたことで、
異界と同じく異次元である死界にも行けなくなった。
反政府組織として、異人の殲滅のために立ち上げられた帝国ティルナノーグは、この頃から地球人の遺体を回収するようになった。
現在、帝国では、
死界に行けなくなった地球人を蘇生させ、
彼らを軍人に育成している。
適正でないものについては、軍事に従事る職務につく。
これについて、帝国の創立者である皇帝は、
「『次元の扉』を開放するまでに、異人の殲滅をすることが、我が帝国のミッションであり、我々地球人の責務である」
としている。
メイは、自分の右手首に埋め込まれたクリスタル製の十字架を眺める。
中央に赤く丸い宝玉が特徴的だ。
赤い宝玉は、食堂の青白い照明を受けて怪しく光を放っている。
直径3センチほどのそれは、帝国が開発した蘇生装置が組み込まれている。
この蘇生装置によって、彼を始め、
帝国の住民たちは、今、生きている。
クリスタル製の十字架は、宝玉を覆うようにアタッチメントされている。
このクリスタル、防弾ガラスよりも強固な仕様である。
地上で死んだ者で、身体に酷い損傷がなく兵士として戦える者は、左手首にこの蘇生装置を埋め込まれるのだ。
メイの蘇生装置が右手首にあるのには、とある事情がある。
「今日も相変わらずよく働いてるな」
メイは、一度動きを止めた自分の身体に、
耐えず電気信号を送り、
強制的に自分の身体を動かしているソレを見て、
なんとも言えない表情を浮かべた。
「神風博士が呼んでいます、メイさん」
穏やかな声に、視線をうつすと、小太りのソウルシーカーズ隊員がいた。
玄鉄班の隊員の一人、光揮である。
見たところ、20代の短髪の男だ。
飛行艇乗り気取りの帽子が、なかなかいい味を出している。
「サンキュ、光揮。
あの人といると、空気がもたないんだよなぁ」
「メイさんでも、そんなこと考えるんですね」
ふふふ、と笑うと、少年のほっぺたにエクボができた。
ソウルシーカーズ第一部隊の中には、
玄鉄隊長側近が集まっているチームがある。
通称 玄鉄班だ。
「馬鹿言え、俺は結構空気読むぜ?」
「あはは〜、それ、叉爾さんに言ったら呆れられますよ」
と、光揮は肉のよくついたお腹を揺らせて笑った。
メイは、それを見て、よく弾む肉だなと思い、重い腰を上げた。




